第33話 旅立ちはいつも突然ですよね②
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆アルミラージ 自称十五歳
戒めの使徒。創世五位〝動物の創造主〟。しゃべる珍獣ウサギでとにかくエロい。通称あーちゃん。
◆九条 玲奈 十五歳
莉奈の妹。旅先のドイツから急遽帰国した。
◆セバスチャン 六十歳
九条家の執事。とりあえず強い。
◆ニール・サンクトゥス 目測二十代
戒めの使徒。創世七位〝??の創造主〟。まだ謎が多い。
◆ナムタル
〝冥界クルヌギア〟の首相。
【名前のみ判明している戒めの使徒】
◆レックス・ウォラーレ 創世二位〝空の創造主〟
◆クラルス・マグノリア 創世三位〝自然の創造主〟
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位〝天体の創造主〟
「ちょっと! こんな事してる場合じゃないんだから!」
あーちゃんのペースに乗せられてしまい、玲奈が焦りを見せ始めた。
実際、モタモタしている内に連れ戻されてしまう可能性もある。
「とりま変態うさぎの事は置いといて、ウチらどこ向かえばいいんだろ?」
「あ、それならボクが手掛かりになりそうなこと知ってるよ?」
「ホント⁉」
思わぬ情報提供者の登場に目を輝かせ、玲奈は車のルーフにあーちゃんを降ろした。
「うん、昨日かれんとこの天井裏に忍び込んでたから。あ、言っとくけど、決して着替えを覗いたりしてないからね!」
「……覗いたでしょ」
「なんで分かるの⁉」
秘密がバレて驚愕するあーちゃん。それを見る玲奈の目は据わっている。
「なんでバレないと思った」
「はっ! これはまさか誘導尋問……そ、そんな事より手掛かりになりそうなことなんだけど……」
真剣な面持ちであーちゃんが考え始めた。
うさぎだから何とも言えないが──これはたぶん、真剣に考えてる顔だ。
記憶を辿ること数秒、突然あーちゃんの目が見開いた──ように見える。
「昨日はかれんが白で、輝夜が水玉……」
「きょーおーのごっはんーはうっさぎー鍋♪」
「サーセン‼」
あーちゃんが土下座した。
──離陸した飛行機の中、悠斗は心配そうに窓の外を眺めていた。
「かれんさん、ホントにいいの? アイツほったらかしてきて」
「ん? あーちゃんはこれぐらいしないと、自分から動こうとしないからね~! それにあの子、昨日ウチの天井裏にいたから手掛かりはあげといたし!」
「……天井裏? 何してたんだ? あーちゃん」
「何だろねー? やる気出そうとして色々もがいてたんじゃないかな?」
晴れ渡る空の下、一行を乗せた飛行機はイタリアを目指し空をゆく。
◇
──とある薄暗い部屋の中。
ひとりの女が脚を組んで椅子に腰かけている。頬杖を突きながら、耳元で光るイヤリング型の通信機を使って会話しているらしい。
「で、汝の方はどうじゃ? 何か進展はあったか?」
『いや、相変わらず〝守護天使〟に苦戦している。まだ兵器の所有には至りそうにない』
通信相手の男が低い声で不愛想に答えた。
この部屋に窓はない。室内は狭い上に散らかっていて、いたるところが汚れている。その様子は、弱々しい光を放つ間接照明によって、一層あやしげに照らし出されていた。
そんな中で、ここには部屋の雰囲気にそぐわないものが二つ存在する。
一つは女が腰かけている椅子。
この部屋を破棄された廃屋とするなら、それは王室の者しか座れないような気品あるデザインの椅子だ。赤を基調として、木の部分には精細な彫刻が施されている。
そして二つ目は、女自身。
長く美しい金髪と身に纏った白いドレス、その佇まいは高貴な身分を証明するかのように美しい。
『任せた調査はどうなった?』
「状況は変わらぬ。妾の周りで気づいている者はいないようじゃ」
──コンコンコン。
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「すまぬ、切るぞ」
『ああ』
唐突に通話を終わらせると、女は扉に向かって声を掛けた。
「入れ」
すると扉が乱暴に開けられ、男が二人ズカズカと部屋に入ってきた。
がたいのいい男が最初に口を開く。
「ルーナ様聞いてくれよ! あんなもんどうやったら倒せるってんだ⁉」
「ギャハハハ! 一生かけても無理だろうなァ!」
痩せ気味の男が腹を抱えて笑った。
「お主ら、笑っている場合ではない。妾が教えた事を憶えておらぬのか?」
「あー、『神が隠した秘蔵のコレクションがすげぇらしい』ってやつか?」
「ギャハハハ! そんなもんあるなら拝んでみてぇなァ‼」
「たわけ、『神が遺した兵器、それを有するのは我ら〝秘匿されしラメドの使徒〟の他にあってはならない』──そう教えたであろう?」
「……長ぇ」
「俺らに憶えられるワケねぇよなァ!」
二人の反応を見てルーナが溜息をついた。
「まったく……ならこれだけ憶えておくがよい。早く兵器を見つけて妾を喜ばせよ」




