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記憶を落とした船乗りさん。  作者: よるくま
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re:ship.memories

とりあえず。はじめます。やってみます。

これは、海運界について特に国内について船乗りの職業についてなのです。

人がいろいろいるように、

仕事も、いろいろあります。

「えっ、仕事って何すればいいですか?というか、どういうことか全く状況がわからない。。」

「せんぱーい言ったじゃないですか、言われたことやるだけーって」

「ほんとにそんな感じでいいのか分からないし、これから俺は、どうすればいいんだー!」


「こらー、どけー」

そんな声がすぐそばから聞こえる。

足元を見ると鉄板の上だ、その上を大蛇のように太いロープがガザッーっと走り抜ける。

ロープを目で追うとパンジャンドラムのような回転物にロープが巻きとられていく。

「突っ立ってんじゃねぇ!!」

肩をつかまれ体が後ろに引かれた瞬間、ロープの先端が風切り音を挙げながら鼻先を横に飛んで行った。

「あぶなっ!?えっ?」

ドサッ。ロープが巻き上げが終わると機械の音が止まり静かになった。

周りを見渡すと港町、、と海が広がっている。海のほうが割合が高い、、というより港町からどんどんと離れていく。俺は、船の上にいた。船?



「でっ?なんであんな危ないとこに突っ立ってんだよ。危ないってこの前言っただろぅ?」

わけのわからないまま、船内に移動すると開口一番に怒鳴られていた。

ただ、その怒鳴る髭面は怒っている訳ではなく、心配してくれているのだと、思わせてくれるそんな雰囲気だ。

あまりに唐突な「この前」のフリに戸惑い。

「はっ、はあ?」

訳がわからないことをどう伝えればいいのかわからない。

少し顔が硬くなった。

「はあ?っじゃあないよ!ったく。なんもしらねぇみたいな顔しやがって」

ここだ、このタイミングで、

「すみません。で、ここはなんなんですか?この船?私、わからないんですけど。」

「え?なんだって?ふざけてるのか?」

髭面は、バカげた芸人に向けるような笑みを浮かべた。

「いえ、ふざけてはいないですが。」

こっちは大真面目だという態度。

「そうか、、、」

髭面のおっさんは頭を抱えた。

困惑し、固まってしまった。

「私、どうしましょう?なにかしますか?」

髭面は、ゆっくり顔をあげて、瞳を見つめながら

「まあ、今日はお疲れ様。ぐっすり寝てこい。」

釈然としないが、なにもわからないので。素直に指示に従うべきだろう。

「では、休ませていただきます。」

と歩き出すと、気が付いた

「どこで休めばいいのでしょうか?」

「、、、、だよなぁ」

「すみません」



自分の部屋に案内され、椅子に腰を掛ける。

俺は、、どうすればいいんだろう、何もわからない。

6畳一間の部屋だ、今座った椅子、その机とベッドや洗面台がある。

私物が多いようだ。コーヒ豆や茶葉、菓子のようなものも多く置いてある。

どこも鉄板で、無機質だが、ベッドのシーツのしわや、冷めたコーヒーが置いてあるのが生活感を色濃くのこしている。

そうして周りをぐるっと見渡したあと席を立ち、部屋から出てみた。

部屋にあった生活感は消え、無機質な空間が広がっていた。

隣の部屋も人がいるようで扉には名前が書いてあった。

「白山かがみ、、」

すると、扉があき

「あ~せんぱーい。もう休憩ですか~?いいご身分ですねぇ~」

自分と同じくらいの女の子がヒョコっと出てきた。

可愛らしい顔立ちが、作業着とコンビネーションを組みなかなかのギャップを生んでいる。

「あっ、はいすみません。休んで来いと言われてしまったので。」

「えっ?どうしたんですかっ?!なんですかその敬語は?キャラ変更?それともついに、私の価値に気づいちゃったですか?」

表情をコロコロと変えながら肩にかかるくらいの黒髪を左右にゆらしている。

「いや、いま何もわかってないんですよね。」

髭面のおじさん同様に、コロコロと変わっていた表情が固まった。

「え?どういうことですか?」

「名前もまだ、、、あ〜」

振り返って、自分の扉をみて、

「黒木、、けん、という自分の名前しかわからないです。」

最大限わかる事を、精一杯つぶやいた。



「改めて、よろしくお願いします。せんぱい。白山かがみっていいます。かがみって呼ぶか、シロって呼んでくださいね。ちなみに、昨日までは後者で呼ばれてましたが、」

気持ちの切り替えが早いのか固まっていた表情は、既に驚きの感情を殺したように見え、かわいらしい雰囲気を出している 。

「では、シロって呼ばせてもらいます。」

「いやっ、敬語はやめてください~先輩なんですから。」

手を顔の前でブンブン振った。

先輩と呼ばれているからまあそうだろうとは思っていた。

「じゃあシロとりあえず、私は何をすればいいのかな?」

白山は少し得意げというか、満足げな表情で、

「せんぱいには~まず、、、状況を教えたほうがよさそうですね、、」

「いま、せんぱいは私の二個上、二十二歳で男です。」

「なるほど、、シロは大人びているな、、」

ん?という顔の後

「せんぱい、それは身長が同じというか、先輩がちいさいから、、、」

「まあ、そんなことはおいといて、次、つぎっ!」

さっと白山は説明を続けた。

「ここは知ってのとおり船の上、貨物船の上です。」

「貨物船?またなんでそんなとこに?」

「わたしたちは貨物船『ベテルギウス』のクルーで船を運航をしているのさ、せんぱい!」

「おぉ~、すごいなシロは、」

「いや、せんぱいも、、、」

「えっ、まあ、そういうことになるよな、でも俺、何もわからんのだけど。」

「まあ、わかってないと困るし、先輩にもあるはずの免許が何の意味を持たないのは困りますけど、まあ、せんぱいと私がやることは単純なことだから、大丈夫ですよー。」

「そんなもんなのか。」

「そんなもんです。」

うんうん、と頭を振る。

「で、今は、東京で貨物を積んで、金沢まで運ぶために航海を始めたってところですね、」

「東京から金沢?海だとずいぶん遠そうだけどあと何日かかるの?」

「さっきでたばっかりだから三日くらいだと思います。後でパッセージプランでも見てください。」

「まあ、実務的なことは、こっちが教えてほしいくらいですから、、、」

言葉に詰まり、うつむく白山。

「まあ、そうですよね。」

「私はつい最近乗ってきた新人です。せんぱいとは、学園ですこ〜しだけお世話になりました。」

「そうなのか、学校が同じなのか、」

なぜか誇らしげな様子。

「そーですよー、なーんもおぼえてないんだなー。」

煽られつつも、記憶がないことの恐怖を再確認した気がする。

「すみません。いや、ごめん」

謝ってしまった瞬間、白山が内側から崩れるように、暗く固まってしまう。

「、、、ごめんなさい、せんぱいも何も覚えてなくて不安なのに、、」

より青く暗い顔になる白山。

「いやいや、俺はそんなに神経質じゃないから大丈夫だよ!たぶん前からそんな真面目なやつではなかっただろ?」

「、、、 、、、そうですね能天気なせんぱいなら大丈夫ですか。」

白山に明るさが戻ってきた。この子、心配になるほど表情がコロコロ変わる。そして、それが手に取るようにわかる。

嬉しそうな笑みを浮かべながら、

「それにしてもせんぱい、もう私の扱い方がわかってきましたね、さすがせんぱい」


「そんなことないよ、シロに合わせるのがやっとだよ」



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