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夜が明けたら、王宮に呼ばれました。

ご愛読ありがとうございます。

昨日は日曜だったので、連日更新になりました。


ここからはまた、隔日更新ですー。

 小火を起こしてから一夜が明けた。

 

 あれから私は客間の一室に移動していたけれど、特に不便は感じなかった。

 どこにいても快適、さすが魔界屈指の大貴族様のお屋敷。


 一晩たって、だいぶ冷静になった私は、これからのことを考えてみる。

 一応、あの時きちんと謝罪をしたし、お義父様があの程度の損失で目くじら立てるとは思わない。ここは魔界屈指の(以下略。

 なので、もう一度きちんと謝罪して、お義父様にどうすればいいかを聞いた後、今後は気を付けるとしか反省のしようがない。


 そういや、何で火なんてでたんだろう。

 あのときは、天気も良くて明るい時間だったから、窓から降り注ぐ陽光で読書してたから、ランプもつけてなかったはずだし。

 仮に、ランプをつけていたとしても、この世界は魔力を源とする熱を発しない魔光ランプだから、火なんて、出るはずはないのだ。

 陽光で発火するといえば、小学生の夏休みに実験した、黒い紙み虫眼鏡くらいしか思いつかないけど、虫眼鏡効果を果たすものなんか、なかっただろうし。

 

 うーん、と一人首をかしげていると、ノックの音が響いた。

 音の感じからして、侍女長のリリスかしら。人間でいうアラフォーなんだけど、キツネ耳とふっさりしたしっぽがとてもよくお似合いの素敵なマダム。気を抜くと、ぱくっとやられてしまいそうな艶を放っていらっしゃる。

 私の返事の後に入って来たのは、そのリリスとリス耳のミアだった。ミアのしっぽはほんっとうにもふもふしていて、大好きな私はわきわきしてしまうので、ときどき(許可を得て)触らせてもらっている。

 セクハラということなかれ、これは女同士の特権だ。ちゃんと許可は取っている、問題はない。どこにもない。


 と、少し話がそれたけど。


 二人に続いて、数人の侍女さんが入って来たけど、彼女たちは、手に手に豪華なお衣裳と装飾品、お化粧用品をお持ちだったりする。

 そして。



「本日は、王宮へのお召しでございます。お嬢様にはお支度をしていただきますわ」



 え、なんですと。



 この世界にきてすでに二月近くたっている中で、王宮なんかに召し出されるのは初めて。

 前回は、召し出されたんじゃなくて異世界召喚よびだされたわけだけど。



「さぁお嬢様。ぐずぐずしているお時間はありませんわ。ミア、カレン、ドリーやっておしまいなさい」



私の困惑をよそに、リリスの号令のもと、侍女軍団が押し寄せてきた。

 ウサ耳ネズ耳リス耳に、本当なら嬉しい悲鳴を上げるところだけど。



  あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛~~~~~~!!!



 この優秀侍女軍団。またの名を“着飾らせ隊”。最後の二文字は願望系の発音で読むものである。

 彼女たちの玩具マネキンにされることはや数度、そのたびに体力気力ごっそり持っていかれるのだけれど、その隊長は基本的にお義母様なので拒否権はなかった。というか、お義母様旗下以外は、逃げ回っていたということだけれど。

 行く場所が|行く場所(王宮)だけに、お義母様がいなくても本日の拒否権はない。きっと。


 朝起きてから着ていたワンピースを剥され、下着から何から着替えさせられ肉をあちこち詰められたり引っ張られたり、あちこち髪の毛引っ張られながらいろんなものを顔に塗りたくられる。

 ちょっとでも動こうものなら、「大人しくしてくださいませ!」と厳しい声が飛んでくる。それでも優雅さを失わないあたり、さすが魔界屈指の(以下略。


 出来上がった私は、完全に普段とは別人と思えるものだった。さすが魔界く(以下略。いや、お屋敷関係ないか。

 そしてそのままお屋敷前に止められていた馬車に乗せられ、王宮へと運ばれていく。御者台に、バステト家お抱え御者のロバートさん(・・・ロバ耳?)がいる以外、乗客は私一人で出発した。

 気分は売られていく仔牛だったりするけど、正直売れるとは思わない。おいしそうと思えるほど肥え太ってはいないからだ(たぶん、きっとそう信じたい)。



 つか、一人で王宮に連れていかれても、どうしたらいいかわからないのだが。



 悲劇の主人公ヒロインぶってドナドナ歌ってたら(なんかいろいろ違う)、ふと気づいた。

 門番とかいるだろうし、どこからどうやって入ってどこに行けばいいのか、私にはわからない。前回は与えられた情報の処理と現実逃避を半々でしていたから、周りの景色しか(つまり、景色オンリー)見てないし。


 とか思って、きょろきょろし出したら、馬車が止まった。

 なんか外で話し声がするんだけど、お屋敷出る前に窓は開けるなと言われているので、開けないほうがいいんだろうな。

 そのまま待つと、また馬車が動き出した。たぶん、今のはお城の門を通る時の検問だったんだと思う。

 扉、開けなくてよかったのかな。


 その後ほどなくして、また馬車が止まって、今度は外から扉が勢いよく開けられた。

 そこに立っていたのはお義父様で、すぐ後ろには、犬耳スクルドさんがいる。



「リサ、私についてきなさい」



 扉を開けるなり、それだけを言って私に手を差し出して、降りるように促してくる。いつもなら、着飾った私に何かしらほめ言葉をくれる紳士的なお義父様なのに。

 まぁ、ここまで来て断っても意味のないことなので、大人しく馬車を降りて、先を歩くお義父様の後についていく。

 前を歩くお義父様は、口元は微笑んでいるんだけど、纏う空気はどこか硬い。私の後ろをついてくるスクルドさんは、前回会った時から愛想なんてなかったけど、今日はそれに輪をかけて硬かった。


 連れていかれた部屋は、前回招いていただいたのとは違うけど(たぶん)、同じくらい豪華な部屋だった。

 そして、そこに集ったメンツは、前回と同じ。あ、クロがいないや。

 そんなことはどうでもいい。


 椅子に座らされて、今回はお茶も出てこなかった。というか、侍女さえも出入りを禁じているようだ。

 正面から、四人の男に(しかも全員大柄)痛いほどの視線(決して熱くはない)を送られて、意味もなく何度も座りなおす。

めっちゃ居心地悪い。いい加減なんかしゃべってくれ。



「さて、君をここに読んだのは、これのことを聞くだめなのだよ」



 と、しゃべってくれたお義父様がローテーブルに差し出したのは、私の自作の単語帳。

 そういえば、お義父様に貸しっぱなしだったな。つか、これが何か?


 素直にそう聞けば、今度はメガネなクレメンスさんが、メガネに負けないくらい鋭角な声を出してくれた。



「聞いているのはこちらですよ。これはなんなのですか?」



 そんな高圧的に言わなくても。

 居丈高に聞かれたら、素直に答えたくなくなるじゃないか。人間は鏡のような生き物なんだよ。

 って、人間じゃないか、魔族か。

 心の中でツッコミを入れつつ、一応素直に答えることにする。別に隠すことじゃないし。



「単語帳、ですけど」



 けれど、その言葉になぜか室内に、ピンと張りつめた空気が流れる。

 え、私なんか変なこと言った??

 これは一触即発っていうの?いや、何が爆発するのかはわかんないけど。

 とかなんとか、心中おろおろしていると、今まで沈黙を守っていた金色キラキラ魔王様が、底光りする真っ赤な眸をまっすぐに私に向けてきた。

 あー、最高級ルビーって、光るとこんな色になるのね。なんか、高純度のビームとか出てきそう。


 なんて、無意味な感想抱いてたら、なんだかまた爆弾を投げつけられた。



「そなたは、何故に超古代魔術文字を知っているのだ」



 ハイ? 超古代魔術文字?? ナニソレオイシイノ?


次の更新は、2日の夜8時になりますよー。

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