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第10話 姉の幸せは、姉が決めます

第10話 姉の幸せは、姉が決めます


公開審理から一か月後、王都の中央広場で判決が読み上げられた。広場の花壇には白と黄色の冬菊が咲き、吐く息が白くなるなか、パン屋の少年が籠を抱えて人垣を歩いていた。焼きたての胡桃パンの匂いが漂うたび、朝食を抜いてきた傍聴人たちが判決台より籠のほうを振り返った。


ジェラルドは王位継承権を剥奪され、王族籍からも外された。横領、公文書偽造、虚偽告発への関与が認められ、元王太子という呼称の使用も禁じられる。判決を聞いたジェラルドは、自分の上着から王家の徽章が外されていることに気づき、何度も胸元を触った。


「私は次の国王になるために生まれたのだぞ。王族でなくなれば、私は何者になる!」


「ジェラルドという名の、一人の成人男性です。これからは御自分の働きによって生活していただきます」


アーネストが答えると、広場のあちこちから低い笑い声が起きた。ジェラルドは言い返そうとしたが、判決台の前に並ぶ北部の村人たちを見て口を閉じる。擦り切れた外套を着た彼らの手には、亡くなった家族の名が書かれた札が握られていた。


ミレーヌは虚偽告発、証人買収、王家の財産を持ち逃げしようとした罪で、取得予定だった爵位と財産を失った。男爵家も不正に得た金を返還することになったが、彼女を修道院へ入れて責任を隠すことは認められなかった。成人しているミレーヌ自身が働き、横領金のうち自分のために使われた分を返済するよう命じられた。


国王ヘンリーも、息子の横領を知りながら隠蔽し、セシリアへ罪を負わせようとした責任を問われた。退位後は王城を離れ、王家所有の小さな館で暮らすことになる。新しい国王にはヘンリーの弟が即位したが、王族の予算はこれまでの半分に減らされ、会計院と貴族議会による半年ごとの監査が義務づけられた。


「王家の威信が失われるぞ。それでもよいのか」


「帳簿を見られただけで失われる威信なら、最初から存在しておりません」


リディアの声が傍聴席から聞こえ、ヘンリーは振り返った。リディアは厚い灰色の外套を着て、セシリアと並んで立っている。寒さで鼻先を赤くしながらも、判決文の数字に間違いがないか、最後まで帳面と照らし合わせていた。


白い離宮、外国産の家具、宝石、特注の馬車、王家の私有地は競売にかけられた。売却金は最初に北部の救済、孤児院の補償、慈善院の毛布購入へ回され、その後でセシリアとアルヴェイン侯爵領への賠償に充てられた。白い離宮は宿泊施設として買い取られ、壁を塗り直したうえで、北部の療養所として使われることになった。


春になると、平民となったジェラルドは競売商会の倉庫で働き始めた。灰色の作業着を着て、朝から家具を磨き、荷札をつけ、買い手の馬車へ運び込む。自分のために作らせた胡桃材の机も、その倉庫へ運ばれてきた。


「この角の葡萄酒の染みを落としてください。染みが残れば、買い取り額が金貨三枚下がります」


「私が王太子だったころに使っていた机だぞ。もっと丁寧に扱え」


「ですから、御自分で丁寧に磨いてください。売却代金は、あなたの返済へ回されます」


ジェラルドは布へ磨き粉をつけ、かつてセシリアが用意した机を何度もこすった。昼食は黒パンと豆のスープで、少し遅れれば表面に脂の膜が張った。仕事を代わる者も、食事を温め直す者もおらず、彼は冷めたスープを自分で最後まで飲んだ。


ミレーヌは王立縫製工房で働いた。生成り色の作業服を着て、軍服の釦つけや古い毛布の繕いをする。初日は針で指を刺すたびに泣き、工房長へ別の仕事を求めた。


「私は細かな作業が苦手なのです。もっと私に向いている仕事をください」


「泣いている間に縫い目は直りません。御自分で破いた布は、御自分で繕ってください」


工房長は新しい糸を一本渡しただけで、作業を代わらなかった。ミレーヌが雑に縫えば、洗濯をしたときに糸がほどける。そのたびに完成品が戻され、彼女は自分の縫い目を最初から直した。


それから一年後、王都の南地区に、セシリアが設立した学院が開校した。以前は貴族の別邸だった建物を改装し、教室には長机と大きな黒板が置かれている。庭には白いダリアと赤い百日草が咲き、昼休みになると生徒たちは木陰で弁当を広げた。


学院では、女性が読み書きだけでなく、法律、契約、会計を学ぶことができた。婚約や結婚によって持参金を奪われた者、夫や親族に無償で働かされている者が、無料で相談できる窓口もある。相談室には湯を沸かす小さな炉があり、話が長くなって茶が冷めるたび、当番の生徒が黙って温かい物へ取り替えた。


セシリアは学院長として、深緑色の長衣を着て働いていた。髪は簡単な三つ編みにまとめていたが、一年前より編み目がそろっている。昼食の時間になると必ず仕事を止め、教師や生徒と一緒に温かなスープを飲んだ。


リディアも十六歳になり、王国最年少の会計監査官見習いとしてアーネストのもとで働いていた。会計院の灰色の制服はまだ肩が少し大きく、袖を一度折って着ている。彼女の机には帳簿、削りかけの鉛筆、食べ忘れて固くなった胡桃パンが並んでいた。


「リディア、こちらの合計が金貨一枚合いません。五頁目の運搬費を二度足しています」


「その程度でしたら、読み飛ばしてもよろしいのではありませんか」


「あなたが金貨一枚を見逃せば、次は十枚、その次は百枚を見逃してもよいと言う者が現れます」


「分かりました。訂正いたします。ですが、赤い線が大きすぎます」


アーネストは返事をせず、赤い線の横へ小さく訂正理由を書いた。リディアも文句を言いながら報告書を書き直す。二人の間に置かれた茶は冷めていたが、どちらも仕事が終わるまで気づかなかった。


学院の開校一周年を祝う日、アルヴェイン侯爵邸には久しぶりに家族全員が集まった。オズワルドは領地から持ち帰った林檎酒を開け、エドガーは北部の橋が完成したと報告した。橋のたもとには冬を越えた村人たちが植えた水仙が咲き、春には黄色い花が道の両側へ続いたという。


食卓には鶏肉の香草焼き、春野菜のスープ、焼きたての丸いパンが並んでいた。中央には料理人が朝から作った大きな苺のタルトが置かれ、甘いバターと果実の香りが部屋に満ちている。食事が始まる直前、執事が銀盆に載せた分厚い封筒の束をセシリアへ届けた。


「すべて、お姉様への縁談ですか」


「学院長になってから急に増えたの。私の性格ではなく、賠償金の額を気に入った方も混じっているでしょうね」


「御安心ください。すでに調査を終えております」


リディアは椅子の下から厚い冊子を取り出した。縁談を申し込んだ者の財産、借金、仕事、社交界での評判、過去の婚約回数、元恋人の人数まで記録している。一人について三頁以上あり、最も長い者には補足資料が十二枚もついていた。


「こちらの伯爵は借金が金貨四千枚ございます。子爵家の次男は評判こそよいのですが、元恋人が七人おります。こちらの騎士団長は――」


「ありがとう。でも、次に誰を好きになるかは、自分で決めたいの」


セシリアは笑い、冊子を静かに閉じた。リディアは両手で抱えた調査書を見下ろし、しばらく動かなかった。七年間、姉を守るには相手の間違いをすべて見つけなければならないと思ってきたが、今のセシリアは自分で契約を読み、自分で断り、自分で相手を選ぶことができた。


リディアは暖炉の前へ行き、調査書を火へ入れた。しかし燃え始める直前に一束だけ抜き取り、素早く背中へ隠す。セシリアが目を細めると、リディアは何もなかったような顔で席へ戻った。


「今、何か残したでしょう」


「賭博癖、暴力歴、重大な借金がある方の一覧だけです。お姉様の選択へ口は出しませんが、くずの早期発見だけは妹の仕事です」


「それでは、誰かを好きになったら、契約書へ署名する前にあなたへ相談するわ」


家族の笑い声が食堂へ広がった。セシリアは苺のタルトを切り分け、一番大きな苺が載った一切れをリディアの皿へ置く。夜会で食べ損ねた物より少し形は崩れていたが、生地はまだ温かく、切り口から苺の果汁が染み出していた。


「私の人生を取り戻してくれた監査官様へ、成功報酬です」


「足りません。これからも毎年いただきます」


「では、来年は苺を二つにしましょう」


リディアは大きな苺を口へ入れた。甘い果汁に少しだけ酸味が混じり、焼きたての生地からバターの香りが広がる。向かいではセシリアが、自分の皿へ載せたタルトを誰にも譲らず、温かいうちに食べ始めていた。


リディアは食後、七年間の記録をつけた最後の帳面を開いた。最終頁へ「姉上、学院開校一周年。昼食も夕食も完食」と書き、インクが乾くのを待ってから表紙を閉じる。苺の刺繍がついた帳面を棚へ収め、代わりに新しい一冊を取り出した。


新しい帳面の最初の頁には、姉が我慢した日ではなく、これから自分たちが選ぶ予定を書くことにした。来週は学院の庭へ新しい花を植え、次の休日には二人で市場へ行く。姉を縛っていた婚約の精算は、これですべて完了した。


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