48話
さっそく、いた。
四階層のモンスターを探し初めてから数分後、簡単に見つけることができた。
俺の視線の先には、首から上がない刀を持った侍が街を歩いていた。白装束を身に纏い、お腹の部分は赤い血のような何かが染み込んでいる。
さっそく、鑑定だ。
発動:『鑑定』
《首探し。どの個体も刀を持ち、それに見合う技量を持っている。しかし、知能はそこまで高く無い。敵対者の首を重点的に狙ってくる傾向がある。痛覚が無く怯まない》
首か。まあ、後ろからの不意打ちは効きそうだが、怯まないのは厄介だな。攻撃を当てて、下がるのヒットアンドアウェイで行こう。
『気配隠蔽』の効果が切れていない内に決めたいな。
カバンから、プラスチックの棒を取り出して組み立てる。
発動:『影操作』
・・・・・・・・・・よし! 完成だ。
プラスチックの棒に影を纏わせ、投げ槍を作成した。
後は、
発動:『投擲』
俺の手から放たれた、槍はまっすぐに侍の背中に突き刺さった
やったか?
侍は倒れることなく、こっちをゆっくりと振り向く。
効いてない!? いや、痛みを感じてないだけだ。おそらく、急所を外したんだろう。
そんなことを考えている間にも、侍は走ってこちらに向かってきている。
アイツ、目がないのに何でこっちの場所を認識できるんだよ!!
落ち着け、いつも通りに戦うだけだ。
侍が刀を構えて、突っ込んでくる。
発動:『プロテクション』
侍は、急に目の前に現れた壁に反応できず勢いのままぶつかる。
チャンスだ。
即座に『プロテクション』を解除して、目の前の壁を消す。
敵が混乱している間に、胸に向かって槍を突き刺した。
侍が着ている白装束が血に染められる。
まだ、侍は倒れる様子は無く。刀を振り下ろそうとしている。
俺は、槍を放しバックステップでそれを避ける。
正確に心臓を貫いた。もう長くはないだろう。
侍は、刀を手放し地面に倒れ、そのまま動かなくなった。
少しすれば、死体が光の粒子に変わりドロップアイテムが現れた。
拾い上げ、ドロップアイテムを確認する。
それは、瓶の中に入った丸薬だった。まずは、鑑定だ。
発動:『鑑定』
《首探しの丸薬。飲むと鎮痛効果が現れる。副作用無し》
なるほど、これは高く売れそうだな。
今日は、ここまでにして帰ろう。流石に、疲れた。
数十分後
無事、ギルドに到着した。
早速、換金しよう。
「あ! 冬野さん!!」
この声は・・・・・。声のする方を見て、声の主人を確認する。
そこには、激ヤバ女がこっちに向かって手を振りながら歩いてきていた。
流石に逃げれないか。対応するしかない。
「お久しぶりですね! 冬野さん!」
「・・・・・・お久しぶりです」
名前はなんだったか。思い出せない。
「お嬢様? どうなさったのですか? そちらの方は?」
ヤバ女を追うようにもう一人、こちらに歩いてきた。
「あ! 恵子! こちらは前に話した、冬野さんよ」
「そうでしたか。はじめまして、冬野様。わたくし、四条家のメイドの林恵子と申します。お嬢様を助けていただいたとお聞きしました。誠にありがとうございました」
そう言って、林さんは俺に深々と頭を下げてきた。
「頭を上げてください!」
こんなところで、頭を下げられたら目立つだろ!!
林さんは、頭を上げる。改めて、目の前の林さんを観察する。
歳は二十代ほどで、髪は短く整えられている。一つ一つの所作がとても丁寧で完成しているように、思えた。
てか、メイドか? 本当にそういう職業があるんだな。やっぱり金持ちは、使用人ぐらいいるものなのか?
「そうだ! 今から一緒に探索に行きませんか? お試し的な意味で」
コイツ、マジでしつこいな。その情熱はどこから来るんだ?
そうだ! じゃねえよ。ソロから変える気は、無いって言ったよな。確か。
「今、探索から帰って来たばかりなんだ。それにこれからも、俺はパーティを組む予定は無いよ」
「そうですか・・・・・・」
ヤバ女は見るからに落ち込んでいる。流石に、これで勧誘をやめてくれるか?
「じゃあ、俺はこれで」
俺は、強引にその場を去ろうとする。
「あの、冬野様、少々よろしいしょうか?」
その場を立ち去ろうとする俺を、林さんが呼び止めてくる。
なんだ? もう用なんてないだろ。
「何ですか? 林さん」
「少しだけ、お嬢様がいない場所でお話ししていただけませんか?」
「え? 私抜きで冬野さんと内緒のお話?」
「ええ、そうです。だがら、お嬢様はここで待っていてくださいね」
話? 一体なんだ? 正直断りたいが、内容を聞かずに帰るのは流石に怖い。変なお願いだったら、その場で断ればいいか?
それに、ここで断っても問題を先延ばしにしているだけのような気がする。
「わかりました。どこで話しますか?」
「ついて来てください」
俺と林さんは、ギルドの人気のない場所に移動する。
「それで、話って何ですか? 林さん」
「その前に、私のことは気軽に恵子とお呼びください」
は? 嫌だよ。
「それで、用はそれだけですか? 林さん?」
「恵子とお呼びください」
無駄に圧のある笑顔で言ってくるので、俺も笑顔で返す。
「そんな、初対面の女性を呼び捨てになんて出来ませんよ。林さん」
呼び方なんてどうでもいいが。今、言う通りにしたら、舐められそうだがら従わない。
圧をかければ、言うことを聞くなんて思われたら嫌だしな。
「強情ですね」
そんなことを小さな声で呟いている。常人では、聞こえないほどの小ささだがレベルアップで強化された聴覚でその声を拾う。
「それで、一体何の用なんですか?」
もう早く帰りたいんだが。
「はい、今日は折り入って冬野様にお願いがあって参りました」
「何ですか?」
「お嬢様と一度で良いので、探索に行っていただけないでしょうか?」
絶対、嫌だ。それをすると、あの女は味を占めて何度も探索に誘ってくる気がする。
「お断りします」
「そこを何とかお願いします!」
「何で、そこまで必死になって頼むんです?」
マジで分からない。
「最近のお嬢様は、危なくて見ていられないのです。おそらく、仕事の関係で海外におられる両親がいない寂しさを紛らわそうと、ダンジョンに潜っているのだと思います」
じゃあ、俺じゃなくて両親に頼めよ。
「お願いします。ギルドに依頼する形で、依頼料をお支払いしますので」
「お断りします。彼女に必要なのは、俺ではなく親の愛です。それに、お金で繋がった関係は不健全だと思います」
それっぽい理屈を並べて、断る。まあ、メイドの彼女が四条の両親に何か言える立場じゃないんだろう。
だが、あの女との探索は死ぬほど面倒くさそうだから、金を払われても絶対に嫌だ。
あと、ここでこの依頼を受けると後から、ポンポンと他の依頼を頼まれそうだしな。
「じゃあ、用はもう済みましたよね。俺はここで失礼します」
「冬野さま! 気が変わりましたらいつでも言ってください!!」
その言葉を背に、ドロップアイテムを換金して家に帰った。




