闇カジノ
カチャリ。
「ん、ミライ?こんな夜中に、何処行くの?」
「お金稼いでくる」
「おっけ〜」
パタン。
「お客様、申し訳ありませんが当店はもうすぐ閉店時間となっております」
入口で門前払いを食らう。時間帯を考えれば当然だけど。
「ブラッディメアリーを3杯、ハバネロとタバスコ付きで」
支配人と賭事するための合言葉を全力ショートカット。この下っ端も下っ端っぽい雰囲気の店員にこのダサい合言葉が伝わるといいのだけれど。
「…お客様、此処は飲食店ではございません。それに先程申し上げました通り…」
「あーもう、伝わんなかったか…この店の総支配人を呼んで。まだ居るでしょう?」
「は?」
「あ?」
え、嘘…この下っ端、本気で何も知らないの…?イライラも吹っ飛ぶくらいのビックリなんだけど。
「うちの門番が迷惑掛けたな、情報が漏れるのを防ぐためにああいう下っ端には情報を渡してないんだ」
「次からは通れるようにしといてよね」
「お前に次があるとは思えんがな。楽しい借金生活の始まりだぜ?」
それはアタシの台詞なんだけどね。
情報屋を辞めたアタシの金稼ぎはかなり変わっている。違法な賭博場の支配人と賭事をし、店の持金を全部吸い尽くすのだ。文字に起こすと中々凶悪だね。
「どれがいい?」
「丁半…いや」
ポケットから20面ダイスを取り出す。
「4」
そう言って、支配人に渡す。
「…倍率は?」
此処で言う倍率は、勝った時に貰える金のこと。例えば勝てば賭け金の5割を追加で貰える時は5割と言う。倍率1で勝てば金が倍、ありえない話だけど倍率0だと勝っても賭けた分しか返ってこない。要するに勝てば賭け金×倍率の金が得られるのだ。
☆¥$€★€$¥☆
もうちょっと具体的な説明。興味無い人は飛ばしていいよ。
例えば、倍率xの賭事にチップをa枚ぶち込む。
その賭事に勝てば、ぶち込んだ分も含めて(x+1)a枚のチップを得られる。
要するに1+倍率=オッズ。ややこしいね!
☆¥$€★€$¥☆
「0より大きい数でお好きに。ディーラーは貴方でしょう?」
「なら、19にしとくか。確率が確率だしな」
意外と根は真面目…いや、あっちも賭けるんだもんな。
「そういや、賭け金は?」
「持ち金全賭け」
「…ほう?」
あー、私が泣き叫ぶ様を想像してる顔だ。
「ほら、早く」
「ああ、そうだな。さて、4だったか」
カラカラカラ…カタン。
「「…4」」
「…所持金は?」
電子通貨カードを投げる。
「店の持ち金は?」
「こんなに無い」
「店舗と土地を売っても?」
「足りない」
「良かったね、楽しい借金生活を始められるよ」
店の金が私のカードにどんどん流れ込んでいく。そのうち店の持ち金はマイナスになり、借金として記録される。あーあ、椅子から崩れ落ちちゃった。涙と鼻水垂れ流して。汚い。
「いつまで床にへばりついてんのさ、早くいくら賭けるか言ってよ」
「ち、丁!倍率は1!借金分オールイン!」
カラカラカラ…
「半だね、借金増額〜」
あーあ、顔が青白くなってってる。
「さーて、第2回戦だね」
「もうやめてくれええええええええええええええええええええ」
カチャリ。
「ただいま〜」
「おかえり。いくら入った?」
「カコ、まだ起きてたんだ。97倍くらいになった」
「おー、大漁じゃん」
後日談。
「健康診断曰く、アンタここ数ヶ月でかなり健康になったみたいだねぇ」
「…むしろ逆ベクトルの不健康に走ってる気がするが…」
「ところで、借金は返せそうかい?」
「すぐ返せるわけあるか、トゴだぞ?」
「そっかそっか。ところで、腕利きの医者が身内に居るんだけどさ…」
「あん?」
「費用タダ、借金全て肩代わり」
「乗った!」
手術後、男は多臓器不全に近い症状で亡くなったらしい。




