最後の怖い話:七物語
七物語って知ってるか?
知らないよな、百物語と比べたら一般的とは言えない。
七物語っていう降霊術があるんだ。幽霊を降ろす術、で降霊術。
文字通り、怖い話を七話話すんだ。七人の人間が集まって、一人一話、自分の知ってる話を話す。
百物語の場合、百話目を話し終わったときに霊が姿を現すとか、話している最中に奇妙なことが起こるとか言われてるんだが、七物語の場合はそうじゃない。
七話聞いてる間も、全部聞き終わっても、それだけじゃ何も起こらない。
ちょっとした"ネタ"があるんだ。
七話全部聞いた人間がこれを知ってしまうと、そいつに災いが降りかかるとされている。
"ネタ"だけ知ってても特に問題ない。
だが七つの物語を全部聞いた人間は、決してこの"ネタ"を知ってはいけないんだ。
――お前に"ネタ"を教えてやるよ、シン。
だからな、これを聞いちまったら、もし誰かが「七物語をやろう」って言っても乗っちゃダメだぞ。
いいか?
よし、じゃあ耳を貸せ――
今の話自体が"ネタ"なんだ。
七話全部聞いた人間がそれを知ったら災いが起きる――このこと自体を知っちゃいけない。
ああ、ややこしいよな。自己参照的だ。
まあきっと……コジなら分かると思うぞ。
あいつにも今の話を教えてやって、解釈を聞いてみろ。
――ついでに、俺が例の記録をちゃんと付けろって言ってたって伝えてくれ。
おしまい