状況
暴れる手を押さえるのは骨だと思ったが、予想に反してクスナは何かにすがるように握り返してきた。
顎を上向せ口を開いた状態にする。そこに唇を押し当て己の息吹を吹き込む。
「ん……ふっ………」
口呼吸が塞がれたクスナの鼻息が顔にかかる。
息も絶え絶え、クスナは誰がその身に触れてるのかすらわかってないようだった。
体内の毒はこれで浄化できたはず。
ミンは唇を離した。
クスナは目を閉じ、ぐったりしている。
このまま気絶するかと思ったが……
クスナの目蓋がびくりと動く。
、そして、意外な人物の名前をつぶやいた。
「……キョウ?」
クスナは目を開け、ミンに気づくとほっとしたように笑みを浮かべた。
「ミン殿? でしたか……」
「状況わかりますか?」
「……?」
クスナは相当混乱しているようだった。
無理もない。長老に殺されそうになるなんて……
クスナはぼーっとミンの顔を見ていた。
そして、はっとしたように身をよじり逃げようとした。
だが一歩遅かった。
ミンの瞳が赤く光っていた。邪眼だった。
「あ…ん?……」
クスナはもう喋れなかった。
その目は次第に虚ろなものになる。
「導師様、今日のことは忘れて下さいね」
ミンの言葉にクスナは無言で頷く。
「あなたは、今日、長老には会いませんでしたね」
その言葉にもクスナは頷いた。
「それからね……」
ミンは妖しく笑う。
「……服を脱いで」
クスナは自分のボタンに手をかけたが、その手はぴたりと止まってしまった。
「さすがにムリか」
ミンは残念そうにつぶやく。
いくら相手を意のままに操れる邪眼といえど、あまりにも突拍子のないことや、本人が望まない行動をさせるのは難しい。
「動かないでね」
ミンはクスナの服のボタンを外す。あらわになった肌に指を這わせる。
クスナは抵抗しなかった。
* * *
「このふしだらな娘め! 何を考えている!」
長老はミンをビンタした。
意識が戻った長老が見たもの。
それは服が乱れた状態で横たわるクスナと、その前で自身の服を直している姪の姿だった。




