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月色の砂漠~長老の野望~  作者: チク


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29/33

状況


 暴れる手を押さえるのは骨だと思ったが、予想に反してクスナは何かにすがるように握り返してきた。

 顎を上向せ口を開いた状態にする。そこに唇を押し当て己の息吹を吹き込む。


「ん……ふっ………」

 口呼吸が塞がれたクスナの鼻息が顔にかかる。



 息も絶え絶え、クスナは誰がその身に触れてるのかすらわかってないようだった。


 体内の毒はこれで浄化できたはず。

 ミンは唇を離した。


 クスナは目を閉じ、ぐったりしている。

 このまま気絶するかと思ったが……


 クスナの目蓋がびくりと動く。

、そして、意外な人物の名前をつぶやいた。


「……キョウ?」


 クスナは目を開け、ミンに気づくとほっとしたように笑みを浮かべた。

「ミン殿? でしたか……」



「状況わかりますか?」

「……?」

 クスナは相当混乱しているようだった。

 無理もない。長老に殺されそうになるなんて……

 クスナはぼーっとミンの顔を見ていた。


 そして、はっとしたように身をよじり逃げようとした。


 だが一歩遅かった。

 ミンの瞳が赤く光っていた。邪眼だった。


「あ…ん?……」

 クスナはもう喋れなかった。

 その目は次第に虚ろなものになる。


「導師様、今日のことは忘れて下さいね」

 ミンの言葉にクスナは無言で頷く。


「あなたは、今日、長老には会いませんでしたね」

 その言葉にもクスナは頷いた。



「それからね……」

 ミンは妖しく笑う。

「……服を脱いで」



 クスナは自分のボタンに手をかけたが、その手はぴたりと止まってしまった。


「さすがにムリか」

 ミンは残念そうにつぶやく。

 いくら相手を意のままに操れる邪眼といえど、あまりにも突拍子のないことや、本人が望まない行動をさせるのは難しい。


「動かないでね」

 ミンはクスナの服のボタンを外す。あらわになった肌に指を這わせる。

 クスナは抵抗しなかった。





     * * *



「このふしだらな娘め! 何を考えている!」

 長老はミンをビンタした。


 意識が戻った長老が見たもの。

 それは服が乱れた状態で横たわるクスナと、その前で自身の服を直している姪の姿だった。

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