確信
「大丈夫か?」
ロイは、クスナが起き上がるのに手を貸す。
「まずはうがいして」
とコップに入った水を差し出す。
「あんたも水でも飲んで、頭を冷やせ」
とはケイに言った。
そういう割にはケイの分の水は用意されてないようだ。
「人として有り得ないのは、こういう状況を邪魔する君の方だろう。余命短い僕が最後の晩餐を味わってもバチは当たらないだろう?」
「あんたは治ってる」
それを聞いて、ケイは自分の腰を確認した。そして呆然となった。
それをうんざり気味に見たロイ。
「わざとらしいんだよ」
この時、ケイは本当に驚いていた。
長老が何年もかけて完成させたであろう呪い。
その呪いによって死ぬなら本望だと思っていた。
それなのに、外から来た魔導師によって呪いが消されるとは……
「怪我を治してくれた導師に、この仕打ちはあんまりだろ?」
それを聞いて、ケイは頭が冷えたのか、おとなしくなった。
クスナはうがいの後、水をごくごく飲みほした。
「大丈夫か?」
「えぇ」
「改めて、礼を言う。ケイを治してくれてありがとう」
「いえ……」
クスナは立ち上がろうとしたが、その体がふらついた。
ロイがその体を支えようとするがクスナは固辞した。
「ここがどこかわからないだろう? 送っていく」
ロイはクスナの体を支えるように強引に抱き寄せる。そして神殿へと瞬間移動するのだった。
* * *
「ところでミン殿は女が好きということはないよね?」
というカースの問いに、長老は固まった。
「いやね、前のカノジョが女に走ってしまってね」
カースはさらっとすごいことを言った。
「はい?」
カースの唐突な質問に長老は声が裏返った。
長老はなんと答えていいかわからず、愛想笑いを浮かべている。
その時、神殿にクスナが戻ってきた。
クスナと一緒にいたのがケイではなく、ロイだったので、長老はほくそ笑んでいた。
ケイの死を確信していたのだ。
「ケイ様は?」
などと心配そうに尋ねながらも、長老は本当は笑い出しそうだった。
カースは神妙な顔をしている。それと同時にクスナに哀れみのまなざしを向けていた。




