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月色の砂漠~長老の野望~  作者: チク


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20/33

確信


「大丈夫か?」

 ロイは、クスナが起き上がるのに手を貸す。


「まずはうがいして」

 とコップに入った水を差し出す。


「あんたも水でも飲んで、頭を冷やせ」

 とはケイに言った。

 そういう割にはケイの分の水は用意されてないようだ。



「人として有り得ないのは、こういう状況を邪魔する君の方だろう。余命短い僕が最後の晩餐を味わってもバチは当たらないだろう?」


「あんたは治ってる」

 それを聞いて、ケイは自分の腰を確認した。そして呆然となった。


 それをうんざり気味に見たロイ。

「わざとらしいんだよ」



 この時、ケイは本当に驚いていた。

 長老が何年もかけて完成させたであろう呪い。

 その呪いによって死ぬなら本望だと思っていた。

 それなのに、外から来た魔導師によって呪いが消されるとは……



「怪我を治してくれた導師に、この仕打ちはあんまりだろ?」


 それを聞いて、ケイは頭が冷えたのか、おとなしくなった。



 クスナはうがいの後、水をごくごく飲みほした。

「大丈夫か?」

「えぇ」

「改めて、礼を言う。ケイを治してくれてありがとう」


「いえ……」

 クスナは立ち上がろうとしたが、その体がふらついた。

 ロイがその体を支えようとするがクスナは固辞した。



「ここがどこかわからないだろう? 送っていく」

 ロイはクスナの体を支えるように強引に抱き寄せる。そして神殿へと瞬間移動するのだった。



     * * *


「ところでミン殿は女が好きということはないよね?」

 というカースの問いに、長老は固まった。


「いやね、前のカノジョが女に走ってしまってね」

 カースはさらっとすごいことを言った。


「はい?」

 カースの唐突な質問に長老は声が裏返った。

 長老はなんと答えていいかわからず、愛想笑いを浮かべている。


 その時、神殿にクスナが戻ってきた。



 クスナと一緒にいたのがケイではなく、ロイだったので、長老はほくそ笑んでいた。

 ケイの死を確信していたのだ。



「ケイ様は?」

 などと心配そうに尋ねながらも、長老は本当は笑い出しそうだった。

 カースは神妙な顔をしている。それと同時にクスナに哀れみのまなざしを向けていた。



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