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フレアは町に向かう道の途上だった。
目的地は『勇者の洞窟』の北北西にある『港町』で、魔物に襲われて死んだ、有名な吟遊詩人の生家がある町だ。
しばらくはここを拠点にして、装備を整えたい。
今の装備では、これから先を考えると心もとない。
城で国王は、『宝箱に入っているものは何でも持っていっていい』と言っていたのに、宝箱には120Gしかはいっていなかった。
それで何を買えというのだ?
『物干し竿』では行商人と間違えられるし、『釘つき棍棒』では蛮族か、危ない人にしか見えない。
それらを買うぐらいなら、もう少しまともな物が欲しいと思って、弱い魔物を見つけては、ひたすら素手で戦い続けた。
その甲斐あって『青銅の剣』も買え、順調にレベルアップして、これまでに『小回復』『熱線』と言った魔法も覚えていた。
そうそうしているうちにもう、『港町』の入り口が遠くに見えている。
が、もうひと稼ぎしないと宿屋に泊まる予算が厳しいし、日はまだ高く、太陽の光がさんさんと降り注ぐ。
フレアはまぶしそうに、いつ見ても真上にある太陽を見上げた。
国王と会って以来、フレアが宿屋などに泊まらないと、夜がやって来なくなった。
『ほとんど呪いだなぁ』などと思いつつ、今日も長い一日がつづく。




