女王様と大魔王様
ひい、ふう、みい…
そうか、今日で5千万年目かあ。
のんびりと寝台に寝転び、指を折る。
まあ、最初の子どもが今では法王とか、魔王とか、獣王だもんね。
年取るわけだ~。
そう思う人物は、儚げな容姿に長く美しい黒髪の美女であった。
暇潰しに手元の書物を捲っていた時、部屋の扉が壊されるかの如く開け放たれた。
「…リーア!」
声と同時に寝台に寝転ぶ美女を後ろから力強く抱き締める。
「ガレイシア…久しぶり?」
顔だけ振り返り笑みを浮かべれば、釣られて破願する相手。
久しぶりに合う愛する夫の一人に抱き締め返し、たっぷり観察していく。
いや~、相変わらず美形だな。
今は私が20歳くらいにしてるから、同じ位にしてくれてるんだね。
うーん…愛されてるな~。
相手は闇の様な漆黒の髪、紫の瞳、黒い装束を身に纏う…泣く子も更に絶叫する大魔王様である。
久しぶりの逢瀬の為か、早速口づけを交わす。
「…リーア、お前は会うたびに魅力的だ。…愛している…背の君。」
彼とは四人の息子がいるが、未だに私への態度は変わらない。
というか、ますます加速してる?
大魔王の彼は、ほとんどの権力を息子達に譲ったものの、その権威と力は未だ絶大である。
もし私が軽くお願いすれば、好きな国を綺麗に片付けてくれるだろう。
まあ、そんな事しなくても大抵の国は反抗しないけど。
現在の大国は4つ。
四人の魔王の治める魔国。
大魔王は隠居中。
法力を扱う法王の治める法国。
数多くの獣人の住む獣人国。
エルフやドワーフ、ホビットの住む精霊王の治める精国。
残りの小さな国々はほとんどそれら大国へ追従している。
因みに私と交わったり、血を分けた者、血を継いだ者は不老不死となる。
目の前で私をぎゅうっと抱き締める彼も、不老不死なのだ。
「ねえ、シア…子ども達は元気?」
夫のガレイシアに問い掛ければ、少し間を置いてポツリと返された。
「………まあ、死んでは居ないだろうな。…それより…」
俺の事は聞かないのか?と、寂しげに眉を下げる姿に思わずときめく。
夫は四人、愛人は数多く居る身だが、やはり絶大に権力があり、見目麗しい彼には特に寵を与えてしまう。
やっぱり…顔は大事って事よね。
自分から相手へ口付ければ、顔中へ口付けが返される。
「…あ、そういえば。」
ふとある事を思い出し、寝台に腰掛ける。
「?どうかしたのか?」
ピタリと寄り添ったままの夫に、頷き返す。
「ええ…今度の世界高等会議には、何を来ていこうかと思って…。」
5年に一度、全ての国の代表が集まるその日は、参加する者にとってみれば国の威光を示す絶好の機会。
…らしいけど、私には関係無いし。
思案にふける最愛の女性の手の甲に唇をあてながら、気楽にガレイシアは答える。
「…何色が良い?直ぐに仕立てさせて置くが。」
「あ、ありがとう。…でも良いわ。自分で用意するから。」
リーアの言葉に少し残念そうなガレイシアに、少しほっとする。
だって、絶対そんな事したら… イシュや、ルヴィが煩いし。
他の夫の姿を想像し、胸中で溜め息を吐く。
今でこそ多少落ち着いた関係だが、当初は若かった為か、それなりに気を付けていた。
頑張ったからね。
…特に、四人には。
冗談抜きで、世界戦争に突入しかねないしね。
あっはっは。