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 シューちゃんが予想外にプリンに食いついた。私の分もあげようかと言うとすんなり食べてくれた。いつもと違いすぎて驚いたけど、いやぁ、こんなに食いついてくれて嬉しいなぁ。


「シューちゃん、そんなに美味しい?」

「美味しいっ、なんで今まで隠してたの? ずるいっ」

「いやぁ、ごめんね。これからはじゃあ、週に一回くらいはつくろうか」


 元々日本ではお菓子作りは気が向いた時にしかしなかったからそんなに上手でも詳しいわけでもないし、道具もないし、そもそも砂糖が安いものでもない。料理には仕方ないからつかうけど、積極的にお菓子作りはしなかった。

 せいぜい暇つぶしにクッキーくらいだ。あれも魔法があるから何とかなったけど、オーブンとかないから一般家庭でお菓子作りって相当難しいのよね。日本ではゼリーとかなら結構つくってたけど、ここではゼラチンがスーパーで売ってたりしないし。


「7日に一度かぁ。ねぇ、あのね、私、大きいのが食べたいなぁ」

「あのね、シューちゃん、よく聞いて」

「あ、だめ? そ、そうだよね。きっと高い材料つかってるんだよね? こんなに美味しいんだもん」


 勢い込んでおねだりしたシューちゃんだけど、私が真剣な顔で肩に手をおくとはっとしてしょんぼりした。


「そうじゃなくてね、沢山食べたら、吐くわよ」

「え」


 プリンを山盛りたべたい、というのは子供のころによくもつ願望だと思う。私と結花奈も例に漏れず、バケツいっぱいのプリンが食べたくて、つくった。

 プリンが簡単につくれるというプリンの元を買ってきて、バケツいっぱいは無理だったけど普段食べるプリン10個分くらいはあった。

 それを食べた。計らずに適当につくったおかげで味は微妙。まぁ食べれないわけでもないからテンション落としながら食べた。食べたけど、後半飽きてきて、味のせいもあってかすごく辛くて吐き出したくなりながら食べた。

 おかげでしばらくプリンは見るのもいやだった。つまり、本当に美味しいものでも適量というものがある。いっぱいあればいいものではない。むしろ後悔する。


「そ、そうなんだ…」


 と、いうことをとうとうと説明するとシューちゃんは理解してくれた。ふぅ、よかった。もうあの時みたいに、食べきれない子の尻拭いをするのはごめんだ。


「じゃあ、今日と同じ大きさで2つなら、いい?」

「いいわよ」

「やった、ありがとう、ユウコ大好き」

「私も大好きよ」


 にこにこ笑顔になるシューちゃんが可愛いので頭を撫でる。いつなでてもさらさらで手触り最高だ。


「むー」

「あら結花奈、なにフグの物まねしてるの?」

「違ーう」

「冗談よ。口でむーとか言って、あからさまね。可愛いわよ」

「そんなおためごかしで誤魔化されないよっ」

「はいはい、結花奈のことももちろん大好きよー」


 わざわざ私の隣まできてむーむーと呻いていた結花奈の頭も撫でてあげる。


「えへへ」


 途端に笑う結花奈は可愛いけど、この子日本に居たときより甘えん坊というか精神年齢幼くなってる気がする。気のせい?

 単純に、今まで妹分は結花奈1人だったからシューちゃんに対抗してるのかしら。それはそれで可愛い………うん?


「そういえば結花奈、ちょっとぴしっと立ってくれない?」

「へ? こ、こう?」


 気をつけの姿勢で立つ結花奈の前に同じく背筋を伸ばして立つ。

 私の胸元にある結花奈の頭。とりあえず撫でつつ、記憶の中と比べる。


「優姉、なにしてんの?」

「いや……結花奈身長伸びてなくない?」

「ひどっ、酷い! 気にしてるのに! 私まだ成長期だし! これからだし!」

「いまいくつ?」

「えっと、じゅう……18」


 声が小さくなる結花奈。別に私は結花奈の身長を揶揄してるわけではない。可愛いから成長してほしくないとは思うけど。ただ、いや、おかしいよね。


「うん、やっぱりおかしくない?」

「なにが!? 優姉私のこといじめて楽しい!?」

「ユカナ、落ち着いて。小さいユカナは可愛いよ」

「優姉とかわらないシュリに言われてもむしろ嫌みだよ!」

「落ち着きなさい」


 ヒートアップしそうな結花奈の頭にチョップをいれる。


「ううっ、なに? なんで私こんないじめられてんの?」

「違うから。あのね、私たちこっちにきて二年たってるのよ? 身長全く変わってないとかおかしくない? というか、考えたら私、髪の毛は伸びたけど爪は伸びてないんだけど」

「え? ……ほんとだ!」

「え? 爪って、伸びないでしょ?」

「えっ」


 ちょっと待って。今なんか、すごい核心に近づいた気がする。え、この世界の人、爪伸びないの? まぁシューちゃんが爪切ってたらもっと早く気づいてるだろうけど。


「……シュリ、1つ聞いていい?」

「なに?」

「シュリって、うんこする?」

「するよ」

「するのか…」

「いや、なに真顔で聞いてるの?」

「だってよく考えたら異世界だし、もしかして私らと体の作り違うのかと。トイレはあるし、オナラはきいたことあるけど、もしかしてうんこはしないのかと思って。内臓とかは同じなのかな。ねぇ、胃は何個?」

「1つだよ……むしろ二人が何個なの」

「失礼な、一個に決まってるっしょ」


 結花奈は何を聞いてるのよ。まず気になるのがそこなの? 今まで問題ないし、もしシューちゃんの胃が2つでもどうでもいい。


「人型で外見同じで動きも同じなんだから、基本中身も同じじゃない? そこはどうでもいいわよ。ただ私たち、二年分も成長してない気がしたの」

「そう言われると、鏡見ても変わってないかな。ん? もしかして私不老不死?」

「不死かは知らないけど、もしかしてこっちと向こうで時間の流れが違って二年でも成長しないのかな、とふと思った」

「うーん、どうだろ。十年ならともかく、二年くらいじゃよくわからないし」

「いや、私はそうだけど結花奈はほんとにまだまだな成長期だったんだから、全く変わらないのは流石におかしいでしょ」

「むむ、そう言われるとそうかも。爪は?」

「え、爪? まぁ、切るの面倒だし、楽でいいんじゃない? なんだろ、空気の成分とかで伸びないとかあるのかしら」


 髪の毛は伸びるのに爪が伸びないとか、なんだろう。ものぐさな神様が爪切るの面倒だから伸びなくしたみたいな? いやまぁ、異世界だからって神様がそんな実際にいるわけないか。小説の中じゃあるまいし。


「とにかく、もしかしたら帰ったらあんまり時間経過してなかったりするのかしらと思ったのよ」

「そうだったらいいよね、ほんと。ま、帰れなかったらどっちにしろ意味ないし、あと八年たってから結論だそうよ」


 あと八年もいる気なの? 気が長すぎでしょ。まぁそりや、今老けないと判明したからって、どうだって話だけどね。











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