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抱きしめて、泣いて、我に返ってちょっと恥ずかしくなるくらい泣いて、腕の力を緩めた。


「結花奈……久しぶり、背、ちょっと伸びたんじゃない?」

「えへへ、そうかな? 優姉は……ちょっと太った?」

「ゆーかーなぁ? そんなこと言うのはこの口?」

「いはひ、いはひ」


 頬をひっぱる。柔らかくて、生きてるんだって思った。手を離す。結花奈はじっと、はにかんだような笑みで私を見上げてる。


「結花奈、怪我はない? 痛いとこあったら、薬ぬるわよ」

「ないよ。平気、もう、くすぐったいよ」


 体を軽く叩いたり撫でたりして身体チェックすると結花奈はくすくす笑う。


「ああ、結花奈……結花奈ー!」

「わっ、と、さ、さっきもやったじゃん! もー、優姉ってば私のこと好きすぎ!」

「当たり前でしょ! 愛してるわよ! あーもう結花奈ー!」


 抱きしめて頬ずりする。うう、結花奈だー。結花奈可愛いよぅ。


「はっ、シューちゃんっ」


 しまった。思いっきりシューちゃん放置してしまった。無事も確認できたし改めて紹介しなきゃ。


「って、あれ?」

「シュリなら、最初に抱きついたすぐのころにどっか行ったよ」

「えっ、気づいてたの?」

「気配で」

「すごっ、何者!?」

「勇者様だぜっ」

「どや顔可愛いなぁもう!」


 久しぶりに見た結花奈は可愛すぎて、場合によってはいらっとするどや顔すら可愛い!

 抱きしめて頬ずりじゃたりなくて、もう持ち上げてすりすりする。


「わっ、もー、もう、優姉……さすがの私もひくぜぇ」

「なによぅ。だいたい二年ぶりよ? しかも戦地からの帰還。可愛い可愛い妹を持つ姉として、どれだけ心配したと思ってるよ。もうね、今なら結花奈が変顔してても可愛いと思う自信があるわ」

「ほんとにぃ? 前私の爆笑変顔プリクラ見て、どん引きしてたじゃん」

「気のせいよ」

「過去を改変してるっ」

「もう、結花奈ったら、久しぶりなんだからちょっとは浸らせてよ」

「いやー、だって、ほら……照れるじゃん」

「照れ屋なんだから。でもそんなとこも可愛い。チューしちゃう!」

「ちょ、ちょっとちょっと! 往来でそんな…」

「いいじゃない。ねー、ちゅうしよ?」

「キャラ変わってない!?」


 いや真面目にね。結花奈が五体満足で生きててくれて、しかも可愛い妹分のまま全然変わってなくて、嬉しくない訳がない。テンションあがって当然でしょ。

 とは言え、うん、ちょっと落ち着こうか。さすがに道行く人の視線が気になってきた。


「わかったわよ、じゃあ落ち着いて、ふう………結花奈大好き!」

「落ち着いてない!」

「冗談よ。気持ちは本当だけど。じゃあ我が家に招待するわ」

「うむ、くるしゅうない」


 結花奈を連れて家に戻る。シューちゃんは不在だ。結花奈に聞くと街の方へ言ってるとのこと。気を使わせて申し訳ないけど、今はちょっと、結花奈のことしか考えられない。


「今お茶いれるわね」

「うん」


 お茶をいれて、結花奈の前に2つ並べ、隣に座る。

 結花奈は上着とか脱いで荷物も玄関に置いている。中身は動きやすそうな服装だ。あまり可愛くない。今度可愛い服を買ってあげよう。


「結花奈、色々話をしよう。たくさん聞きたいわ」

「うん。…ね、優姉。話はいいけどさ」

「なに?」

「……ぎゅって、しててほしい」

「いいわよ」


 私は結花奈の頬にキスしてから、後ろに回って朝シューちゃんにしてたように、結花奈を抱きしめる。

 シューちゃんより小さくて、でも魔王を倒したんだ。すごい、結花奈はほんと、すごいなぁ。


「キスまで言ってないよ」

「サービスよ。聞いたわよ」

「なに?」

「魔王、倒したんでしょ?」

「うん。まぁね。楽勝だったよ」

「嘘ばっかり。大変だったでしょ? 結花奈、よく頑張ったわね。いい子、いい子」

「……うん、優姉、やっぱり大好き」

「知ってるわよ。私も大好き」


 結花奈の頭を撫でると、また結花奈は涙を流す。

 私なんかでは想像できないくらい、大変だったに違いない。私にはこうして褒めてあげるしかできない。

 涙を流しつつも、いつまでも黙っているわけにもいかない。沢山聞きたいこともあるし、話したいことだって沢山ある。


「結花奈、結花奈がどんな風に頑張ってきたか、教えてよ」

「うん、うん。あのね」









 お茶を飲みながら、沢山の話をした。お昼を食べるのも忘れて、ひたすら話した。

 結花奈が沢山頑張ったことを聞いて、私はひたすらよくやったと褒めて頭を撫でてぎゅっとする。それで嬉しそうに笑う結花奈に癒される。

 力になれなくて、ごめんねと一度だけ言ったけど、結花奈に怒られた。


「優姉、次に言ったらでこぴんだからね」

「ごめん、謝るからやめて。ていうか、結花奈でこぴん強すぎ。なに? スーパー結花奈人なの?」

「え、そんな痛かった? ごめんごめん」


 めちゃくちゃ痛い。気にするだろうから涙は我慢してるけどほんと、通常時に冗談でされてたら本気でしばくレベル。


「ごめんて。そんな顔しないで。だってさ、ほんと、優姉の存在が私の支えだったんだよ。優姉は何もしてなくなんてない。私のこと心から思ってくれる人がいるってだけで、頑張れたんだから」

「結花奈……」

「元々喚ばれたのは私だよ。優姉を連れてきて、迷惑かけてごめんねって思う。でも全然怒らなくて、私のこと変わらずに抱きしめてくれる。ほんとに、感謝してるよ」

「馬鹿ね。そんなの当たり前でしょ。むしろ一人で消えてたりしたら怒るんだから」

「うん。優姉大好き」

「最初はつれなかった癖に、素直じゃない」

「だって今は二人きりだし。可愛いでしょ?」

「可愛いわ。ちゅーしてやろう」

「してして」


 頬や目蓋、唇以外にキスをして、結花奈にもされる。日本にいたときもふざけてたり寝てる結花奈可愛さにしたくらいで、ここまでしなかった。

 でも今は本当に愛おしくて、目の前にいてくれることが嬉しくて、可愛くてたまらない。どんどんキスして伝えられるだけ愛情表現したい。

 従姉妹で姉妹みたいなもんだし、セーフでしょ。


「結花奈、これからは一緒に、頑張りましょうね」

「うん! もう離れないから、大船にのった気でいてよ」













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