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62 魔王を倒す結花奈

「世界の半分をやろう。俺の仲間にならないか?」


 お前はゲーマーの妄想から生まれた魔王なの? どこまでやれば気が済むんだよ。


「半分とはずいぶん奮発してくれるね。なに? 私に惚れた?」

「はっ、人間ごときが。俺の子も産めんくせに面白い戯れ言を言うな」

「じゃあなに?」

「異世界人、我々魔族の祖であり、万能の力を持つもの。その力に敬意を表すのは当然のことだ」

「はぁ?」


 異世界人が魔王の先祖とか、万能とかなに言ってんの? 確かに召還された時に魔法が使えるようになる魔法が、体内に組み込まれる。だから考えるだけで魔法はつかえる。

 それに翻訳魔法とか生きるために不可欠なものは、使おうと思わなくても

体内の魔力を使って自動的に発動し続けてる。

 でもそれはあくまで召喚魔法陣の中にその魔法が組み込まれてるからで、私の魔力がこの世界の人間にくらべて高いだけで、万能は言いすぎだ。


「くくくく」


 魔王は私の反応にさもおかしそうに笑う。むかつく。


「笑うな。なんでもいいよ。どっちにしろ答えはNoだ。死ね」

『ユカナ殿、落ち着いていくぞ。なに、我とお主なら』

「黙れ。一言も喋るな」

『……』


 私が聖剣を嫌いなのはうざいとかあるけど、一番の理由は魔力をくうからだ。具現化するのに魔力を使うのは仕方ないとしても、話すのも一文字ごとに魔力を使う。どんだけ燃費悪いんだよってレベル。今は魔力を無駄に使ってはいられない。

 というかそもそも、私は万が一にも魔力を使い切りたくない。こちらへ召喚された時から自分では関知できない常時魔法が発動してる。それが翻訳魔法だけならいい。でももし、そもそもこちらと空気があわなくて、常時魔法がなければ息すらできないとしたら?

 魔力を使い切ってしまった瞬間、死ぬではないか。だから嫌だった。でも、もう四の五の言ってられない。

 優姉のためにも、世界を救うんだ。


「いくぞ! 初っ端から全力だ!」


 聖剣を具現化させる。刃渡り1メートルとかケチなこと言ってられん! 全力の10メートル、横幅1メートルをくらえ!

 魔力の具現なので、使ってる私にとって重さは変わらないので、包丁を振り回す気軽さで聖剣を振り下ろす。


「!? あっ、あ、危ねぇぇ。どれだけ魔力馬鹿なんだよ。上等だ人間! 後で泣いても、もう半分やらねぇぞ! 次は俺の玩具だ!」

「ふざけんな!」


 よけた魔王にすかさず追撃して、横に凪払うようにふる。


「はっ、大きさにさえ慣れればただ振り回してるだけに、当たるかよ!」

「ああ、そうかい!」

 

 反対側へいった剣先を振り子のよう戻し、余裕の表情で飛び上がって避ける魔王に、私は剣の形を曲げて追撃した。


「なっ、ぐああっっっ!」


 左肩にかすった瞬間、聖剣の効力がひろがって左腕がちぎれ落ちた。高威力になるよう魔力はこめたが、まさかこれほどとは。ていうか、聖剣だけあってもしかして、魔的であるほど効果があるとか?

 すでに魔力半分きったけど、この勢いならいける!


「てめぇ、てめえぇぇっ、許さねえ! ぶっ殺す!」

「っ」


 一瞬で飛んで間を詰めてくる魔王に、慌てて聖剣でふせぐ。聖剣でふせいだので拳も潰れると思ったのだが、空気の膜があるのか宙で止まっていて、ダメージをうけている様子はない。


「ぐぐぐぐっ」

「ぐっははっ、てめぇ、女のくせに馬鹿力だな!」

「余裕だし!」

「いい根性だ!」


 にいぃと笑って片腕で、左は肩から煙をだしてるのに恐るべき連撃を繰り出してくる。


「くっ、はっ」


 聖剣を通常の大きさにして、何とか抵抗する。片手だからこそどうしても手数がへるので、一つの剣で対応できているが、二本なら危ないところだ。


「おらおら! どんどん行くぞ!」

「はあぁぁぁ!」


 このままではジリ貧だ。通常サイズでも上級魔法を使い続けるくらいの魔力をくうのだ。短期決戦しかない!


「おらぁっ!」


剣をふるって魔王に向ける。向けた瞬間に無防備になった私の顔面に魔王の拳がめり込む。

 魔法で防御あげて麻痺もまだかけているのにいてぇぇよボケ!

 痛みに歯を食いしばりながらも剣を振り切った私マジすごい!


「ぐっ、はっははははは!!」


 避けられたのをまた剣を曲げて胴体をかすったので、ウエストが半分になって煙にまみれているのに、魔王はさっきよりさらに大声で笑った。


 思わず距離をとりながらも、聖剣は具現化したまま持っておく。

 なんなんだよ、こいつは! 私の方が圧倒的に優位なのに、なに笑ってんだ!


「ははははは! いいなぁ、ほんとにお前は強い。俺は強いやつが好きだ。さっきのは取り消そう。もう一度聞こう。世界の半分をやる。俺の仲間になれ」

「しつっこいんだよ! しつこい野郎は嫌われるんだよ!」

「ならばお前を倒して、泣きながら懇願するまで壊してやるよ!」


 魔王と再び近距離での激突。剣で防ぎ、防ぎ切れず殴られ、剣で切りかかり、それを防がれ、力で押し切る。

魔王は体が徐々に消滅していっているのに、笑いながら攻撃の手を休めない。


「どうしたどうした!? 手数が減ってるぞ!?」

「うるせぇ!!」


 強がりの言葉をはくが、事実だ。魔王はすでに片足をなくし、胸に大穴をあけ、耳と角をなくしている。

 なのに攻撃のスピードも数も、落ちる気配がない。逆に私の攻撃はスピードが落ちているのを自覚せざるをえない。

 合計三発顔面を殴られたので、すでに片目は見えなくなった。胴体も殴られて、あばらも折れてるし、内臓が傷ついたらしく痛いし、口から血があふれてくる。


「ぶーっ!」

「くっ」


 血を霧吹きのように吹き出して、目くらましをかける。魔王はさすがに予想外だったようで、もろ目に入ったのか手で目を押さえた。


「くらえ!!」


 もちろんそんなチャンスを逃すほどバカではない。私は思い切り剣をふるった。

 しかしさすがに手をとめて棒立ちするほどバカでないのか、魔王はほぼ同時に後ろへ飛んでいた。

 

「とっどけー!」


 残りのありったけの魔力をこめて魔剣を伸ばす。もう魔力がきれてもいい! 死んでもいい! 優姉がいる世界を守るんだ!

 あとちょっと、とど、届かない!?

 魔力に限界がきた。着地した魔王まで一メートルもないのに、魔剣が短くなりたしだ。

 やばい! これが最後のチャンスだ! 

 私は走りだすため足をあげ、その瞬間後ろから物凄い風がふいた。


「うわああっ」


 風の強さに体が浮き上がり、魔王に向かって飛び込んだ。短くなって残り一メートルを切ったところで、私の剣はようやく魔王に届いた。


「はあっ」


 首を切り落とすと同時に風がやみ、地面に着地したまま、五センチくらいしかない聖剣で魔王の体に余すとこなくつきたて、消滅させた。


「……か、勝った、か?」


 完全に消滅してからも、実感がなくて呆然とする。


 グオオオオォォ!!!


 魔王城の外から物凄い声がして外をみると、何故か魔物たちはいなくなっていた。

 

「……あ、リア、さっきの風、ありがとう」


 冷静に考えればさっきのはリアの援護だろう。全然してくれないから諦めてたけど、最高のタイミングで最適なアシストだった。

 慌てて近寄り抱き起こす。


「ーーーーー、ーーーーー」

「え?」


 な、なに言ってんの? て、あ、そうか……魔力切れだ。具現化できなくなった聖剣。翻訳魔法がきれたのだ。


「って、魔力なくても生きれるんかい!」


 命懸けの決意はなんだったんだ!










魔王倒したので魔物はひっこみます。これ以降は多分、戦闘はもうありません。

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