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12 召喚された結花奈

 異世界への召喚。勇者として魔王を倒す。

 そんな耳にタコができそうなくらいどこにでもある創作物の設定。そういうの好きだったし、強くなりたいと思って体を鍛えたりもした。

 でも本当に心から勇者になりたかったわけではない。あくまで漫画や小説の話だし、いくら私が幼く見えても、中身まで小学生で止まっているわけではない。


 つまり何が言いたいかと言うと、勇者とかくそくらえだ。死ね。マジ死ね。あ、勇者になったんだから今のはおかしいか。勇者にしやがったこの国マジ死ね。滅びろ。具体的に言うと目の前のお姫様死ね。


「聞いてますか? 勇者様」

「私は勇者じゃねーつってんじゃん」

「勇者様としてお呼びしました。勇者様として相応しい才能があります。これでもあなたが勇者様ではないと? いい加減、観念なさってください」

「どこの世界に足枷つけられた勇者様がいるんですかねー」

「ここの世界にいますわ。具体的には目の前に」

「死ねっ」

「女の子がそのような口汚い言葉を使うものではありませんよ」


 うぐぐぅ、ほんっと、ムカつくぅぅ。だいたい私の口が悪い? 誰のせいだと思ってんだ。お前らが私を拉致ったからだろうが! しかも優姉落としてるし! ああこんなとこにいる場合じゃほんとにないのにぃ。


「あら、また落ち込んだ。まぁたお姉様のこと考えてますの?」

「うるせぇ。優姉が怪我の一つでもしてたらマジでこの国ぶっつぶすかんな」


 買い物帰り、従姉妹の優姉と一緒に

私は勇者として召喚された。優姉は途中ではぐれてしまい、別の場所に落ちた。

 この国、ユニパル国は大陸の中央に位置する大陸の中でも目立って大きな国らしい。そのさらにど真ん中の中央の王都。どんだけ真ん中好きなんだよ。


 とにかくそのユニパルの王城で、お好奇心で立ち会ったお姫様と魔法使いの軍団に召喚された私。

 ここが異世界だのなんだと簡単な説明を受けてすぐ、私は優姉を探すため逃げ出そうとした。当然だ。なんで見ず知らずの人のために命をかけて戦わなきゃいけないんだ。そして優姉が危ないかも知れないっていうのにじっとなんてしてられない。 


 今覚えばすでに無意識に魔法を使っていたのかも知れない。私は魔法使いたちをなぎ倒し、奥にいた兵士をぶっ飛ばし、王城を飛び出そうとした。そこを邪魔したお姫様。さすがに女の子を殴るのは、と躊躇した一瞬に魔法で拘束された。

 それから私は魔法的に行動が制限されるごつい足かせをつけられ、無理やり戦闘訓練をつまされてる。こんなことなら女の子でも殴っておくんだったと毎日後悔してるけど、お姫様は年が近い女の子だってだけで嫌に私に懐いてくるし、未だに殴れてない。

 いくら優姉と離されてやさぐれていても、優姉と再会した時にがっかりされるような自分にはなりたくないし、仕方ない。


「まったく、そんな憎まれ口ばかりたたいて。ユカナがそんな大それたことできないこと、私はちゃーんとわかってるんですからね」


 うぜぇ。お前は私のなんだよ。さすがに酷いことはできないが、普通にうざい。お姫様が勇者を呼ぶと決めたわけではないし、私の毎日が訓練だけじゃなくお話しタイムの名目で休憩もあるし、衣食住が贅沢なのも彼女のおかげだろうけど、友達面すんな。


 あー、だめだ。心が荒んでるのが自分でわかる。優姉によしよしされたいよー。

 手が豆だらけだし、魔法を覚えるだけ覚えさせられるし、そのくせ訓練では魔法制限されて重石つけられて囲まれて屈強な男たちにぼこられる。

 これでまともでいられる方がどうかしてる。すぐ回復させられて、疲れるし、訓練以外ではそれなりに大事にしてる感は伝わってるけど、だからって許せるか。そもそも私が体鍛えてこの国守る義務なんてないし。


 はぁ。優姉、会いたいよ。きっと、きっと要領のいい優姉だから、転移先にもよるだろうけど人にさえ会えればすんなり保護されたりして、安定した生活をしてるはずだ。

 危険があるとしたら落ちた時に上空からとか、海のど真ん中とかで、だから二週間以上経過した今も無事ならもうほぼ危険なんてないだろう。

 ……無事に決まってる。優姉だもん。優姉は気にしても仕方ないからと私のことを気にせず、計画的に帰る予定とかたてて働いてたりしそうだ。そんな薄情なくらいに現実的で強いところのある人だ。


「もう、お姫様うるさい。で? 今日のお菓子はなんなのさ」

「ふふ、今日はですね、東大陸から輸入した特別なお菓子ですのよ。私でもめったに食べられないんですから」

「はいはい、なに?」

「じゃーん、どうです? 綺麗でしょう」

「金平糖じゃん」

「あら、ご存知でした?」

「ご存知です。懐かしいな。昔好きだったんだ」

「派手な味ではありませんけど、ころころ可愛くて、あまーくとろけていくのが溜まりませんの」

「地味姫様だねぇ」

「もう、姫姫言わないでください。ユカナには特別に、名前を呼ぶ許可をだしたでしょう」

「忘れた」

「アリアベルです! 家名とか洗礼名はあきらめますから、せめて愛称のアリアだけでも覚えてください」

「冗談。覚えてるよ、お姫様」

「……ユカナの意地悪」


 名前なんか呼びたくない。お姫様はお姫様で十分だ。私はこの国を救いたくなんてないんだから、名前なんて呼ばない。










結花奈視点でした。本当は再会するまで書かない予定だったけど、感想で言われたので需要あるならと書いた。ある程度たったらまた挟む予定。

もっと荒みまくったキャラにしようと思ったけど召喚初期なので。

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