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「えーっと、つまり、こういうことですか?」

「違う! 君の式は実に効率的だが、それだけでは魔法陣にはなりえない。何故ならば!」

「何故ならば!?」

「ロマンが足りないからだ!」

「冗談は頭だけにしてください」

「おいこら、わたしの頭を馬鹿にしていいのはわたしだけだ」

「バカにはしてません。奇抜すぎて冗談みたいに思ってるだけです。可愛いとは思ってます」

「おお、そうか! うむ、やはり君は見所があるな」


 私の魔法の先生兼魔法の研究を一緒にしてくれるこのおじさんは、頭が巨大なアフロだ。しかもレインボー。小柄でややぽっちゃりしていて、アフ○犬を思い出して仕方ない。たまに可愛く見える。

 遠い親戚で中央で研究者をしているらしいけど、急遽こちらに来てくれてるらしい。お礼を言うと、むしろ逆にお礼を言われた。

 死んだと聞かされていたシューちゃんが生きてると知ることができ、まして私の特殊魔法を研究し、うまくいけばシューちゃんの血族魔法も研究できると万々歳らしい。公には私たちの存在は秘密らしくて仕事はただただ休みになってしまうけど、たまった有給消化にちょうどいいとか言われた。


体内にある魔法というのは基本的に遺伝される。特殊魔法は突然変異的に両親が持たないのに体内にあって使える魔法だから、厳密には私のは特殊魔法ではない。

 血族魔法というのは特殊な魔法を遺伝で伝えてる魔法一族の魔法をさす。シューちゃんの移動魔法は血族魔法らしい。一子相伝秘伝の技、みたいな感じらしい。


「うーん……つまり、遊びの部分がないと魔力がスムーズに流れないということですか?」

「そうだ。別分野とはいえ、学徒だけあって飲み込みが早いな」


 元々私は数式とかパズル系が好きだからかも知れない。数字を導く数式と魔力変換を導く魔法陣はどことなく似てる。如何に範囲内におさめ、かつ魔力の通りと変換効率をあげるかは数字パズルや言葉遊びにも似ていてなかなか面白い。

 どの組み合わせが正道というわけではなく、多少順番がちがっても発動したり、逆に順番があっていても微妙なことで発動しなかったりする。


「できました。これで温もりの魔法が発動すれば成功ですよね」

「うむ。試してみなさい」

「ん、よしっ、成功です!」


 魔法陣を学び初めて一週間。ようやく満足できる魔法陣を独りで書くことができた。ここらでは一番簡単というか初歩の魔法陣である温もりの魔法とは言え、完全に魔法について理解して、それを式として表現するのは大変だった。

 使っているので今までにも見てはいたけど、いざ書けと言われると難しい。いくつも試行錯誤して、やっと今日発動する魔法陣ができた。


「うんうん、上出来だね。魔法効率もまあまあだ。欲を言えば、ここはこっちを先にした方が、魔力消費が抑えられるよ」

「なるほど」

「それにしても、うん、君は実に教えがいがある。それに君の魔法感覚も何となくわかった。この分なら、五年もかからずに魔法陣が完成するから知れないな」

「五年!?」


 褒めてくれたのに五年!? 魔法陣の書き方もだいたいわかったのに、ここから五年!? もしかして先生は私があらゆる魔法陣を書くことを目標にしてない!?


「うん? うん。君自身あまり理解できてない魔法だからね。まず効果を検分して魔法式を手探りで探して、他人が使えるように魔法陣化する必要があるからね。特殊魔法は一人しか使えないし、個人の体質によるところが大きいから、誰もがつかえる魔法陣にするには10年くらいかかったものもあるよ」

「10年……」


 えぇ、いや、まぁ、シューちゃんのためなら? シューちゃんのためなら頑張るけど、10年て……。そりゃ2、3日でできるとは考えてないけど、かかっても1年くらいかと。


「まぁ今回は魔法陣そのものより病への対処が目的だから、まずは魔法解析から初めて、魔法具作りから始めようか」

「……は、はい」


 こ、こうなったら頑張るぞ!









「はぁ、疲れたー」

「お疲れ様、ユウコ」


 先生が帰って、シューちゃんが私の前に飲み物のお代わりをおいた。


「あー、ありがとう。ちなみにいいにおいするけど、今日はなに?」

「……スープ。ユウコみたいに、上手じゃないけど」

「なに言ってるのよ。この間から凄く美味しいわよ」


 お昼からは先生と丸々魔法の実験なので、晩御飯をシューちゃんがつくってくれることになった。

 シューちゃんは今まで料理をしていなかったらしい。どうやって食べていたのと思ったら、特になにもせずそのまま食べていたらしい。お肉まで生とか、ワイルドすぎぃ!

 体には問題ないよう魔法処理はしてるとは言ってたけど、いや無理無理。てなわけで料理初挑戦のシューちゃん。漫画みたいにとんでも味付けとかはない。シューちゃんは包丁の使い方も教えれば問題ないし、なによりやる気があるので上達が早い。

 もう私が見てなくても変な心配もいらない。


 先生と研究を初めて二週間が経過した。最初はひたすら勉強だったけど、最近はより実験的になってきていて、魔法具を作る段階になっている。

 魔法陣をつくるのにくらべたら、魔法具はまだ簡単だ。これができれば、私がいなくても一度なら魔力吸収魔法が使える。

 今はシューちゃんは私から離れられないから、先生と話をしてほったらかしで退屈だろうに、同じ部屋にいなきゃいけないし。


「はー、ねぇシューちゃん、五年たって、魔法陣ができたら、シューちゃんはどうしたい?」

「え、」

「ひとりでどこにでもいける、たまに心臓が痛くなるけどすぐに収まって、誰にも迷惑かけなくてすむ、ちょっと病弱なだけの普通の女の子になったら、何がしたい?」

「……わからない。そんなこと、考えたことないから」

「そっか。じゃあ考えておいて。きっと五年以内に、魔法陣をつくってみせるからさ」


 五年なら、まだシューちゃんは未成年だろう。まだまだ人生これからだ。たぶんそれより先に結花奈は魔王を倒して帰るだろう。再会はしばらく難しいかも知れない。

 結花奈には悪いけど、一旦先に帰っててもらおう。五年くらいなら離れても平気なくらい、私と結花奈には絆があると信じてる。戻ったら結花奈は大学生で、私高校生か。それは凹むけど、仕方ない。

 目の前にシューちゃんがいて、それを救えるというなら、やるしかない。時間さえかければできるなら、私の人生のうちたった五年でシューちゃんのこれからの人生が救えるなら、そんなの選ばない方がどうかしてる。


「? ユウコが、魔法陣つくるの?」

「え、うん、そのつもりだけど」

「え、私は魔法具をつくるところまでで、以降はユウコは魔法こめるだけって、聞いたけど………というか、素人が新規の魔法陣なんて、つくれないと思うけど」

「……え」


 あれ?


「じゃあなんて私、魔法陣について習ってたの?」

「えっと、魔法の基礎知識がないと魔法具ってつくれないから、だけど。それに、魔法陣の書き方って癖っていうか、本人の魔法の使い方が無意識にでるから、魔法研究の手始めにもいい、って聞いてるけど」


 ……私の決心なんだったの!? 聞いた夜は割と真剣に悩んだのに!


「え、えっと、ユウコが私ためにそこまでしようと思っててくれて、すごく嬉しいよ」


 うなだれて突っ伏した私を慰めるようにシューちゃんが頭を撫でてくれた。うぅ、いやされる。


「うん、そうだね。よし、じゃあ気を取り直して、御飯にしようか」

「うんっ」










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