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PSIバー×パンク×マッドタウン  作者: あるけー
第一章 『扉を叩く』
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20話 『見通すダムデ』

少し立て込んで、更新が遅くなりました。

 これ以上は意味がない。マイクを切る。

 「まあ、殺させてはくれないだろうが」


 ◆┃◆┃◆┃◆


 「あああああ!? やばいやばいやばい!!」

 CFユニットの自動制御が急降下を始める。手動制御の方法は知らない。切ったら恐らくは、落ちる。

 だがしかし今の状況を見てもどちらが正しいのかなんて一向に分からなかった。

 「結局落ちてくじゃねえかああああ!!」

 まずい。これは本格的にまずい。大ケガで済むレベルではない。このままいけばミサイルに焼かれるか地面にぶつかるか。幸いまだまだ高度は高いが……。

 「くっそどうすりゃ……」

 その時、聞き覚えのある音が鳴る。声がする。

 「サイス」

 ひゅん、と風を切る音が、一瞬にして炸裂音に変わる。ミサイルが刻まれ、内部の火薬が爆発した。

 どうやらメメントモリのお陰のようだ。

 「助かっ」

 助かったと思ったのも束の間、今度は爆風にあてられてあらぬ方向へユニットごと吹き飛ばされ、自動制御が狂い出す。

 「何がっ!? ジャミング??」

 「待ってて、そっち行……」

 『その必要はない』

 ガショッ、とミラーボールから奇妙な音がする。

 『持ち物は離さぬよう』

 直後、ミラーボールから伸びてきたアームに身体を掴まれ、内部に引き上げられた。

 死んだような目をしていたメメントモリが、同じように持っていかれるのが遠目に見えていた。


 ◆┃◆┃◆┃◆


 「いい朝だな! 諸君!!」

 朝じゃねえよ、昼過ぎだよ。そう言いたくなるのを堪え、様子をうかがう。

 カラフルな髪、スラッとした長身、血色のいい肌、ピシッと着込まれたウェイタースーツ。そして何よりカラフルな瞳。

 喧しい声で騒々しい挨拶をしてのけたコイツこそが、『審判』、名前はなぜか。

 「我が名は既に悠久の彼方に捨て置いた! これからはどうぞ、ダムデ、とお呼びあれ」

 ジャッジメントは言い換えてもジャッジメントっぽさが残っていたのかはたまた。それとコイツ。

 「今はただ、彼の日の記憶を胸に抱き、貴様らとは既に分かたれた、思っていたのだが」

 重度の。

 「なるほど新参か、私を頼らんとするならば文の一つも寄越したら如何か」

 中二病だ。何か昔の俺に近しいものを感じるからやめてくれ恥ずかしい。

 やはりというか、もはやメメントモリは幼稚園児の絵みたいな顔をしていた。やけに長い触角が床についている。そういう時はくるっと巻いてフードの中に先端を入れるのがメメントモリの習慣だったが放置されている。要するに精神が崩壊しかけていた。どういう理屈か仮面ごと幼稚園児の絵のクオリティだった。なんなら全身だった。

 「貴様、そこの娘の顔が気に障る。如何な理由で私を侮辱するか」

 「俺には分からん」

 「ほう」

 二人揃って正座させられながら、役に立たなくなったメメントモリ(インストラクター)の代わりに俺が受け答えすることになった。

 そしてなんでこんななのかは本当に俺にも分からん。どうやったんだ。

 「まあいい。貴様を見ればいいのか?」

 「見る?」

 ダムデの能力の話だろう。しかしルマからは何も聞いていない。妙なことをされるのはまずい。

 「鑑定だろう」

 「あー。なるほど。ああ多分そうだ」

 タイミング的にも恐らくそうだ。丁度座についたところ、『世界』は情報が少ないとかだし。

 「多分? まあいい。どれどれ……」

 怖っと言いそうになったのをまたもや堪える。何せ、ダムデの目がギョロギョロと気持ち悪いくらい高速で動き回ったのだ。だが気を悪くされるとこちらは困る。早くして欲しい。ずっと見ていても中々慣れないのだ。

 目を逸らしたら逸らしたで怒られそうだし見つめるしかない。最近習得した合えて焦点を合わせないことによって何も認識しない高等テクでやり過ごした。

 まさか目がほんの少し悪くなってきたのがここで役に立つとは思いもしなかった。

 「まあ、分かったのだが。貴様には教えてやる気はない」

 「……は?」

 訳が分からない。快く鑑定までしてくれたのに教えてはやらないとはどういうことだ。ああ、でもそうだ、コイツの性格ならあり得るか。

 「貴様はまだ真相も何も知りはせんだろうが、私はあの組織が嫌いだ。無論、彼の結社につく連中も、ということだ」

 俺も真昼連合の一員だろう、ということか。しかし、あんな平和ボケした職場に真相も何もあるのか? 冷蔵庫にいれておいたプリンでも食われたのか?

 「あのな、何か知らんが」

 「待ちたまえ」

 「あ?」

 「言っておくが、何もかも教えてやらないとはハナから考えていない。私が答えるのは今開いている扉だけ、そういうことだ」

 なんでそんな面倒なことを。それ教えるなら一気に全部教えてくれよ。

 「……余計なことを考えても何も変わらんよ。お前の扉は今は一つ目だけ。『凡人(サムワン)』、認識した世界の中で常に平均値をとる。暴走の条件は精神性の平均値が大幅に変化した場合、順応し元の性格に寄るまで。ステータスの全てが平均値に強制されるわけではない」

 「……まあ、今は分からないことは鵜呑みにしておく。ただ、暴走ってなんだ。何が起きるんだ」

 認識した世界やらステータスやら、細かいことは曖昧なまま。だが、暴走という響きは看過しがたい、シュテルンの部屋に投げ入れられる前に気絶させられたのは恐らくそれだから、というのと、どう考えても危険な響き、日常に支障は来してほしくない。


 「暴走とは」

 少しは渋るかと思ったが。

 「精神あるいは脳等に作用する扉において、適合者の論理的思考パターンの欠落、あるいは思考機能の停止、能力に振り回される状態のことを言う。他者に干渉する扉の場合は他者も巻き込むことがある」

 「……」

 「例えば、『女教皇』の『知識』。覚醒当初は膨大な情報量の処理が追いつかず、良ければ何時間か寝たきり、悪ければオートマタに成り果てることもある」

 「……」

 「例えば、『審判』の『特定(ディスカバー)』。覚醒当初、なんの条件も設定しなければ恒久的に様々な人間の情報を流し込まれ、間に合わなければ廃人になる」

 「……」

 「例えば、『愚者』の『永久の旅(ステップバイステップ)』。不用意に発動すればこの世界との接点がずれ、世界から切り離される。場合によっては世界そのものに最初から存在しなかったことになる」

 「……」

 「例えば、『隠者』の『認識阻害』。自己理解が浅ければ自分で自分を認識しづらくなる。場合によっては認識できなくなり戻れなくなる」

 「……」

 「他人を巻き込むと言えば、先代の。いや、貴様に言う必要はないか。そんなところだ。貴様の場合は人格破綻で済んでいるようだが」


 ……めちゃくちゃ怖いじゃねえか。何その、え? 精神系だけリスク高すぎない? 大体大事に至ってるしさ。俺の場合は人格破綻で済んでるって、それ『それで済んでる』って言っていいやつなの?

 あれ? ていうか。


 「お前ってもしかして能力の鑑定だけじゃない?」

 能力の鑑定だけなら、人格破綻で済(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)などという言い回しをするだろうか。

 するかもしれない可能性は否めない、だが、まるで見てきたかのような言い回しがそれに限らず多いのだ。暴走の条件までならまだしも詳細な情報がいくらなんでも多すぎる。

 少し沈黙の間が空いたが、てっきり濁すかと思ったもののさらりとダムデは答えてきた。

 「隠すようなことでもない、我が権能、その一つは『幻視(ビジョン)』、つまりは対象の過去を見る。二つは言わん。三つが『特定(ディスカバー)』、識別を主とするが、失くしたものの場所、犯人、相手の本当の目的、情報さえ集まれば大抵のことは特定できる」

 「もしかして四つ目とかって……」

 「既に我が手中に収まりし権能は今や五つ。だがその知を貴様に授けんとする道理はなし」

 なんだかそれに関しては答えないときっぱり切り捨てられたが、五つがどのくらい凄いのか、今の俺には大して理解することはできなかった。

 それと、『特定』に関しては、相手に回すとなれば相当に厄介な扉だ。諜報は全く効かないと言っていい。

 過去を見ることができるのだから、本人に意図させていないことによって、偶発的に諜報を済ませようとする計らいも恐らく無に帰す。

 というのも、具体的に例を挙げれば、上の指示でただ働いてこいと言われて来たが、実は上が盗聴器をポケットに忍ばせていた、だとか。

 「妙な気は起こさぬが吉と出るが」

 思考まで見通されているような、随分とやりにくい相手だ。

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