海が語る…のか? ~ダリオの電波系☆幻視アート~
「――海が、喋ってる気がするんだ」
その一言が、全ての始まりだった。
ダリオ、朝の甲板にて唐突に発言。
彼のスケッチブックは、すでに“真夜中に猫がバンジージャンプしてるような”構図で埋め尽くされていた。
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「殿!海が……囁いてます!」
「やめろぉぉぉぉ!!その“神託っぽいテンション”は地味に信じたくなるやつぅ!!」
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「ほら、聞こえない?“ビスケットのかけらが……沈んでいった……”って……」
「それ、昨夜マジシーがビスケット落としたときの“現実”だよ!?」
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ダリオのスケッチブックには、謎の言葉が記されていた。
> 「夢を越えて落ちたもの。それは甘く、やや塩辛く、カリカリだった」
「やっぱりビスケットだぁぁぁぁ!!」
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そして、その日を境に。
**ダリオの幻視が、エスカレートしていった。**
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■Case1:「海底プリンの神殿」幻視
「そこにはプリン型の柱が並び、“問い”の文字が浮かび上がっていた……」
「それ、プリンへの依存度が“もはや宗教”レベルになってる!!」
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■Case2:「逆さ虹と歌うビスケット」の幻視
「空から逆さまに落ちてくる虹の端に……黄金のビスケットが浮いていたんだ……歌ってた」
「歌うなぁぁ!!」
「♪パリッと噛めよ 問いが立つ~♪」
「ビスケットが歌詞書いてどうするぅ!!」
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■Case3:「船底からの警告音」
「深夜、船底の亀裂から“ぷるるん”って聞こえた気がして……」
「それ……完全に**プリンの音**だよね?」
「でも、まさかと思って確認したら……亀裂が走ってた。実際に」
「マジかよプリン……お前、予知したのか……?」
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ノートンの記録が更新される。
> 『ダリオ氏の幻視、現在:電波系Lv4(警戒領域)
> 本日:幻視の内容が“実際の船体ダメージ”に一致。もはや否定できない』
トランフォードは、その報告を読んで震えた。
「こ、これは……まさか、ダリオ殿が……“問いの受信機”に……?」
「ちがいます。彼はただの天然です」
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だが、ダリオの幻視には、確かに“何か”があった。
それは、船長にも分かっていた。
「彼の見たものが、“問い”に近づいている気がする」
「……殿下、それは……感覚的すぎませんか?」
「感覚もまた、問いの触角だ」
「もういいや。いっそプリンをダウジングに使おう」
「やってみるか」
「やるんかい!!」
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そしてその夜。
ダリオは、星空の下でまたも言った。
「……海の底から、また声がした。“次の問いへ進め”って……」
トランフォードは思わず問い返す。
「ダリオ殿、それは本当に“声”でしたか?」
「……いや、波の泡の中の沈黙が、そう言ってた気がする」
「それ、もう“詩”じゃん!!!」
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だが。
誰かが“何か”を聞いたということ。
それが真実かどうかなんて、たぶん問題じゃない。
問いは時に、幻視を通してしか姿を見せないのかもしれない。
いや、それがビスケットでも、プリンでも、波の泡でも――
問いは、感じる者のもとへ現れる。