第二章3 王子となる
「……は!? おい、お前!!!」
俺が鍛冶屋のおじさんに俺のスキルを見せようとしたその直後、店の入り口に来ていた男が、俺の所へと詰め寄ってきた。
どうしよう……流石に目の前で見られたから、言い逃れは出来なさそうだし……消す? いやいや、無い無い。うーんと……?
「お前だよ!! 今のは何だったんだ!? おい!?」
男は俺の肩を持って俺の回答を急き立てる。でも、どうすればいいのか俺には判断がつかない。いや、言わないほうがいい事は確かなのだろうが、この場をどうやって乗り切ればいいのかが分からない。
「エレノア、どうするべき?」
迷った俺は、エレノアに任せる事にした。うん、自分でも率直に思う、最低だ。でも良い考えが思い付かなかったからね、仕方がないね。
「え、私ですか!? わ、わ……ゼル君に任せますよ!?」
まあそうなりますよねー。でも、どうしよう!?
「おい、取り敢えず俺に説明してくれや。兄ちゃんはちょっと外で待って――」
「俺には、こいつの力が必要なんだ!! 落ちこぼれとして見捨てられた俺には、こいつの力が!!!」
鍛冶屋のおじさんが諌めようとしたが、それを狼の様に睨めつける。必死さが凄い……でも、突然赤の他人に俺の力が必要なんて、そんな事を言われても困るのだが……。
落ちこぼれ、か。兄様達は事が終わった後平謝りをしていたし、王族でも同じような物なのかもしれない。昔の俺も同じような状況だったから、少しは助けてやりたいという気持ちもあるが……
この状況が物凄く混沌としていて、何をすればいいのか分からなくなってきた。
「よし、一旦落ち着けお前ら。」
「とまあこんな風に俺は鉱物を生成する事が出来るんです。」
俺はもう一度、目の前で《鉱物生成》を使用して見せた。
「凄過ぎるな。凄いを通り越して最早化け物だな。国がひっくり返りそうだ……。バレたら殺されないか? 気を付けろよ。」
確かにそういう可能性もありそうだと思っていたけど、ロークレイン先生以外には詳しく知られていなさそうという事は置いておいても、案外すんなり宮廷魔術師として迎え入れられた訳だし、大丈夫なはず。きっと。
説明し終えた俺は、詰め寄ってきた男に視線を向けた。正直何を考えているのかはあまり良く分からなかったのだが、拳を握り締めていた。喜んでいる……のだろうか?
「取り敢えず、俺の自己紹介からさせてくれ。俺の名前はアウグスハルト・フルフリート、追放された王族の家系だ。父が今の王をやっている。」
……は!? 王族!? やばっ! 物凄い大きな地雷踏み抜いたのでは!?
「おう、そうか……」
「私はノーコメントでお願いします。」
「はあ、それで……?」
「俺はお前に協力して貰いたい。俺のスキルは《魔剣作成》、必要な金属はミスリル、アダマンタイト、オリハルコン、ヒヒイロカネの四種類だ。そのせいで、実質スキルが無い様な物だとまで言われた。そして、俺は無能として認定されて、追放された。」
ミスリルまでならまだ分かるけれど、基本的にアダマンタイトとオリハルコンは神話の世界だけにしか存在していないし、ヒヒイロカネは……何だろう? オリハルコンの更に上の鉱物? 何れにせよ、確かに無能認定も止むを得ないだろう。ミスリルは魔道具としての需要が高いだろうし、魔剣なんていう怪しい物を作る為に重要な資材は投入出来まい。
控えめに言っても昔の俺よりも更に数段無能そうだ……
「という事でだ、俺に協力してくれないか!?」
……別にオリハルコンまでなら作る事が出来るし、今まで生成してきた金属も地下にあるから協力する事は可能だろう。でも同情という理由だけで、無償で人助けをするというのは流石にしてはならない気がする。さっき人を駄目にするって言われたばかりだし。
「ああ……悪いな、俺達はそろそろ冒険者ギルドに向かおうと思っているんだ。」
「それなら俺も手伝うぞ!」
いや、別に手伝って貰わなくても、というか手伝われた方が弱くなりそうだよ!
「どうしましょう、エレノアさん?」
「ゼル君、どうして敬語になってるんですか……? まあ王族なら助けておいても損は無いかもしれませんね。それに魔剣という物を作れば簡単に儲けられるかもしれません。」
まあ正直魔剣という言葉が醸し出す雰囲気に興味が無いと言えば嘘になる。よし、助けよ、あくまで自分の為に。
「はあ、じゃあ、明日から毎朝ここに来いよ。素材なら分けてやるから。」
「オーケー、相棒、これからはよろしくなっ。俺の事は殿下かハルトとでも呼んでくれ。」
そう言いながらハルトは俺の肩に手を回してきた。少しうざい。
「馴れ馴れしいわっ。」
でも同年代の友達というのも悪くは無いものだと、そうも思った。
「じゃあ俺達は今度こそギルドに向かうから、じゃあな。」
「ではランダおじさん、失礼します。」
俺達は二人で冒険者ギルドに向かっている、と思っていた。だが後ろから、先程出会ったハルトが付いて来ていた。
「おい、お前はなんで付いて来ているんだ?」
「む? さっき言ったではないか、手伝うと。」
それはそっちが勝手に言い出した事じゃなかったっけ……
「いや、別に頼んだ記憶は――」
「言われなくても困っていたら察して助ける、それが友達という物だろう? だから当然手伝うぜ! 恩を仇で返すような人間にはなりたくないしな!! 後は俺も冒険者という物に興味がある!!」
絶対後者が目当てだろうこいつ。
「まあ冒険は人数が多い方が楽しいかもしれませんね。」
そうは思ったものの、エレノアが上機嫌そうだったので、一緒に冒険者ギルドに連れて行く事にした。
王子が仲間に加わった!




