第二章4 ギルド登録
アウグスハルトことハルトと共に、俺達は現在冒険者ギルドの目の前に来ていた。冒険者ギルドは街ごとに存在するが、首都に位置しているだけあって、レンガ作りで普通に大きかった。結構金が掛かってそうだ。
「エレノアって冒険者ギルドに来たことはある?」
「いえ、無いですね。」
「俺も無いぞ。」
やっぱりエレノアも無いのか、少しだけ不安になってきた。冒険者って素行が悪い荒くれ者が多いって聞いているから。エレノアに絡んできていたチンピラみたいな奴が多そうで嫌だなー。出来る限り喧嘩なんてしたくないし。
「ゼル君は不安なんですか?」
「あ、いや、別にそういう訳でも無いんだけど、喧嘩とかになったら嫌だなーって。」
喧嘩なんてしてもいい事なんて一つも無いからなー。勝った相手の装備品を剥げるみたいな法律があるならしてもいいかもしれないけれど。
「喧嘩を売られたなら、受けて立てばいいのではないか。」
「いやいや、喧嘩は出来る限り避ける物でしょ。」
どんだけ血気盛んなんだよ落ちこぼれの王子様。
冒険者ギルドの扉を開くと、受付のカウンターが設置されており、そこに居る女の人に横のボードから自分で紙を剥がして持っていくというスタイルの様だった。とは言っても、恐らく最初は冒険者ギルドに登録する必要があるだろうから、まず最初にそれを行うべきだろう。
「じゃあ行くか。ハルトは本当に俺達パーティに入るのか?」
「うむ、恩人兼友人の手伝いなのだから当然だ。」
「あのー、冒険者ギルドに登録したいんですけど――」
「はい、では名前と年齢をここに記入してください。登録料金、代筆代金は共には5000ゴールドになっています。」
高いとも安いとも言い難い値段設定だな。でも3人で1万5000ゴールドか、1000万を目指している俺達にしてみればやはり少しは高いのかもしれない。
「エレノアもハルトも文字って書けるよね?」
「大丈夫ですよー。」
「当然だ。」
まあ二人が書けなかったら俺が書けばいいだけの話だろうけれど、二人共生まれが上流階級だし当然書けるよね。普通に各々で記入して、受付嬢に提出した。
「ではこれがEランクの冒険者証になります。再発行にも5000ゴールドが必要となりますのでお気をつけください。」
そう言って渡されたのは薄っぺらいカードだった。普通に持っていると無くしそうだな……まあ俺はさっきエレノアに《収納》が付与された指輪を作ってもらったから大丈夫だけど。
「クエストを受注する時はあちらのクエストボードから選んで持ってきてください。クエストには推奨ランクが設定されてありますが、あくまで目安です。自己責任でお願いします。」
という事はいきなりAランクのクエストを受けても大丈夫なのか。多分最初からそれくらいの難易度でも大丈夫……そうだけどエレノアもいるから失敗する訳にもいかないしまずはBランクくらいのクエストで手応えを調べた方がいいか。ハルトが物凄い足手纏いになる可能性とかもある訳だし。
「じゃあBランクくらいのクエストでいいよな?」
「ゼル君は大丈夫だと思いますけど、多分私はC~Bランクくらいが適正だと思います。」
魔力量的にエレノアもそんなに弱くは無さそうだけどなー。あんまり意識した事は無かったけど、チンピラ貴族院の生徒よりも多そうに思うんだけど……まあ戦闘向けのスキルじゃないけれど。
「俺も腕っ節にそこまでの自信は無いな。エレノア殿よりも弱いかもしれん……すまんな。」
自信満々に付いて来たハルトの割には、自分の実力を適切に評価しているようだった。まあ自分の実力を過信しないというのも必要な能力か。
「じゃあ、Cランクのクエストからにしておくか? えっと、これなんてどうだ、ゴブリン及びその住処の破壊。」
ゴブリンなら弱め魔物らしいし、簡単そうに思われた。巣にはゴブリンキングというゴブリンの強化個体みたいな存在もいる可能性があると書いていたが――
「でもゴブリンキングがいる可能性ありって書いてますよ?」
宮廷魔術師と戦った俺にしてみれば、正直負ける気が全然しない。
「まあそんなのが居ても負ける気はしないから……」
「ゼルディンは戦闘にも長けているのか? 生成スキルではあまり戦う事も出来ないんじゃないか?」
「まあ比較的戦闘に向いている生成スキルだとは思ってるよ。」
「おい、生成スキル持ちの新米Eランクの癖していきなりCランクのクエストに行こうと思っているのか? 身の程を弁えろっての。」
「本当だぜ。落ちこぼれは落ちこぼれらしく一生Eランクに留まってればいいんだよ。」
突然横のスペースで酒を飲んでいた男達が俺の話を聞いてそう言ってきた。
そう言うお前らだって、人に言える様なスキルと魔力量は持っていないだろうに。まあ所詮は冒険者ギルドの人間だから、無視をするが。
「おい、今ゼルディン殿の事を侮辱したよな? 謝罪しろよ!」
それを聞いたハルトは我慢出来ない様子だった。
えっと、どうしよ、別に喧嘩とかしたく無いんだけど。受付嬢に視線を送ると笑顔だけが返ってきた。知らぬ存ぜぬって事なのかな……?
「何だてめえ? 新米の癖に調子乗ってんじゃねえよ? 俺達はCランク冒険者だぞ。潰すぞカスが。」
「ははっ、ガキが自分の立場を理解してねえようだなぁ?」
「痛めつけてやらねぇと理解出来ねぇのか?」
そう言うと中年の男達は机から立ち上がり始める。
「おい、落ち着けよハルト。」
「そうですよ、気にする必要はありませんよ。ゼル君の凄さは私がよく知っていますから。」
「落ち着いていられるか、お前が侮辱されたんだぞ。お前の凄さを何にも知らない能無し共に!!」
「あ!? 俺達が能無しだと? てめぇぶち殺してやる!!」
「やってやるよ!」
そう言うとハルトは三人組の男達に殴り掛かっていき、カウンターを喰らって壁に叩きつけられた。
あれだけ喧嘩を買いにいっておいて、弱いのかよ! 調子に乗って殴り掛かって返り討ちに遭うって結構格好悪いよ!? この流れで負けるの!? 確かにCランク冒険者とは言っていたけど……
まあ一応俺の為に怒ってくれた事は感謝するけれど。だから一応お返しくらいはしておこう。
「おっさん達さ、今日知りあったばかりではあるけれど、仲間に手を出せれたら、流石に黙っているつもりは無いよ?」
「……そうですね。ハルト君はゼル君を擁護しただけで、正しい事しかしていませんからね。まあ喧嘩っ早いのは良くなかったと思いますけれど。」
俺が動こうとする前に、エレノアが前に出ていた。あれ、エレノアがやるの? 大丈夫?
「私が相手になりますよ。」
「ぐへへ、いい度胸してるじゃねえか嬢ちゃん。」
「俺達と一緒にいい事しない?」
……あれ? この光景どこかで見た様な……
「遠慮しておきます。弱い男には興味ないですから。」
「嬢ちゃんも痛い目に遭いたいなら仕方が無えよなぁ?」
「俺達は常識っていうものを教えてやるだけだからなぁ?」
そして戦闘が始まって、驚いた。Cランクの冒険者達が、エレノアにボコボコにされていた。しかも物凄く一方的に。エレノアが一人を殴り飛ばし、そこへ死角からエレノア目掛けて剣で斬りつけようとしてくる男も悠々と回避してカウンターを喰らわせて、残りの一人もまたワンパンでダウンさせた。
あれ? こんなにエレノア強かったの? 俺の助け要らなかったね……
「あの、どうしたのエレノアさん? そんなに強く無かったよね……?」
「当然ですよ、ゼル君に魔力を分けてもらったんですからね。」
へー、俺はいつエレノアに魔力を分けていたんだろう、というかそんな能力無いぞ? もしかしたら、ミスリルの修練が俺の想像以上に効果的だったのかもしれない。
「あなた達、というよりはあなた、強いのですね。私も仲間に入れてくれませんか? 私は強くなりたいんです。ソロのAランク冒険者、コトノハ・サクラと言います。」
また面倒くさそうな奴がやってきた。




