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旦那

 ある日、突然その少年が現れた。

その少年は私たちを見るなりこう言った。

「何だこの地獄のような光景は」


 とても失礼な少年だ。

いくらイケメンだからと言っても許される発言ではない。

私は思わず

「何、なんか文句あるの?

ていうか、突然現れて初っ端の発言はそれ?

まずは挨拶でしょう。

最近の子は礼儀も知らないんだから」


 少年は

「はぁ!?

貴様こそ何様だ。

俺が誰だか分かっていっているのか。

こんななりでも少なくともお前の倍以上生きているんだぞ」

と私を威嚇してきた。

私は

「最近の子は嘘までついて大人に刃向かうの。

全く礼儀もなっていない」


 私がそう言い終わると師匠がやって来た。

「よっ,久しぶりじゃないか。

その悪態もいつも通りだな。

20年ぶりぐらいだろうか」

「何だよ、今は男の姿なのか。

男の姿だとだいぶ雰囲気が違うな」


 私はこれが男の友情だと思った。

男の友情とはなんとも眩しい。

女の友情とは全く違うオーラが出ている。


 しかし、しばらく見ていると男の友情とは違うような気がしてきた。

何かベタベタしているようないちゃついているような感じだ。

師匠は相変わらずクールで相手の反応とは真逆だが。


 そして師匠は少し間を置いて

「紹介しよう。

彼の名はラブンル、僕の元旦那だ」


「え〜!?」

その声が家中に響き渡った。

私も意味が分からなかった。

正直、全員が混乱している中、師匠が話し始めた。


 「みんながビックリするのはしょうがないこと。

僕は2回結婚している。

一人目はレリーゼ。

まぁ、1週間ぐらいしか持たなかったけど。

そして2人目がこいつというわけだ。


 その前に結婚する時、僕はどういう状態だったかという事を話さなければならない。

20年ぐらい前だったか、その時の僕は世界を救った英雄ということになっていた。

確かにその業績は誇るべきものだったのかも知れないけど僕にとってはピンときていなかった。

ていうか、あまりにも功績が大きかったせいか私生活すらも監視される事態に陥った。

僕の一挙手一投足まで世界の人たちの注目の的だった。

そこで身を隠すために僕は仕方なく性別を変えて田舎で生活をすることにしたんだ。

幸い僕は性別を自由に変えれるしね。

つまり女性として数年間、いや、10年間過ごしたことになるかな。

僕が元男だって事はその間、一部の人たちを除いてバレることはなかった。

その時に結婚していたのが彼だ」


 そう言い終わると少年は

「どうだ、俺の素性は分かっただろう。

だから二人きりになりたいから早く女どもは出ていきな」

私は思わず

「出て行くのはあなたでしょう。

勝手に私たちの家に入ってきて我が物顔で」


 師匠は

「悪いな。

こいつは女性恐怖症なんだ。

詳しく言うと女性に対する対人恐怖症。

出来るだけ男同士でいたいだけなんだよ。

口は悪いけど性格はいい奴だから勘弁してやってくれ」


 私は

「え!?

師匠が女の子の時に結婚したんですよね。

どうやって結婚したんですか」


 少年は

「話せば長くなるんだが、まず前提として俺は同性愛者ではない。

ちゃんと女の子が好きだ。

ただ、女の子とまともに話したことがなかったからな。

どうしても女の子が苦手になってしまったんだ。

ただ、そんな中、偶然出会った女の子がいた。

その子は妙に俺と話が合った。

趣味も合った。

まるで男の子みたいな女の子だった。

俺はそれを運命だとも思ったね。

それでエクローニ(師匠)と結婚することになったんだ。

結婚する前に元男だって聞いたときは驚いたね。

でもその時の俺はそんなことは関係なく彼女に夢中になっていた。

結婚にも支障は無かったね。

結局1年しか持たなかったけど」


 師匠にそんな過去があったとは知らなかった。

少年は

「こいつ、結婚したはいいけど恋愛というものに全然興味が無いんだぜ。

俺がどれだけ甘えても全然興味を示さない。

よく1年も持った物だと今でも思うぜ」


 この少年は甘えたがりなんだと思うと今までの態度がなんだか虚勢を張っていたみたいで面白かった。


 「そういえば、エクローニには弟子がいたよな。

男の弟子。

弟子を取り始めたときは浮気を疑ったぜ。

何てたって異性の弟子だからな。

まぁ、しばらくして恋愛感情がないことが分かったから気にしなかったけど。

あ、そいつも異性に不慣れだって言っていたな。

だからって見た目小学生の女の子に弟子入りするか。

飛んだロリコン野郎だぜ」


 「失礼ね。

あなただって人のことを言えた義理。

まぁ、見た目小学生の男の子に言ったってしょうがないかも知れないけど」


 少年は

「え!?誰!?」

と思わず聞いた。

「私よ私。

フィローって言った方が分かるかしら。

完全に性転換して今は女の子、そして職業は踊り子よ」


 「エクローニにもビックリしたけどフィローにもビックリしたよ。

性転換した経緯はよく分からないけど結構こじらせた系かな」


 「人のこと言えた義理?

あなただって結構こじらせ系でしょう。

知ってるんだから。

あなたは女性は全員同じ顔に見えるって言うこと、そして女性の声も全部同じ声に聞こえるって言うことも。」


 「確かに俺は女性はみんな同じ顔、同じ声にしか思えない。

正直、フィローも言われるまで気づかなかったし、多分服装でしか判断できないと思う。

でも、あそこで女装している男の子はちゃんと判別できるぜ」


 オトエメは

「失礼な、僕は立派な女の子だ。

こんな可愛い服を着ているのに男だって言うな。

少なくとも見た目は美少女だと思っているんだから」


 それはちょっと自信過剰な気が。

でも男の子からするとそうかも知れないけどと私は思った。


 オトエメは

「君だって男装している女子にしか見えないよ。

男の子にしては声も高いし」

意趣返しのように少年に反論した。


 少年は

「俺はそう言われるのが1番嫌なんだよ。

何度、女子と間違われたか。

いいか、俺が男だって証拠をお前にだけ見せてやる。

奥の部屋に来い」

オトエメは

「僕だって女だって証拠を見せてやる。

お互いに見せ合って納得しよう」

と応じた。


 師匠は即座に

「奥の部屋で何をしても構わないがエッチなことはするなよ」

と釘を刺した。

すると、2人は我に返りお互いに謝り事なきを得た。


 どうやら2人とも頭に血が上っていたようだ。

それにしてもお互いに性別を確かめ合うってどういうことだよと私は頭の中でツッコんだ。




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