4話:猫耳少女
白い空間。そこに白い猫耳を生やした女の子が一人。髪の毛は綺麗なブロンド。瞳はまったく曇りのない青。白い丸襟で、シャツみたいな丈の短いワンピース。足は黒の二―ハイで隠れているとは言え、目のやり場に困る。
「リクハルド・ヒューリネンさん。人生お疲れさまでした! あなたは国軍の新米兵、アルフ・ミュリエルによって右脇腹を刺された上に、そのまま大きく傷口を開かれ、大量の血が体の外に出ていった為に死にました」
おれは死んだ。
軍人に襲われて、逃げることもできず、殺された。
ここは天国か。煉獄か。もはや地獄にでも送り込まれてしまったか。
変な気分だ。
体が軽くて浮いているような気分だ。さっきまで感じていたはずの焦燥感もない。
目の前で喋っている女の子は何者だ。猫耳をわざわざつけて何をしたいのだ。理解ができない。
ふいに猫耳がぴくんと動いた。
「え」
思わず声が出てしまった。あれは飾り耳ではないのか。瞬きして目を擦ってみる。また動いた。何だこれ。
目の前の少女はおれを見る。じいっと眺めて、何かを言おうとしているが、その何かが分かっていないらしい。
「ああ、信じておられませんか? 実際にあなたの『体』が今どうなっているか見ますか? まあ、あまりにもむごい死に方されていますから、おすすめはできないですけど」
それよりどうなっているのだ、その耳は。その前に彼女は誰だ。
「いや、まあ、それはいいです。それより、あなたは誰ですか?」
顔を赤らめる目の前の少女。どうやら自己紹介の事はすっかり忘れていたらしい。
「申し遅れましたが、私は死神のエリサと申します」
そういってエリサは頭を下げた。
「さて、これからのことですが、私があなたの願いを一つ叶えるお手伝いをします。叶えたら、あの世へ行ってまた生まれ変われるように浄化します」
「へ」
「だから、貴方の願いを叶えるのですよ。生前やり残したことありませんか。それとも、浄化されて全てを忘れる前に会っておきたい人とかいませんか? あなたとしての活動の最後です。なんなりと言ってください」
よく分からないが、とりあえず何かしたいと彼女に言えばいいのだろう。誰かに会いたい。いやまあ、別におれ、そんな奴じゃない。そもそも平凡に過ごしてきたからこうしたいというものはない。
特に何も、いや。何でもいいとエリサとかいう奴が言っていたよな。何でもいい、と。それなら。
「おれ。何で殺されたのか知りたい」
奇妙な夢から始まったあの日。
いきなりいることが罪だって言われて。いきなり刺されて。
理不尽だと思った。
おれは別に何もしていなかった。国によって殺されるようなことは、何も。でも、殺された。
ただ、軍がむやみに人を殺すなんて考えられないのだ。必ず何か理由があるはずだ。
「自分の手で調べてどうしても知りたいんです。わざわざ軍がおれを殺した理由を。エリサさんだっけ? 手伝ってもらえませんか?」
エリサはにっこり笑った。
「分かりました。よろしくお願いしますね。リクハルドさん」




