↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/3

新しい手法


高く積まれた書類の山を前に、国務調査官・エリオ=ヴィルムは頭を抱えた。


つい先日考案された魔法術式によって、これまで不可能とされてきた、残留魔力からの術者の識別が可能となった。


平たく言えば、現場や遺留品に残った魔力の痕跡から、それが同一人物によるものかを判別できるようになったのだ。


さらに、魔術師自身の魔力を分析し、その結果と照合することで、条件さえ揃えば術者そのものを特定することもできる。


魔力は通常、時間とともに霧散する。

その残り方は魔法や対象によって大きく異なるが、直接魔力を作用させたものならば、現在の分析術式でおおむね七年ほど前の残滓まで拾えるという。


そこで、七年以内に起こった魔法・魔術が関与する事件を、全て洗い直すことになったのだ。


「完っっっ全に閑職じゃねえか……あのハゲ………ちょ〜〜〜っと見落とし指摘したくらいで根に持ちやがって………」


とはいえ、既に一度は捜査が終わっている事件である。どれほど大きな事件であっても、さほど重要度は高くない。


通常であれば現在の事件を調査する合間に行われる業務であるが、残留魔力の性質ゆえ、期日が近い事件については独立した部署を設けて調査を行うこととなった。


それに配属されたのがエリオだ。なお、部署といっても、署員は暫定一名である。


これまで第一線で活躍してきたエリオにとっては、「閑職」と呼ぶのも仕方のないものであった。


悪態をつきながら、一番上の捜査資料に手を伸ばす。


「げっ」


聖女・アリステラ=エルヴェイン暗殺未遂事件。


「なんでこの事件があんだよ…まだ半年しか経ってねぇぞ……」


通称、聖女暗殺未遂事件。この時代に生きている人間であれば、知らない者はいない。


侯爵家の令嬢が、聖女の力を顕現した娘を一方的に妬み、殺害しようとした事件である。


すんでのところで取り押さえられ大事には至らなかったものの、国に安寧をもたらすと言われる伝説の聖女を害そうとしたことで国中の怒りを買い、早々に処刑が実行された。


「捜査の管轄は………ハゲのところじゃねえか!!!ってことは、ここにあんのわざとだな………はあ………」


ため息をつきながら、ペラペラと分厚い資料をめくる。

多数の証言と目撃情報が羅列され、聖女本人へ行われた調書に加え、加害者の生育歴や当時の状況などについても書かれている。


「あ?本人は否定してんのか」


当時、エリオは別の事件を捜査しており、長期間王都を離れていた。戻ったのは全ての捜査が終了し、処刑が行われた当日である。


あの、国中が悪女の死を祝う異様な光景は、この先も忘れられないだろう。


あの時に感じた、言いようのない違和感も。


------まるで、これで世界は平和になるとでもいうような。


「…………………………」


しかし、再調査となると、現場検証は勿論、証人への聞き込みも必要となってくる。


再度、証人と目撃証言の羅列を眺め------。


「よし、これは後!」


別の捜査書類を手に取る。犯罪組織によって違法薬物の栽培・加工が行われ、貧民街でその効果実験がされていたとされる事件。証拠隠滅に魔法が用いられた。時期は------六年十ヶ月前。


「ギリギリだな、これからいくか」


上着を掴み、扉を開ける。

気は進まないが、先は長い。


「……ったく。あのハゲ、覚えてろよ」


まずは、六年十ヶ月前。


エリオ=ヴィルムの再捜査は、そこから始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。