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無能王子、東の塔で神霊を得る  作者: 伊佐波瑞樹


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150/251

第150話「名を喰う糸、無能王子は“壊せない敵意”の中で雷を握る」


 黒い糸が、深部の闇を裂いた。


 一本ではない。


 十本でもない。


 百。


 千。


 いや、数えることに意味がないほどの数。


 虚ろの王の欠片が座していた黒い玉座。


 無数の名の残骸で作られた歪な王座。


 そこから伸びる黒い糸が、一斉に放たれた。


 それらは、ただの攻撃ではなかった。


 触手でもない。


 鎖でもない。


 魔力の線でもない。


 名を喰われた者たちの残滓。


 戻れなかった声。


 痛みを恐れて空白に沈んだ願い。


 それらを無理やり編み込んだ、虚ろの糸。


 一本一本が、誰かの名だった。


 誰かの記憶だった。


 誰かの帰れなかった場所だった。


 だから。

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