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名無しの悪魔ちゃん  作者: こめっこ
第2章 教育冒険者
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特殊依頼

今回一気?に時間を進めます(゜ω゜)


 時が過ぎるのは早いもので、気が付けば『竜の牙』の皆さんが旅立つ日になっていた。


「それじゃあまたね。今度は二人でご飯でもどうだい?」

「あはは、考えておきます」

「やーい、フラれてやんの。ナナシちゃん、クロイツェルなんかとご飯行っちゃダメよ。何されるか分かんないんだから」

「人聞きが悪いなあ、何もしないってば」


 フィーさんとクロイツェルさん、この二人はいつもこんな調子で騒いでいました。

 それが見れなくなると思うと少し寂しい。


「それではナナシさん、お体に気をつけて。あまり無茶な事はせずにしっかりご飯を食べて、お勉強も頑張って下さいね」

「はい、頑張ります。色々とありがとうございました」

「レイラ、あんたお母さんじゃないんだから……。まあ、でもそうね。ナナシちゃんをどうにか出来るヤツなんてそうそういないだろうけど、あんまり無茶しちゃダメよ」

「はい、心得ました」

「それに、何でも一人で解決しようとしなくていいのよ。困ったらその辺の冒険者とっ捕まえてでも頼りなさい。あと、女の子なんだからお腹いっぱいになったからってその辺で寝ないようにね」

「そ、それはもう忘れて下さい! でもありがとうございます。えへへ」


 レイラさんは毎日文字を教えてくれたり、色んなことを教えてくれて一緒にいる時間が長かった。怒られちゃうかも知れないけど、私にとってお母さんみたいな存在だった。

 そうするとフィーさんは面倒見のいい頼りになるお姉ちゃんかな。


「嬢ちゃんにはワシも驚かされっぱなしで久々にいい刺激になったわい、ガハハ。そうじゃなあ、嬢ちゃんも仲間を見つけるといいかもしれんのう。そう悪くないもんじゃぞい。寂しくなるが、王都に来たら必ずワシの店を尋ねるんじゃぞい」


 ここ数日話しを聞いていると、ドラガンさんは王都に店を構える鍛治職人だそうなのだが、時々こうして冒険者パーティに混ざって遊びまわっている? との事だ。

 お店はお弟子さんに任せているそうなので問題ないらしいけど、本当に大丈夫なのだろうか……。

 特に目的も無いし、一度王都を観光してみてもいいかもね。

 私も仲間がいれば楽しいとは思うけど。うーん、なかなか難しいよねえ……。


「ナナシ、お前がそこらの魔物にやられるとは思わんが、死ぬなよ」


 短いながらも分かりやすいローランドさんの言葉は胸にスッと入ってきて、この言葉だけで心配してくれているのがよく伝わる。

 こんなに強い人達のお墨付きを貰ったんだから、私ももっと頑張らないといけないな。


「皆さん、本当にお世話になりました。また近い内にに会える日を楽しみにしています!」




♢ ♢ ♢




 『竜の牙』の皆さんと別れて一ヶ月程が経った。

 相変わらず私はゴブリンの森(勝手に私が名付けた)にいる。

 この言い方だとゴブリンばっかり狩っているように聞こえるかも知れないが、ファングボアやホーンラビットもこれまで結構狩っていたりする。特にファングボアなんかはほぼ毎日持ち帰ってたから結構お金も貯まった。

 だけど、ゴブリンは魔力探知の練習をしていると勝手に寄ってくるから倒しているだけだ。森の奥にあったゴブリンの集落を潰せば出てこなくなるんだろうけど、いまいち気が乗らないというか……。


 私はあれからも足繁くゴブリンの森に通い、魔力探知の練習を続けた。結果、最大範囲が二キロメートル程まで伸びた。

 正直二キロはやり過ぎた感があるけど、目に見えて成果が現れるから楽しくて、つい止められなかった。


 流石に過剰過ぎる範囲だと自分でも思う。それに、最大まで広げると魔力が安定しないから大雑把にしか情報が分からない上に、情報量が多すぎて混乱してしまい、あまり実用的ではないというのが現状だ。

 気軽に使うならせいぜい五百メートルといったところだ。これ以上は必要ない。


 では何故、私がゴブリンの森にいるかと言うと――



「ルーク君そっち行ったよ!」

「おう!」

「フランちゃんは全体を見ながらルーク君の援護ね! なるべくルーク君が一対一で集中出来る状況を作ってあげて」

「わ、分かりました!」


 私は今、このDランクになりたてのルーク君とフランちゃんのパーティに参加して引率……じゃなくて、護衛兼実地訓練の依頼を受けている。

 これは実戦経験のない二人の保険みたいな感じで、護衛を兼ねたアドバイザーといったところだ。


 こうなった経緯を少しだけ遡る――



 先日、私が獲物の報酬を受け取った際の出来事だ。


「ところでナナシさん。冒険者ギルドからの特殊依頼があるのですが、受けてみませんか?」

「特殊依頼?」


 何だろうと思い、とりあえず話しを聞いてみた。

 内容は実戦経験のないDランクに上がったばかりの若い二人組の冒険者に付き添い、アドバイスやお手本を見せたりして魔物との戦闘経験を積ませるというもので、無事に合計五日間付き添う事で依頼達成となる。

 そして、この依頼を無事に達成すればCランクへの昇級試験を受ける事が出来るそうだ。


「お話しは分かりましたけど、私もまだ登録して一月程なんですけど大丈夫なんでしょうか?」

「そうですね、通常ですと早くても半年から一年は経験されてお願いするのですが、ナナシさんは『竜の牙』の推薦で、しかもファングボアをお一人で討伐可能な実力や、毎日沢山の魔石を納品して下さる事を考慮して、既にDランク以上の実力があると組合の方で判断しました」


 なるほど、こうやって聞くとゴブリン退治も無駄じゃなかったのだと思えた。


「我々も将来のある若い子達を無闇に死なせたくはありませんし、それにこの件は副組合長(サブマスター)であるゴメスの推薦でもありますので、一考して頂ければと」

「あー、え? 副組合長さんが、私を……?」

「そうです。ナナシさんが組合に登録された日に担当していた方です」

「んぅ……? 登録した日って確か……」

「……ゴメスティーヌ。と言った方が分かり易いでしょうか……」

「え……!? ゴメスティーヌさん副組合長だったんですか!?」

「ええ……そう、です……やはり驚きますよね……」


 ここに来て驚愕の事実が発覚した。

 初日以降見ないとは思っていたけど、まさかそんな偉い人だったなんて……。

 確かにオネエさんだけど筋肉凄かったし、受付よりも戦場の方が似合いそうだったけど……。いや、なんで副組合長が受付やってたの!?

 というか、本名ゴメスさんなんだ……。


「分かりました。そういう事でしたらその依頼、受けます」

「ありがとうございます。対象の冒険者は丁度あそこの席に座っている二人です。金髪の男の子がルーク君、そして茶髪の女の子がフランちゃんです。彼らには既に話を通していますので、どうぞよろしくお願いします」


 そう言ってクレアさんが示した先には若い中学生くらいの男の子と女の子が座っていた。


「付き添う日は当日我々に連絡して頂いて、戻ったら報告をお願いします」

「分かりました。ありがとうございます」


 特に人見知りという訳ではないけど少し緊張する。

 とはいえ行動しなければ始まらないし、とりあえず話しかけてみよう。


「えーっと、こんにちは」

「なんだよねーちゃん」

「ちょっと、ルーク! そんな言い方しちゃダメだよ」


 この子がルーク君か、意外と口が悪くてお姉さんビックリだよ。

 そしてこっちの子がフランちゃんか。うんうん、この子はしっかり者のお姉ちゃんって感じだね。

 

「話しは聞いてると思うけど、これから五日間君たちに同行する事になりましたナナシです。どうぞよ――」

「はぁー!? こんな弱っちそうな奴がついてくんのかよ?」


 ふーん? 弱っちそう、ねえ?

 そっかそっか。


「だからルークやめなさ……ぃッ!?」

「ルーク君。人の話は最後まで聞きなさいって教わらなかったのかな?」

「ぉ、ぉぉ……ぉぅ」

「はい、分かればよろしい」


 よし、大人しくなったね。これで一応第一関門は突破かな。


 私がやったのは簡単。普段抑えている魔力を少しだけ解放してルーク君にぶつけただけなのだが、こうかはばつぐんだ!

 近くにいたフランちゃんも私の魔力に当てられた様で驚かせてしまった……ごめんね。


 二人が落ち着くまで待って、簡単に明日の予定を三人で話し合った。

 まず初日はゴブリンの森の周辺でホーンラビットを狩って、実力次第では二日目から森に入ってゴブリン狩りにシフトする方向で決まった。

 五日しかないので駆け足気味になるが、この子達には色んな経験を積んでもらいたいと私も思う。

 もちろん安全第一でね。


 一通り予定が決まると、明朝に組合に集合する約束をしてこの日は解散となった。






ここまでお読み頂きありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)


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