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名無しの悪魔ちゃん  作者: こめっこ
第2章 教育冒険者
12/35

例のアレ

ブックマークの登録ありがとうございます!

とっても励みになります(*'ω'*)

読んでくださる方に飽きられない様に頑張りたいと思います。




 まさかこの歳になって読み書きが出来ないなんて考えもしなかった……いや何歳かは知らんけど。

 まぁ当然といえば当然だけど、これは不便ですな。

 

 言葉が通じるだけでも幸運だと思いましょう。チラッ


 あー困りましたねぇ。チラッ


 代わりに書いてくれる方はいませんかねえ。チラッ

 

 はあー困った困った。チラッ


「なあ、嬢ちゃん……もしかして字読めねえのか?」

「よろしくお願いします」

「はぁ……まあ、いいけどよ」


 さすがリーダーです。

 よっ、男前!


「名前はナナシで、歳はいくつだ?」


 勢いで決まった名前だけど、今更違うとも言いにくいですね。

 年齢は適当に十八歳ぐらいでいいかな?


「十八歳です」

「十八か……その若さで……」

「見えませんか?」

「ああ、いや。意外と若いと思ってな」

「意外と……?」

「い、いや、そういう意味じゃない! み、見た目だけなら十八で大丈夫だ!」

「……」


 ふーん?

 まあ、自分でも分からないし見た目との差異がそこまで変じゃないならいいかな。


「あー、性別は女……でいいんだよな?」

「はい」


 それは私が男性みたいだと暗に示唆しているのでしょうかローランドさん?


「種族も人族……でいいんだよな?」

「え? 人族……たぶん、いえ、はいです」

「なんでそこで戸惑うんだよ……。別に人族じゃなくてもいいんだぜ? ジイさんだってドワーフだしな。この街じゃあんまり見ねぇがエルフや獣人の冒険者だっているんだ。むしろ人族じゃないと言われた方が俺としては納得出来るんだが……。お前はどう見ても人族にしか見えねぇんだよなあ」


 私は見た目で悪魔だと思ってるけど、実際に悪魔なのかも分からない。

 私のような種族が他にもいるのだろうか?

 仮に悪魔だとしたら立ち位置次第ではお尋ね者になってしまうかもしれないし……。

 聞いてみたい所ではあるが今聞いたら変に疑われてしまう恐れがあるし、止めておこう。

 ここはどうにか誤魔化すしかないか。


「では、人族? でお願いします」

「何だそりゃ。はぁ、もう人族でいいか」


 嘘は吐いてないはずだ、自分でも分かんないからね。


「次は特技なんだが、ナナシは何が得意だ?」

「特技、ですか? んーこれといって特にはありませんが」


 あっ、足の骨を折るのは得意……なんて特技とは言わないか、何でも石に出来るなんて絶対言えないし、ここはスルー推奨ですかね。


「おいおい、剣を持ってるじゃねぇか? 剣士じゃねえのかよ? それに盗賊共をふん縛ってた時は剣を持ってたじゃねぇか」

「いえ、この剣は盗賊のアジトで拾った物で、どちらかと言うと人避けの為といいますか、剣を提げていればそうそう絡まれないだろうと思いまして持ち歩く事にしました」

「そりゃあ……そうかもしれねえが。じゃあ別に剣の達人て訳じゃあないって事か」

「いえいえ、剣はあの時に初めて持ちましたから」


 私が剣の達人なら、世界中の剣士は剣豪になってしまいますよ?


「……そうか。確かに言われてみれば盗賊共は骨折以外、怪我という怪我はしてなかったな」

「そうです。盗賊達はこう、殴ってですね、全員気絶? させましたから」

「だから顔面ボコボコだったのか……」


 あれはしょうがないんですよ、それにもう過ぎた事です。


「トロールも全部殴り倒してたしな……。にしても参ったな、格闘術と、一応剣は持ってるから剣術にしておくか。……あとはでたらめな身体強化か」

「はい、お願いします」


 でたらめな身体強化か。森を抜けてからは使ってないんだけどな。

 何れにせよこれで私も剣士だと名乗る事が出来るのか。


「――よし、こんなもんか。確認して下さい」

「ええ、任せてちょうだい。……うんうん、特に問題はないわね。それじゃあ冒険者組合の規約を説明するからちゃんと聞いてね」


 記入用紙に不備がない事を確認した受付のお姉さんが組合の規約を説明してくれた。

 とはいえ別に難しい事はなく、人殺しはダメとか、組合の不利益になる事をしないとか、普通にしていれば違反する様な事は無いものばかりだ。


 気になった事もあったのでいくつか質問してみた。


 まず組合員同士のいざこざに対して組合は基本的には口を出さないという事だが、これは多過ぎて対処するのが面倒だから自分達でどうにかしろという事らしい。

 あと、殺人については護衛依頼で盗賊に対処する為だとか、盗賊の討伐依頼だとか、依頼達成の条件に当てはまるものは問題無いそうだ。

 他には、滅多にないが魔物の大量発生(スタンピード)が起こった場合はDランク以上の冒険者は強制参加が課せられるといった感じだった。


 冒険者ランクについては上からABCDEと五段階あって、ランクに応じて受けれる依頼が増えるそうだ。

 一応Aランクの上に特級というのもあるそうだが、なろうと思ってなれるものでもないらしい。



 聞いた感じだと、どれも基本的にという注釈が付いて全体的にふわっとした感じだ。

 受付のお姉さんが言うには、あまり難しくしても誰も守らなかったそうで、出来るだけ簡単にして、細かい事は現場の判断で臨機応変に対処する様になったらしい。



「他にも質問はあるかしら?」

「いえ、大丈夫です」

「冒険者は通常ならEランクからのスタートなんだけど、例外があって戦闘試験をクリアすればDランクから始める事も可能なのよ」

「ふむふむ」

「でも今回ナナシちゃんはAランクパーティ『竜の牙』のローランドからの推薦という事だから、戦闘試験は免除されてDランクから始める事が出来るわけよ」

「おー」

「まあ、そういう事だ」

「ありがとうござい――」


 ガシャーン!


 グラスが割れた音に振り向くと、三人の男がこっちにドカドカとこちらに歩いて来た。



「てめえみてぇな小娘がDランクからだと? ふざけてんのか? 盗賊を捕らえたのも全部お前らがやったんだろうがよ! 大方、このガキは捕まってただけじゃねえのか! こいつぁ不正だ!」



 一体いつからお約束(テンプレ)が起きないと錯覚していた?


 いやいや、錯覚しますって。

 普通こんな強そうな人の隣にいる人間にわざわざ絡みます?

 ていうかずっと話聞いてたのかな? こわっ!

 だけど私が捕まっていたのも事実だし、この人が言ってる事も半分正解ではある。



「Aランクの特権だか知らねぇが、そんなガキに絆されて、竜の牙も落ちたもんだな」

「こんな戦えもしねえ小娘をいきなり魔物ん中に放り込もうってんだからなあ! とんでもねえ奴らだな竜の牙サマはよ!」

「お嬢ちゃんは俺が今晩稼がせてやるから安心しろや」



 なるほど、()()()()()ですか。

 この人達は嫉しいんだ。

 私に対してというよりはローランドさん達の評判を落としたいように見える。

 ドサクサに紛れて何か言ってる三人目の男は死ねばいいと思う。


 このまま言われっぱなしというのもなんだか癪に障るし、戦える所を見せれば今後は絡まれる心配も少なくなるかな?


「試してみますか?」

「なんだよ嬢ちゃん、話が分かるじゃねえか。うははは」

「戦えるかどうか、あなた達が私に戦闘試験をしてくれるのですよね?」

「嬢ちゃんが俺らと戦うだって? ハッ! 上等じゃねえか、おい訓練所使うぞ」

「いや、でもねえ……」

「嬢ちゃんがやるって言ってんだ、いくらあんただって口は出せねえはずだろ?」

「そうは言っても、この子はまだ正式に登録してないわ」

「大丈夫ですお姉さん」

「うーん、でもねぇ」

「それに毎回絡まれても面倒ですし、実力の差を分からせた方が早いと思いますので」

「てめぇ、舐めた口聞きやがって」

「はぁ……わかったわ。あなたがそこまで言うんならもう好きにしなさい。……いいのねローランド?」

「あ、あぁ……」



 お姉さんが了承するや否や三人組は啖呵をきりながら奥の扉へと向かって行った。

 彼らは私達の話をずっと聞いていてタイミングを計っていたのだろう。

 受付のお姉さんもまさかといった表情で渋々了承した感じだ。


 あっ、ローランドさんがため息を吐いています。

 呆れられてしまったでしょうか。

 それに、私もいつの間にか好戦的な性格になってしまった様だ、朱に交われば赤くなるとはまさにこれ。



「すまんな、巻き込んじまって……」


 ローランドさんにしては何やら歯切れが悪い言葉だ。


「アイツら、トムとヤムとクーンは当時俺らと同じタイミングでCランクに上がったんだ」


 ローランドさんが何やら語り出した。

 カコバナですか?

 ぜひお聴きしましょう。

 なんとなく展開は予想出来ますが、ここは大人しく聞いておきましょう。


「ちょっとしたライバル、というほどでもないが、あいつらは事あるごとに俺らを意識しててな。といっても俺らは別に意識してなかったんだがな。それから三年ぐらいで俺達のパーティはBランクに上がったんだが、ちょうどその日にアイツらは依頼を失敗した上に仲間も失ったって聞いたんだ。まあ、それからは組合にもあんまり顔も出さなくなって、依頼もほとんど受けず今もCランクだと聞いた。たまに見かけたら見かけたで絡んで来るようになっちまってな」


 予想していたよりも少し重い話でしたね。

 とはいえ、それで腐ってしまっては亡くなったお仲間の方も浮かばれないでしょうに。


「要はただのやっかみですか」

「すまん、面倒を押し付けちまって」

「いえ、これからも似たような事が無いとも限りませんし、私が戦えるという事を周知できるいい機会です」

「そうか……そう言ってもらえると助かる」


 それにしても、ローランドさんは私が負ける心配を全くしていないように感じる。

 短い付き合いですが、これも信頼の表れというやつですかね!



「ナナシ」

「何でしょうか?」

「一応言っとくが、殺すなよ」

「……はい」


 どうやら彼は私を殺人マシーンが何かと勘違いしていらっしゃるようだ。





一体いつからお約束が起きないと錯覚していた?

なん……だと……!?


次回、ナナシちゃんフルボッコにする。の巻


ここまでお読み頂きありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)

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