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瀬古透視点

瀬古くん視点です。

オレ、瀬古透には親友と言っても差し支えないほど仲の良い友人がいる。

その友人の名は、田島奏太。いまはオレの目の前で難しい顔をしている。HRが終わって、教室にオレと奏太以外がいなくなってからずっとこの調子。難しい顔をしている理由は、昼休みにあったやり取りのことだろうか。


時刻は昼休みまでさかのぼる。


オレが奏太と昼飯を食っていると、里見がやってきて奏太へ話しかけた。


「ソウ君、瀬古君、ご飯中にごめんね」

「全然いーよ。奏太に何か用?」


奏太はまだ口の中に食べ物が入っているからオレが受け答えする。


「あ、うん。大した用じゃないんだけどね」

「ごめん、宥香。いま食べ終わった。何かあった?」


食べ終わったらしい奏太が里見の方へ体ごと向き直る。


「急かしちゃったかな…?えっとね、今日の放課後、真悠子たちと遊びに行くから一緒に帰れないの。ごめんね」

「橘たちと?いいよ、行ってらっしゃい。遅くなるなら迎えに行こうか?」

「む、迎えになんて来なくていいよ!そんなに遅くならないつもりだし、それにまだ九月だから外は明るいと思うし…」


あわあわと奏太の申し出を断る里見。迎えに行くってめっちゃ過保護じゃん。父親かよ。それか彼氏…?


「まぁ、そんなに過保護にならなくてもいいんじゃね?もう高校生なんだし、一人でも大丈夫だろ。ていうか奏太。過保護すぎる男は嫌われるぞ」

「透…」

「瀬古君…!ってあれ、ソウ君って瀬古君のこと名前で呼んでたっけ?」

「あ、そうそう。最近呼んでくれるんだよな。オレが知り合って何年も経つのに苗字呼びはやだーって泣きついたから」


笑いながら言うと、奏太は、お前の泣きつくは面白半分だろ。という視線をよこしてきた。


こんなやり取りをしながら、昼休みは過ぎていった。



はい、回想終わり。

奏太が難しい顔をしているのは多分オレが言った、過保護すぎる男は嫌われるという言葉でだろう。

迎えに行きたいのと過保護にして里見に嫌われたくないっていう感情のせめぎ合い。


オレはスマホをいじりながら奏太の顔を見る。

癖のない艶やかな黒髪に涼しげな目元、すっと通った鼻筋に薄い唇。顔のパーツというパーツがバランス良く配置された奏太の顔は、男のオレでも純粋にきれいだなと思う。性格も普通にいいやつ。

里見あたりは奏太のことを「クールで頼れるかっこいいソウ君」と思ってるっぽいが、オレから見れば普通に年相応の思春期男子高校生だ。そして好きな子にアプローチするもなかなかふるわない不憫な男。

中学で一緒になったやつらは一部の鈍感を除き、ほとんどが奏太の里見への気持ちに気が付いている。

このクラスでも気づいてるのはいると思う。毎日一緒に登下校してさりげなくじゃない特別扱いもしているからな……。


「なー奏太、オレ聞きたいことあるんだけど」


オレが話しかけると奏太は、何だと言いたげに首をかしげた。


「いや、幼なじみを好きになるのってどんな感じなん?生まれてからずっと一緒にいたのに異性として見れんの?」


オレの質問に奏太は少し考えるようなそぶりを見せ、口を開いた。


「俺と宥香は生まれたときから一緒っていうわけじゃなくて。三歳くらいの頃かな、宥香たち一家が隣に越してきたんだ」

「そーなん?え、じゃあひとめぼれした感じ?」

「んん…、ひとめぼれかどうかはわからないけど、小さいながらに宥香のことは守らないとっていうのはあったな。そんなに体が強いわけでもなかったし」


ひとめぼれではないなら何か意識する出来事があったのだろうか。考えていることが顔に出ていたのか、奏太はオレの疑問にこたえるかのように口を開いた。


「宥香をいつから好きなのかはわからないけど、テレビ見てるときに、これ好きそうだなとか、もっと一緒にいたいとか思うようになって。幼なじみっていう枠じゃ物足りないっていう気持ちが出てきて。それに気づいたらもう転がり落ちるように宥香を好きになってた。何をしてもかわいいって思うし、恋は盲目っていうのがよくわかった。……って恥ずかしいこと言わせんな!」


耳元まで真っ赤になった奏太が顔をそらす。


「えぇ~、マジ青春じゃん…」


気付けばそんな言葉が自分の口から零れ落ちていた。

好きな人が昔から一緒の幼なじみで気づいたら好きになってた?ピュアかよ。

前々から応援はしてたけどこの話を聞いてもっと応援したくなったわ。


第一印象は人の言葉を借りるなら硬派という感じ。でも話してみると意外に気が合ってよく一緒にいるようになった。なんだかんだいいやつでオレもよく頼りにしている。


「よし奏太、まだ時間あるか?財布は?」

「え、まぁ、時間もお金もあるけど…」


困惑気味な奏太を席から立たせる。


「駅のフードコート行くぞ。そこで里見とこれからどうなりたいか聞くから」

「え、おい透!?」


これから駅に行ってフードコートでちょっと時間をつぶせば里見の帰りとかち合うだろう。

どういう好意かわからないが里見も奏太に好意を持っているのは確かなので、それが恋愛的な意味になってほしいのは、オレが奏太の親友だからである。


オレが奏太と別れてから少しして、スマホにメッセージアプリの通知が来た。

どうやら無事に里見と偶然出会えたらしい。表情が変わらないけど浮かれているであろう親友を思い出しオレは笑いながら帰途に就いた。

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