手をつないで
窓から入ってくる太陽の光で目を覚ました。
今日は、体育祭の当日、というわけではなくその次の次の振り替え休日の日だ。
一昨日の体育祭って、特筆すべきことは何もなかったんだよねぇ。知り合いの先輩とかいないし、私運動あんまり得意じゃないから活躍した!っていうのなかったし……。
全員出場以外で出たのは玉入れくらいです。はい。
あ、でも同じクラスの運動部の子が走ってたリレーは真悠子と麻依ちゃんとキャーキャー言って応援してた。
運動ができる女の子ってかっこいいよね。あこがれるー。
今日は振り替え休日と言っても世間一般には月曜日という平日で、お父さんとお母さんは仕事で家にいない。
ベッドの近くにあるサイドテーブルに置いてある時計を見る。もうすぐ十時かぁ。ちょっと寝すぎたかな?
伸びをしてベッドから降りようと床に足をつける。そして足に体重をかけて起き上がろうとしたとき、筋肉痛におそわれた。
え、昨日より痛くなってない?体育祭が終わった次の日あたりから、筋肉痛はあった。まぁ、中学生の頃とかほとんど運動してないし、高校に入ってからも通学と体育の時間以外は運動はしていない。だから筋肉痛になるのもわかる。
痛いけど、歩けなくはない。今日はのんびり過ごそうかな。
一階に下りて遅めの朝ごはんを食べる。メロンパンとコーヒー。
初めてこのメロンパン食べたけど、おいしい。またお母さんに買ってきてもらおう。
コーヒーを飲んでいたら、リビングに置いてある携帯から音が鳴った。机にコーヒーを置いて携帯をとりに行く。見てみると、クラスのグループに連絡がきていた。明日は数学の課題のプリントを提出するから忘れないように。とのことだった。
あー、そうだった。この前の数学の授業で出されたんだった。忘れてた。あ、英語の予習もあるじゃん。
コーヒーを飲み終わった私は早速課題に取り掛かった。英語の予習はそんなに時間はかかるものではなかった。単語の意味を調べて英文をノートに写すだけ。
鬼門は数学だ。いや、一年の二学期の最初の方だからめちゃくちゃ難しい!というわけではないんだけど。それでも初見で応用が出てきたら無理。解き方がわからない。
一時間か、それ以上かけてプリントにある問題を終わらす。
このプリントにも基礎がほとんどだったけど応用だって一割くらいあった。
解説と答えのプリントも貰っていたので答え合わせを始めた。おぉ、あってるあってる。順調に赤ペンで丸を付けていると、間違えていたところがあった。えーっと、解説はっと。
あー、はいはい。九から三を引いたら六ですね。三じゃありませんね。
ここで引き算を間違えたから後の計算がおかしくなったのか。
逆になんで引き算間違ったんだろう。割り算をしてしまったの?
間違えたところを赤ペンで訂正していく。少しは応用もあっていた。嬉しい。
最後の間違いを訂正していた時、赤ペンのインクが切れた。ペンを振ってもインクは出ず、プリントにかすれた文字が写るだけ。えーっと替え芯はどこにあるかな。筆箱の中身を探すけれどもなかった。この前替えたので終わりだった?あると思って買ってなかったなぁ。しょうがない、あとで買いに行こう。
時計を見ると、お昼過ぎだったので、私は買いに行くのはお昼を食べて洗濯物を取り込んでから行こうと決めた。
お昼を食べて、ちょっとゆっくりして洗濯物を取り込んで。なんやかんやしていたらけっこうな時間が経っていた。
髪の毛を梳いて、ロープ編みハーフアップにする。この髪型見た目に反してめっちゃ簡単。だから最近の休日は、専らこの髪型だ。しかも今着ているワンピースにも合うしね。
日焼け止めを塗ってバッグに財布と携帯と鍵を入れて、日傘をもって玄関に向かう。
九月と言っても暑いし、日が差している。カーディガンにしよっかなとも思ったんだけど、ワンピースに合わないから日傘にした。この日傘、お母さんに貰ったものなんだけど、黒いレースがかわいいのだ。
玄関のドアを開けて外に出る。
「まぶしい……」
「あら、こんにちは。宥香ちゃん」
「あ、紫織さん。こんにちは」
外に出た私に声をかけたのは紫織さんだった。
「今からどこかに出掛けるの?」
「はい。文房具を買いに、ちょっとそこまで」
私たちが住んでいるこの住宅地は、車を五分程度走らせればスーパーや日用品、雑貨を売っている所まで行ける。歩いても十五分程度のところにある。歩きなら坂道を上るんだけど。
「母さん、携帯に電話かかってきてるけど…」
がちゃりとドアが開いて、ソウ君が出てきた。
「あら、奏太ありがとう。それじゃあね、宥香ちゃん」
紫織さんは電話をするために家の中に入っていった。
「宥香、どこか出かけるのか?」
「うん。赤ペンのインクきれちゃって。替え芯買いに行くんだぁ」
「買いに行くところって近くのあそこ?」
「そうそう。なんかあった?」
「俺も、一緒に行っていい?」
ソウ君も何か買いたいものがあるんだろうか。私は、いいよと返した。
そして数分後。荷物をもってきたソウ君としゃべりながらお店までの道のりをゆっくり歩く。
「今日も暑いな」
「ねー。九月だからもうちょっと涼しくなってもいいのに」
暑いとこぼしていたソウ君の目線が、私の差している日傘に留まる。
「日傘って、涼しく感じる?」
「えぇっ、どうだろ。あんまり涼しくはないような…?でも直射日光当たらないから暑くはないかも。あ、後、眩しさはあんまり感じないかも」
そういうもんなんだと言いながら、ソウ君の目線は日傘にいっている。もしかして入りたい…?
「これ、使ってみる?」
「いや、宥香が使ってるし。俺はいいよ」
「んー、じゃあ一緒に入る?」
だってソウ君暑そうだし、眩しそうだし。
ソウ君はえーとかあーとか言いながら葛藤している。
あれかな。男の子だしレースが好きじゃないのかな。
それか大きさの問題?ソウ君おっきいもんねぇ。
「多分、二人なら傘に収まると思うよ」
「……それじゃあ、お邪魔します」
「はい。どうぞ」
ソウ君と一緒に日傘に入る。傘はソウ君が持ってくれた。
あ、これはちょっと狭いかも。早まった?私とソウ君の体がぴったりとまではいかないけど、少し動いたら肩と肩が触れ合いそうなくらいの距離にいる。
「大丈夫?狭くない?」
「…大丈夫。日傘って涼しいというより照り付けられない感じなんだな」
そう言いながら、ソウ君は私の手に日傘を戻し、日傘の外に出た。
「もういいの?入っててよかったのに」
「……ちょっとこれ以上は…。ありがとう」
それから少し歩いていると坂道が見えてきた。この坂を上がればお店に着く。坂を上がっていると、また筋肉痛がやってきた。
今、筋肉痛は主張すべきではない。
「うー、筋肉痛…」
「大丈夫か?宥香、あんまり運動しないもんなぁ」
「ソウ君はなにか運動してたっけ?」
「競技としてはしてないけど、走ってはいるよ。宥香も走る?」
へー、そうなのか。幼なじみでも知らない事実。
「いや、私はいいよ」
多分、すぐやめる。
それより足が痛い。筋肉痛きっつい。毎日運動していればこんなことにはならないんだろうけど。
ソウ君はすいすい歩いている。それでも私の歩幅に合わせてくれてるけど。
……これは、ソウ君に引っ張ってもらっていったらいいのでは…?
「ソウ君ソウ君。引っ張っていってもらいたいので、シャツ掴んでいいですか…?」
ソウ君は私の言葉を聞いて何か考えていた。やっぱ図々しかったかな…?
「掴むなら、シャツじゃなくて手で」
そう聞こえたと思ったら私の手はソウ君の手とつながれていた。
何と優しい。
「ありがとう!ソウ君!」
そうして私たちは手をつないだままお店まで行った。
買い物が終わって帰る時もソウ君は手をつないで私を引っ張ってくれた。
何とも優しい私の幼なじみであった。




