おまけ
教会の聖堂にいっぱいに集まった人々の中には、ジェラールが演じた「アデライード」の友だちも来ていた。いつかジェラールに婚約者の浮気を相談し、解決してもらった三人の女の子だ。私自身はこの結婚式が初対面になる。
三人ともそれぞれの婚約者にエスコートされていた。やがて挙式を終えて緑と光のあふれる外に出ると、みんなが「おめでとう!」と言って、私たちに祝福の花びらを投げかけてくれる。
みんなに次々と話し掛けられているうちに、私は例の三人に取り囲まれていた。ちょっとドキドキと緊張してしまう。ジェラールから話は聞いているけれども、ちゃんと三人の知るアデライードを演じられるだろうか。
ところが、三人は親族の相手をしているジェラールを見て、「いい気なものですわねえ」と苦笑していた。
「好きな方と結婚できたからと言って、すっかり余裕しゃくしゃくって感じですわね」
「こちらの心境も考えてほしいですわ」
「あ、あの……?」
三人がいっせいに私を見、「初めまして」と微笑む。
「あなたがアデライード様……ですね?」
心臓が一瞬止まったのかと思った。
「あ、あ、あ、あなたたちはまさか……」
「ええ、私たちは、ジェラール様がアデライード様を演じていたと、わかっていましたわ」
「……」
なんて言ったらいいのかわからずに、私は口をぱくぱくとするしなかった。
次になんて言われるのだろう? 裏切り者? 嘘つき? 詐欺師?
三人は顔を見合わせてふふっと笑った。
「そんなに警戒しないでくださいな。誰にも言いふらすつもりはありません。それに、私たちもほかならぬジェラール様が、学園でのアデライード様と気付いたのは、今日ジェラール様を拝見してからだったんです」
三人は一目でわかったとジェラールを見る。私は目を瞬かせることしかできなかった。
「どうして……わかったんですか?」
三人が夢見るような瞳になった。
「だって、私たちはあの方を好きになり掛けていたんですよ」
「男だとか女だとか、そんなことは関係なく素敵な方でした」
「……」
うち一人がまっすぐに私を見つめる。
「事情はお尋ねしません。きっとやむを得なかったのでしょう。それに……」
ふふっと笑い私の頭をヴェール越しに撫でた。
「……!?」
「ほんもののアデライード様って可愛い」
「そうそう、小動物みたいで」
「いじり甲斐がありそうですわ」
いっ、いじり甲斐って!?
三人は「よろしくお願いしますね」とまた笑った。
「どんなご趣味なのか」
「好きなケーキは何か」
「どうぞこれから教えてくださいな」
そうだ、と私は腕の中のブーケを見る。
――私には「これから」があるんだ。
これから友だちをたくさん作って、家族もたくさん作って、うんとうんと幸せになろう。
「はい。では、みなさーん! 花嫁がブーケを投げます」
顔色を変えた女の子たちを前に、私はブーケを手に思い切り振りかぶる。
放たれた白とピンクの花束は、未来の光に照らし出され、次の花嫁の手に収まったのだった。




