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第1話:【名無し雪中にて死にかける】

 ――寒い。


 ――死ぬ。


 そう思った瞬間、左腕がドクンと脈打った。


「アアアアアアアアア!!! いやだもおおおおおおおお!!!」


 白い雪原を全力疾走しながら、少年は叫んでいた。


 背後から迫るのは、自分の倍はあろうかという巨体。


 ドゴッ――ドゴッ――と地面を砕きながら、二足歩行の岩の塊が一直線に追いかけてきている。


『ォオオオオォォ』


「あおおおおおおおおおおお!!」


 低くくぐもった唸り声に対抗するように、こちらもよく分からない声が出る。


 いやでもこれ、分かる。


 人間って叫ぶとなんか限界超えられる気がするってやつだ。


 そう、人間は叫ぶと限界以上の力が出る――そんな気がすうううううおおおおおおお!!


 雪を蹴り上げながら、少年は必死に走る。


 風圧だけで雪が吹き飛ぶ。


 後ろの化け物に触れられたら、人間なんて潰れた果実みたいになるだろう。


 ――普通に死ぬ。


(いや待て待て待て!!)


 走りながら頭を抱えたくなる。


(なんで自分こんなのに追われてんの!?)


 というか。


(自分、誰!?)


 名前も。


 何処から来たのかも。


 何一つ思い出せない。


 覚えているのは、自分が今めちゃくちゃ死にそうだという事実だけだった。


「クッソォオオオオ!! こんな意味分からんことで死ねるかぁぁぁぁぁ!!」


 必死に叫ぶ。


 だがそこで、左腕に違和感を覚えた。


 視線を落とす。


 そこにあるのは、黒紫色の異形の籠手。


 肘から先を覆うそれは、生き物みたいに脈打ち、鋭い棘のような装甲が雪を受けて鈍く光っていた。


 知らない。


 こんなもの、自分は知らない。


 なのに、それは最初からそこにあるのが当然みたいに、自分の腕に張り付いていた。


『ォオオオオォォ!!』


「うおわああああああ!?」


 背後で轟音。


 慌てて飛び退いた。


 直後、自分がいた場所に岩の拳が突き刺さった。


 地面が爆ぜ、雪が舞い上がる。


「ひゅーっ……ひゅーっ……」


 頬を冷たい汗が伝う。


(いやいやいやいや今の当たってたら死んでたって……!!)


 恐る恐る顔を上げる。


 すると岩の怪物は、再び腕を振り上げていた。


(あ、これ完全に死ぬやつだ)


 第1話完!


 自分、死す!


 バトルスタンバイ――って戦う前にもう詰んでるわ!!


「ゼハー……ゼハー……っ、右脇腹痛っ……くるし……!」


 限界だった。


 肺が焼けるように熱い。


 足は鉛みたいに重い。


 そして一つだけ分かったことがある。


(自分、びっくりするくらい体力ない……!)


 岩の怪物がゆっくり近づいてくる。


 巨体が動くたび、大地が揺れた。


(名前ないと呼びにくいな……)


 数秒考える。


(よし、ガンロック先生にしよう)


 ナナシはその場で両手を上げた。


「ゼハーッ……ゼハーッ……すぅー……ふぅ……」


 一度呼吸を整える。


「ガンロック先生、追いかけっこは君の勝ちだ。ここは勝利を譲ろう。どうかな? これでお終いに――」


 ヒュンッ――ドゴォォン!!


 地面が爆ぜた。


 ガンロック先生の拳が、ナナシの頬をかすめて地面へ突き刺さる。


「ひゅっ……」


 ナナシの顔が引きつる。


(全然終わる気ねぇぇぇぇぇ!!)


 ガンロック先生は再び腕を振り上げる。


 巨大な岩の拳。


 あんなものが直撃すれば、間違いなく終わる。


(あー、これマジで死――)


「……つめたっ……え……?」


 ふわり、と。


 空気が変わった。


 頬に当たる雪が、急に冷たくなる。


 いや、違う。


 冷えすぎている。


 周囲に舞う雪が、ゆっくり宙へ浮かび上がった。


「“顕現インヴォーク”」


 静かな声が響く。


 どこか籠ったような、不思議な声。


「“氷獄グレイシャル”」


 その瞬間――氷が走った。


 ガンロック先生の足元から凍結が一気に這い上がり、腕、胴体、頭部までを瞬く間に覆い尽くしていく。


 ゴゴゴ……と鈍い音を立てながら、岩の巨体が完全に停止した。


 風が止む。


 雪だけが静かに降っていた。


「……あ、あはは」


 ナナシは乾いた笑みを漏らす。


「えっと……もしかしてアイスロック先生だったのですか?」


「何言ってんだ、オマエ」


「おうえ!?」


 真後ろから声がして、ナナシは文字通り飛び上がった。


 反則でしょそれ! 心臓飛び出ますわ!


 慌てて振り向く。


 そこに立っていたのは――白い仮面を被った人物だった。


 目の穴すらない、無機質な仮面。


 なのに、確かに“視線”を感じる。


 白い外套の隙間から覗く赤い瞳だけが、静かにこちらを見ていた。


(ファーストコンタクト……! 大事な一言目……!)


 ナナシは一瞬だけ考える。


 そして。


「背ちっちゃいっすね……?」


「コロスゾ、オマエ……!?」

初投稿になります!

初めての小説作成となりますので粗い部分ばかりだと思いますが少しでも楽しんでくだされば嬉しいです!

感想、レビューなど待ってます!!

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