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第30話 ミナの決断③

その時、耳慣れた声が俺たちに届く


「なんの覚悟かな~」


皆が一斉に身構えて声の方を見た


そこにはミナが立っていた


「な~る~、決着つけよって言ったのに、逃げちゃうんだもん、探したよ」


「あんた……」


身構えたナルに、笑いながらミナは言った


「え~、こんなところでやるの?」

「わたしは別に良いけどさ~、たくさん巻き込んじゃうよ」


ミナの話し方を聞いたナルの顔が、耐えきれないようにゆがんだ


ミナはリンを見て言った


「あなたも、なにもしないほうがいいよ、どうせ効かないし」


リンは歯噛みして、小さくつぶやいた


「あれが……いまのミナさん……わたしの考えは甘かったようですね……」


「今日はね、わたしも、戦う気なんてないの」

「本当は、ルーにまた会えたらいいんだけど、どこにいるか分からないし」

「それでさ、君に用があってさ~」


ミナの視線が俺に向いた


「俺に?」


「そう、君に」


「偽物がさ、君に伝えたいことがあるって、しつこいんだよね~」

「だからさ~、願いをかなえてあげたら、綺麗に消えてくれるんじゃないか、ってわけ」

「偽物を表に出してあげるよ、干渉もしないであげる」

「でも、変なことしたら、わたし、暴れちゃうから~、気を付けてね」


そう言って、ミナは少し下を向いて、それからまた俺の方を見た


「ソラ」


雰囲気が変わった。ひどく懐かしい感じがする


「ミナ? ミナなのか」


「ナル、ごめんね、辛い思いさせて」


「ミナなの!?」


「うん」


「ごめん、あまり時間は、貰えないの」

「だから、伝えたいことだけ、言うね」


風が吹いた


夕風でミナの髪が揺れる


「わたし、ソラのこと、好きだよ」

「ソラが気持ちを伝えようとしてくれた、あの時が…今でもキラキラしてる」

「あの時から、ずっと、ソラが好きだった」

「私ね、魂が二つあるみたいなの」

「それでね、わたしの方が……偽物だったみたい」

「少しずつ、私が薄くなっていって……」

「どんどん、自分の気持ちが、分からなくなってたの」

「でもね、わたしは……わたしの魂は、ずっと、ソラが好きだったよ」

「それだけは、伝えたかったの」


茜色の光が、潤んだミナの瞳に揺れた


「ソラと過ごした時間、すごく楽しかった」

「わたしだけの……ピカピカの宝物」

「あのまま……あの時のままで、わたしがいられて」

「一緒に暮らせて……それから……聞きたかったな」

「それで……ちゃんと、返事がしたかった」

「大切な約束だったのに……守れなくて、ごめん」


ミナの瞳には涙がこぼれ落ちそうに溜まっていた


それがこぼれるより先に


ミナは小さく微笑んで言った


「ありがとう、ソラ」


そう言うと……ミナは目を閉じた

溜まっていた涙が、頬を辿って落ちる


その時、俺は全身の血が逆流する感覚に襲われた


ミナの頭の上に、赤い数字が見えた



……残り……四秒



その瞬間、ミナが何をしようとしているのか分かった


ミナは、自分を犠牲にしてでも家族を守ろうとする


そういう子だ


俺たちを守るために、その身体を支配している魂を、自分ごと消そうとしている


俺は必死にミナに手を伸ばして叫んだ



「やめろ! ミナ!!」




次の瞬間、ミナの上に光の矢が現れる


そして、ミナ自身に向かって放たれた


ミナは目を開き、小さく俺に微笑んで言った



「さよなら」



矢はミナの胸を貫き、赤い鮮血が飛び散った


「いやぁぁぁ!!」


ナルの叫びが響きわたる


光の矢に串刺しになって、ミナは人形のように力を失った


俺は足をもつれさせながら駆け寄り、ミナを抱きとめる


光の矢は消え、ミナの体が俺に預けられた


現実味がない、呆然とした視界で俺は呼びかけた


「……ミナ……ミナ?」


ナルはあまりのことに、その場に崩れ落ちて茫然としている


リンが静かにこちらへ歩み寄り


ミナの手首を取って、胸の傷を確認した


そして、静かに言った……


「……即死です」


リンの声が遠くの音のように聞こえた


俺の腕のなかで、ミナから、なにかが抜けていくのを感じた


「そんな……なんで……こんな……」

「うそだ、嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ!」

「こんなことが、あっていいはずないだろ!」


俺は見苦しいほど泣き崩れた


ミナだったものにすがりながら



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