表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/71

第26話 穢れと洗濯①

イナクが留守にしている間、俺たちは家事を分担することになった


今日は朝食をミナが作る日だ


「できたよ~」


ギルドにミナの声が響く


ミナがお皿を両手に持って食堂に入ってきて、俺たちの前に置く


「おぉ~、おいしそうじゃん! ミナ、料理できるじゃん!」


目玉焼きだった


黄身は崩れているけど、見た目はちゃんとおいしそうだ


ミナの手料理を食べるのは初めてで、俺はちょっと気持ちがふわふわしていた


ミナが自分の皿と、パンが入った籠を置く


「いただきま~す!」


二人の声が重なる


俺はウキウキしながら目玉焼きをフォークで切って口に入れた


次の瞬間、口の中に焦げた味がした


全体が焦げた味なのに食感は柔らかい


噛めば噛むほど、異様な味が広がっていく


「ど、どうかな?」


ミナが俺に聞いてきた


少し吐き気をこらえて飲み込み、俺は言った


「お、おいしいよ」


「ほんと!」


ミナの顔がぱっと明るくなる


「うぇぇ……なにこれ、気持ち悪い……」


ナルが顔をしかめた


「なにそれ、ひど~い」


ミナがむっとする


「ソラはおいしいって言ってくれたもん」


「じゃ、自分で食べてみなよ!」


ナルが言い返す


そう言われてミナは自分の卵を口に入れた


噛むたびにミナの表情が曇っていく


「すごく……まずいね……」


「でしょ! 口の中に残るし、気持ち悪い」


「ごめん……ソラ、気を使ってくれたんだね」


「あ……う、うん」


「もったいないけど、これは処分だね、ごめんね、二人とも」


「仕方ないよ、シロップがあるからパンに塗って食べよう」


「うん」


ナルがさらりと言った


「ミナに料理は無理だね~」


その言葉にミナが少しむっとして返した


「じゃ、ナルはできるの?」


「ミナよりはできるよ~」


「じゃ、夕ご飯はナルが作ってよ」


「いいよ~」


そのやりとりを横目に、俺はイナクのメモを思い出していた


二人の好みや家事について、色々と書かれていた


その中にあった一文


――料理をさせるな、食材にも触らせるな


「こういうことか……イナク」


俺は覚悟を決めて、ミナの目玉焼きを丸ごと口に入れた


噛まずに、そのまま一気に飲み込む


「え! ソラ君なにしてるの!? そんなの食べたら病気になっちゃうよ!」


「うん! 食べちゃダメだよ!」


分かってはいる、危険な行為だ


でもミナが初めて、俺のために作ってくれた手料理だ


どうしても食べたかった


飲み込んだ直後、体が拒絶するように吐き気を押し上げてくる


俺は静かに立ち上がり、トイレに向かった


トイレに入った俺は、胸を叩きながらつぶやく


「通れ、通れ……大丈夫……毒じゃない」


次の瞬間、猛烈な吐き気に俺はあっさり敗北した……


その後、俺は何事もなかったように食堂に戻り、椅子に座った


「ごめんね、ソラ……」


ミナが落ち込んだ様子で言う


「ソラ君、優しいからね~」


そう言うとナルは思い出したように言った


「そういえば、洗濯物、もう限界じゃない?」


ミナが顔を上げる


「……あ、たしかに」


そういえば、この世界に来てから、俺はまだ自分で洗濯をしたことがない


俺はイナクのメモを思い出す


――洗濯をさせるな、洗濯場には一人で行け


メモによれば、どこかに洗濯場があるらしい


「そういえば、洗濯場ってどこにあるか知ってる?」


「え? うん、知ってるよ」


「郊外の川にあるよね」


「そろそろ洗濯に行かないと、だいぶ貯まってるよ」


この世界では頻繁に洗濯はしないらしい


貯めたものを、せいぜい月に二回くらいまとめて洗う感じだろうか


「今日、案内してもらえる?」


「うん、それじゃ三人で洗濯しようか」


「え、あ、いいよ、俺が一人でやるよ」


イナクのメモに従った方が賢明だと思った


ナルがからかうように言ってきた


「え~、ソラ君って、わたしたちの服、そんなに洗いたいの~」


「い、いや、そういうことでは……」


「ソラ、ありがたいけど、それじゃ悪いよ、三人でやろうよ」


「う、うん」


そう言われては断りきれなかった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ