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第23話 衝突②

ミナが困ったように俺を見る


俺は小さく首を振った


するとミナが聞いてきた


「今日の仕事……どうする?」

「ソラが行くなら、私も一緒に行くけど……」


「行くよ、イナクが頑張ってるんだ、俺も働きたい」


「うん、分かった」


俺はミナと一緒に、いつものように依頼先を回った


夕方近くになると、ミナだけ先にギルドへ戻った

雇っている人たちに、給金を支払うためだ


俺が仕事を終えてギルドに戻ると、 ミナは落ち着かない様子で座っていた


「ただいま」


「おかえり、ソラ。おつかれさま」


「イナクは戻ってる?」


ミナは首を横に振る


「ナルは?」


「自分の部屋にいるみたい……声を掛けても、出てこないの」


俺は胸の奥が少しざわついてくるのを感じた


トロルがどんな敵かは分からない


でも、ノアと戦った時のイナクを見て、絶対に遅れは取らないと思っていた


「イナク、まさか……」


不安に駆られて、俺は外に出てイナクの姿を待つ


するとギルドの建物の裏から水の音がした


俺はその音を追って建物を回り込んで覗き込む


厨房につながる勝手口の前に、裸のイナクがいた


血まみれの体を、黙々と洗い流している


横には、血に染まった長い柄の戦斧が立てかけられていた


「イナク!」


俺が声をかけると、イナクは少し得意げに笑った


「成功したぞ! 金も入った」


そう言って小袋を投げてくる


渡した時より、ずっと重い


怪我もないようだ


俺は胸をなでおろして言った


「楽勝だったか?」


「武器がなかったらヤバかった、助かった」


イナクの、こんな生き生きとした顔を見るのは初めてだった


「ナル……怒ってたか?」


「分からん、部屋から出てこないらしい」


「そうか」


少し思い詰めるようなイナクを見て俺は言った


「話せば分かってくれるさ」


俺の言葉を聞いて

イナクは今まで見たことがない笑顔を俺に向けて言った


「そうだよな」


――と、その時


勝手口がふいに開く


「イナク?」


ナルの声だ


扉から顔を覗かせたナルは、安心したように微笑んでいた


ゆっくりと扉が開き

すぐ目の前にいたのは、笑顔で全裸のイナクだった


ナルと目が合う


一瞬お互いに固まった後……

ナルの視線が、少し下へ落ちる


そしてそのまま、静かに扉が閉まった


俺とイナクが顔を見合わせる


少し間を置いて

ギルドの中から、ナルの声が鳴り響いた


「変態! 大っっ嫌い!!」


これはまずい……


俺たちは顔を引きつらせた

ナルを本気で怒らせてしまった


イナクが助けを求めるように俺を見た


「きっと……分かってくれるさ……」


俺には、そんな気休めを言うことしかできなかった



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