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第22話 光と歌③

イナクは、覚悟を決めるように息を吸った


「は、話がある」


ナルはいつもの調子で返す


「話? なに?」


「俺宛の依頼がくれば、か、稼げるようになる」


「うん? そうだね」


イナクが少しだけ怯んだ気がした


でも続ける


「そ、その時になったら、い、言いたいことがある」

「へ、返事は後でいい」


ナルはますますきょとんとする


「うん、今言えばいいじゃん」

「だから、なんの話?」


その瞬間、俺は気づいた


……あ、これ

イナク、告白しようとしてる


しかも、俺とミナの話を参考にしている…

あまりに唐突すぎて、ナルに全く伝わっていない


イナクの額に汗がにじむ


少し間が空いた


「……な、なんでもない」


逃げた!


俺は心の中で突っ込んだ


イナクは立ち上がり、皿をまとめて厨房へ向かった

俺も残りの皿をまとめて追う


厨房で皿を流しに置くと、イナクは椅子に座ってうなだれていた


見ていられない……


「イナク」


俺は前に立って言った


「らしくないぞ」

「気持ちを伝えたいなら、素直に、短く言え」

「お前には、それがいちばん向いてる」


イナクが俺を見上げる

目を大きく見開き、少し考えるように視線を泳がせた


それから短く言った


「恩に着る」


イナクは立ち上がって食堂へ戻る


ミナと笑っているナルの前で止まる


「イナク? どうしたの?」


イナクは大きく息を吸って、叫ぶように言った


「俺が稼いだら! 結婚してくれ!」


「ナル! 死ぬほど好きだ!!」


響き渡る愛の告白に、食堂の時間がぴたりと止まった

近所中に聞こえただろう


ナルは瞬きも忘れて固まっている


言葉の意味が遅れて胸に落ちてきたように、耳が先に赤くなり、じわじわと頬まで染まっていった


次の瞬間、ナルはすごい勢いで走り出し

自分の部屋に飛び込むように逃げていった


バタン!という扉の音が響く


ミナは口を開けたまま固まっている


イナクはゆっくり厨房へ戻ってきた


椅子に座り、またうなだれて言う


「やっちまった……」


俺はイナクの肩に手を置いた


家族みたいに強く結びついている関係を変えようとしてる

それは、相当な勇気がいることだろう


俺は言った


「やるな、おまえ」


イナクは俺を見て、短く返す


「おう」


俺は言葉を続けた


「唐突だったし、時間はかかるかもしれない」

「でも、ナルはきっと返事をくれる」

「俺たちにできるのは、待つことくらいだろ?」


イナクは流しに向かい、洗い物を始めながら言った


「そうだな」


俺も横に立ち、黙って一緒に皿を洗った



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