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第21話 魂の色②

その時だった


ミナがひとり、外へ向かって歩き出した

扉が静かに閉まる音がする


俺は心配になって、すぐ後を追った


外に出ると、ミナは教会のすぐ脇に立っていた


「ミナ?」


「…」


「どうしたの?」


「なんでもない」


俺は小さく息を吐いて言った


「ミナ…なんでもないわけないだろ。見たら分かる」


ミナはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと言った


「私、メアリが苦手なの」


「いい人なんだよ。よくしてもらったし、可愛がってもくれたし、色々教えてもくれた」

「…でも、私だけなんだよ」


俺は眉をひそめた


「私にだけ、会うたびに『変わってないね、よかったね』って言うの」

「他の子には、小さな変化でもちゃんと気付くのに」

「いつも…私だけ」


ミナは足元へ視線を落とし、言葉を続けた


「なんなのよ……物心ついた頃から、ずっとだよ?」


怒ってるんじゃない、傷ついてる顔だった


「それに…あの人が『神様の祝福』とか言って出してる光、魔法なんだもん」

「あんなの、私にだってできるよ」


俺はようやく、ミナのメアリへの態度に得心がいった

自分だけがそう言われ続ければ、いい気分はしないだろう


すると、ナルが外へ出てきた


「ミナー、なんで外に出てるの~、探しちゃったじゃん」


「ごめんね、ナル、ちょっとさ…儀式は終わった?」


「うん、終わったよ」


ミナが少しだけ安心した顔になる


「じゃ、帰ろうよ」


その時、メアリの声が後ろから響いた


「ミナ…少し、二人で話ができない?」


ミナはメアリを睨むようにして言った


「……やだ! 言いたいことがあるなら、ここで言いなよ」


メアリはしばらくミナを見つめていた

それから静かに言う


「あなたも、扉を開けてるね」


ミナの表情が曇る


メアリは続けた


「ミナ、その力を二度と使わないで」

「あなたの魂では、危うい」


ミナが戸惑ったように言う


「な、なにを…」


メアリの声は静かだった

彼女の真剣な想いが伝わってくる


「私のスキルは、魂の色眼」

「人の魂の性質を、色で見ることができる」

「あなたの魂の色は…混ざってる」

「白い魂に…別の色が……」


そう言われてミナの顔が歪む


メアリは声を落として続けた


「お願い…もう魔法を使わないと、約束して」

「使えばきっと、あなたは不安定になる」

「…扉に…飲み込まれるかもしれない」


ミナは両手を握りしめ、震えていた

我慢してきたものが、押さえきれずに噴き出した


「なんなのよ! あんた!」

「昔から、私にばっかり、変なこと言ってきて」

「あんたが祝福とか言って、出してる光だって、魔法じゃない!」

「なんで、私は使っちゃだめなの?」

「好き勝手言わないでよ!」


ミナがそう言うと、周辺に光の粒が現れる


さっきメアリが出していた光に、そっくりだ


でも規模が違う

教会の周り一帯に、見渡す限り、光が降り注ぎ始めた


「こ、これは……」


メアリが驚いて声を上げた


ミナを見つめる目が大きく見開かれ、わずかに揺れる


やがて、メアリの表情に影が落ちた


ミナは叫ぶように言った


「これのどこが、神の祝福なの!?」

「そうやって、騙してるだけじゃない!」

「あんたの言うことなんか、絶対きいてあげないから!」


メアリはミナの前に膝をつき、その足元へすがりついた


「ミナ! きっと、恐ろしいことになる!」

「使わないで! お願い!」


ミナは咄嗟に身を引いた


「やめてよ!」


その勢いでメアリを振り払うと、メアリはバランスを崩して倒れ込んだ


倒れたメアリを見て、ミナの顔が一瞬だけ揺れる


光の粒は消え、戸惑いが顔に浮かんでいた


でもすぐ、背を向けた


「混ざってるとか……恐ろしいとか……」

「わたし、そんなんじゃないもん……」


声が小さくなる


「……ひどいよ」


そう言い残して、ミナは歩き出した


それを見て俺は声をかける


「ミナ!」


俺はメアリに頭を下げるようにして、ミナを追った


背後でイナクがメアリを抱き起こし、服の汚れを払うのが見えた


ナルも慌てて手を貸す


「ごめんメアリ……ミナにも謝らせるから」


メアリは首を横に振る


「私にはかまわないで」

「あなたたちは、ミナのそばにいてあげなさい」


イナクとナルが短く頭を下げる


イナクが言う


「行くぞ」


ナルも頷く


「うん」


二人は走り出した


その騒ぎに気づいて、子供たちがメアリの周りに集まってくる


「メアリ、大丈夫?」


「痛くない?」


メアリはすぐに笑ってみせた


「優しいね、ありがとう」

「大丈夫、転んだだけだから」


子供たちは空を見上げる


「メアリ、さっきね、神様の祝福が、ばーってなったの!」


「キラキラたくさん、神様からの贈り物?」


メアリは優しく頷いた


「そうだね」

「神様は、みんなのことが大好きだから、贈り物をくれたのね」

「あなたたちは、神様に、愛されてるのよ」


子供たちは手を合わせて祈りはじめた


「優しい神様、贈り物をありがとう」


その祈りを聞きながら、メアリは立ち去る四人の背中を見送り、小さく言った


「あなたの言う通りだね……ミナ」


メアリは子供たちに囲まれながら、いつまでも四人を見送っていた



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