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第14話 主夫イナク②

ミナが確認するように言った


「ソラ! これならデパートに入れるよね!」

「入ったら地下に行って砂糖を買う!」


ナルも勢いよく続く


「いざ! デパートへ~」


俺たちは四人でギルドを出て歩き出した


すると旧市街の人たちが、俺のいでたちに驚いて声を出した


「どうした、ソラさん! そんなかっこうして!?」


その声を聞いて、あちこちの家から人が次々と出てくる


「ソラさん!? どこに行くんだい?」


呼び声が呼び声を呼んだ

窓が開き、戸が鳴り、路地の奥からも顔がのぞく


「おい、あれ、ソラさんだろ?」

「何かあったのか!?」


誰かが走っていく足音がして、今度は別の通りから人が流れてくる

気づけば視線がいっせいに俺に集まり、道の空気がざわついた


しかも、なぜか皆で俺たちについてくる……


一人二人と増え続け、あっという間に群衆となった

ただならぬ俺の服装に、何かあったに違いないと思われたようだ


「手伝えることなら、なんでも言ってくれ!」

「俺たちも連れていってくれ! ソラさんに危ないことはさせねえ!」


なにかおかしなことになっている

俺は笑うしかなかった


イナクが立ち止まり、声を張って群衆に言った


「俺たちは買い物に行くだけだ!」

「ソラに危険はない! 俺たちがついていく。皆は家に帰ってくれ!」


それを聞いて、しぶしぶと群衆は散っていった

名残惜しそうに手を振る者までいる


ナルがその様子を見ながら言う


「そっか。ソラ君って、もうこの街のヒーローみたいなものだもんね」


ミナが頷いて答えた


「みんなに仕事をくれたソラのために、何かしたいって思ってる」


二人の話を聞きながら、俺は内心かなり戸惑っていた


こんなちょっとしたことで、あんなに大騒ぎになってしまう

自分が思っている以上に、俺がここに暮らす人たちに与えた影響は大きいのだ


俺が考えごとをしながら歩いていると……


ミナが俺を見て少し真剣な顔で言う


「きっと、ソラに何かあったら、私たち、ただじゃすまないね」


ナルも俺を見て真剣そうに返す


「うん。下手したら殺されちゃうかも」


それを聞いて、俺が反応する


「えぇ!? そんな……」


するとイナクが言った


「ソラをからかうな」

「あいつらはソラを心配しているだけだ。俺たちに何かしたりせん」


ミナとナルが、にんやり笑う


ナルが俺の顔をのぞき込んで言った


「ケガとかしないでね~、みんなのヒーローさん」


ミナも俺の顔をのぞき込んで言った


「むずかしい顔しないの」


どうやら、からかわれただけらしい……

ただ今は、その気安さが、妙に嬉しく感じた


俺は小さく息を吐いて、気持ちを立て直す

そして、前を向いた


ヒーローなんて言われても、正直ぴんとはこない


でも……あんなに沢山の人たちが、俺なんかを心配してくれる

目の前の仲間が、こうして俺を気遣ってくれる


それだけで胸の奥が熱くなる


ふいに目頭が熱くなりそうで、俺は慌てて空を見上げた


俺たちは、そのまま中央区へ向かって歩みを進めた


胸の奥に残る熱をごまかすように、俺は少しだけ歩幅を速める


さあ、砂糖を買いに行こう


仲間のために……



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