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閉鎖都市ノリリスクの逆襲(5) ~レベル十三のボノ~

列車を降りたマイミとアレクサンドル、そしてロゴスキン大佐とその部下たちが、地下に建てられた採掘基地(ベース)へと向かう。すり鉢状に掘られた地下二百メートルの底では風こそ吹かなかったが、気温はマイナス二十度に達していた。


「この奥だ」


先導するロゴスキンが、凍りついた扉を開くよう部下に指示をする。


マイミは扉らが開くのを待ちながら、辺りを見渡した。直径数百メートルもの巨大なすり鉢穴は、巨人のためのフットボールスタジアムのように途方もないスケールだった。


「ねぇ、龍が寝ているといったわね」


「ああ、そうだよ」


アレクサンドルは頷いた。

その後は、ロゴスキン大佐が引き取った。


「レベル十三、すなわち我々が立っているのと同じ深度に龍が埋まっているのだ」

「埋まっている?」

採掘基地(ベース)を中心に、ぐるとり取り囲むようにな。調査班が定期的な地質検査の途中で気付いたんだ。何かでっかい生き物が潜んでいることにな」

「そんな、この採掘場の外周をぐるりと取り囲むとなると……」

「体長は数百メートルに及ぶだろうな」


マイミは言葉を失った。日本に現れた十六メートル級の龍など、比較にならない規模だった。


「開きました」


採掘基地(ベース)の扉が開き、四角い闇が一行を出迎えた。


深い縦穴の底では、建物の中に十分な光を採り込むことができない。先頭を行く兵士のマグライトだけが頼りだった。


「ここに、銃があるの?アレクサンドル」


だがアレクサンドルは質問には答えなかった。


「龍が現れて以来、ニッケル鉱山は操業停止にした。僕は国内軍を使って様々な研究者をそろえ、世界を覆った危機と闘うための方法を探し回ったんだ」


(その男は危険だ)


マイミはまた、誰かが自分に心に押し入ってきたことに気付いた。


「君たちの噂は聞いていた。アメリカで何らかの解決方法(ソリューション)を得たらしいこともね。だが君たちは、日本で龍を制圧できなかった」


一同は、太い鎖で施錠された扉の前に立った。

兵士の一人が鍵を使って、南京錠を取り外す。


「単に、君の持っている銃弾を奪えばいいと考えていた。その組成を分析すれば、クリーチャーを倒す仕組みが分かるもんだとね」


じゃらん、と鈍重な金属音が響き、鎖が地に落ちた。


扉が開かれる。


「だがそれだけでは難しいのかも知れない。君が言うように、銃弾と、銃の謎を解かなければ我々は龍と戦えないのかも知れない」


「灯りを点けろ」

ロゴスキンが命じた。


だがおかしなことに、兵士が部屋の照明をつけるまでもなく、室内は青白い光で満たされていたのだった。


「起きろ、ボノ」


アレクサンドルの呼びかけに応じて、部屋の中央で椅子に縛り付けられた人物が顔を上げる。


「起きてるよ、ロゴスキン」


一本の毛もない真っ白な顔。


左眼を抉るように刻まれた刀傷。


顔面の右半分は火傷の跡だろう、皮膚がただれて引きつっている。


マイミは思わず目を背けた。


(ちゃんと見ろ、霧崎マイミ)


男は心の中に呼びかけてきた。マイミは泣きそうになりながら、独りでつぶやく。

「何てこと……ちょっと展開がシリアス過ぎないかしら」


「マイミ、彼がボノ。僕たちが手に入れた、龍と戦うための秘策だ」


そう言うと、アレクサンドルはニヤリと笑った。





つづく

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