呪いを帯びた銃弾を探せ! 北米死闘篇(3) ~ワゴンの中身~
銃撃戦が始まった。
グレイはマスタングの車体に身を隠しつつ、黒シャツの男に応戦している。距離は近いが、互いに自動車の陰に隠れているため、弾はなかなか命中しない。
マイミは手に汗を握って事の成り行きを見守った。グレイが奪った拳銃で応戦する間、膝蹴りを浴びたパーカーの男は這いずるようにしてその場を離れる。
黒シャツの男も、潮時と悟ったのだろうか。威嚇のため二、三発銃弾を叩きこむと、身を翻して逃げ出した。
「待て!」
グレイが後を追う。
「後なんか追わなくていい!」
マイミは叫んだ。
深追いして良いことなんか何も無い。それよりむしろ、この場所から早急に離れるべきだ。数分もすれば警察が駆けつけて、アメリカの司法機関と揉めることになる。
だがグレイは追撃の手を緩めなかった。男たちが駐車場に置かれた黒いシボレー・アストラに乗り込むのを見ると、その場に膝をついて狙いを定めた。
わずか二発で前輪を撃ち抜く。
ワゴン車は走り出そうとしたが、駆動輪がパンクしているため走行できない。
車のドアが開いて男たちが飛び出してきた。
「Fuck off men!you rat bastard mother fucker!(オフファックの男性!あなたラットろくでなしくそったれ!)」
悪口を言いながら走って逃げ出す。マイミは植え込みから立ち上がると、口に手を添えて言い返した。
「Shut your fucking mouth on assbandit!(assbanditのあなたクソの口をシャット!)」
男たちは全力疾走し、駐車場の柵を越えて夜の暗闇の中へと消えていった。
やがてグレイが手をパンパンと払って立ち上がる。弾を撃ち尽くしてスライドオープンした拳銃の指紋を拭うと、駐車場の植え込みに投げ込んだ。
「……いったい、何事だったんですか、これは」
マイミは言いながらグレイに近づいた。自分たちが襲撃される理由が理解できなかった。
「さてな。この辺りは比較的治安の良い地域だ。車上荒らしにしては凶悪過ぎる気もするが……」
「あたしたちを狙ってた?」
「……もしそうだとして、その理由はよく分からないがな」
言いながらグレイは男たちが放置したワゴン車に近づく。
「車を調べれば、何かわかりますか?」
「どうだろう。ああいう輩が、身もとの分かる物を車内に置いておくとは思えない」
グレイは運転席に上半身を突っ込むと物色を始めた。
「ハンバーガーの包み紙、タコスの包み紙、ドーナツの包み紙にスナックの袋とコーラのボトル。くそ、こいつらはゴミの捨て方を知らないのか」
「何か役立つものは無いですか?」
「グランド・セフト・オートじゃないんだ、人の物を勝手に持ち出していいわけじゃない」
マイミは何気なく後部座席のスライドドアを開けた。
そしてそのままの姿勢で固まった。
「地図があるな……。俺たちに都合のいいことに、幾つかの場所に印が記載されている」
言いながら、グレイがマイミの方へと近寄ってきた。
「アリゾナの地図だ。何だかきな臭いな、霧崎さん。こいつらも俺たちと同じ場所を目指していたように思えるんだが、気のせいだろうか」
グレイは地図から目を上げた。
「なぁ、霧崎さん。どうした?安物のダッチワイフみたいにポカンと口を開けて」
マイミはワゴン車の中を指さした。
血まみれの美少女が、虚ろな目をこちらに向けている。
青い瞳は、四つあった。
つづき




