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怪奇!N村湯けむりの事件簿(7) ~土蜘蛛の襲撃~

「何これ!?」

マイミは驚嘆の声を上げた。


事務所の壁を吹き飛ばして現れたのは、巨大な黒い塊。

硬い剛毛が生えた、けむくじゃらの化け物。

黒光りする丸い胴体から突き出した、節のある幾本かの脚。


「蜘蛛……?」


蜘蛛だった。だがそれは、体高三メートルに達しようかという、巨大な蜘蛛。


「霧崎さん、下がるんだ」


グレイが警告を発する。


蜘蛛の複眼がしっかりとマイミを捕えていた。鎌状の上あごがいやらしく動めいていて、隙あらば襲い掛かろうとしている。


佐倉さんと、幽鬼のような社員たちも恐れ慄き後ずさる。


「くそ、何なんだこの蜘蛛は」


グレイが吐き捨てるように言った。


「これもあんたらの仕業か?佐倉さん」

「と、とんでもない」


佐倉さんはかぶりを振った。

「初めて見た、何なんだ、これは」


その言葉の意味を考えながら、マイミはグレイの方を見た。

「グレイさん、N村への道中、私たちを襲撃したのはこいつでしょうか」


「間違いない。蜘蛛は我々哺乳類と比べた場合、体格比のスピード・パワーが桁違いだ。これだけのサイズの蜘蛛であれば、乗用車を吹っ飛ばすくらいは朝飯前だろうな」

グレイはそう言うと、社員の一人に近寄り、その手から猟銃を奪い取った。


「全員、下がれ。あの上あごに食らいつかれたら最後だぞ」


グレイが狙いを定める。


だが佐倉さんも社員たちも、恐怖のせいかあわあわと呻くばかりでなかなか逃げようとしない。


グレイが腹の底に響く声で怒鳴りつけた。


「急げ!時間がないぞ!」


時間がない、という言葉に全員がピクリとなった。ノウキガー、ノウキガー、とつぶやきながら渡り廊下の方へ向かう。


「グレイさん!」

マイミは短く叫んだ。蜘蛛がその上あごをグレイに向けたからだ。


発砲。


社員から奪ったポンプアクション式のショットガンを素早く操作し、グレイは散弾を二度浴びせた。


蜘蛛が怯む。

だが、致命傷は与えられていない。


「くそ、鳥撃ち用の散弾か」

「効かないんですか」

「弾が軽過ぎる。大口径のライフル弾でもなけりゃ、あれだけの質量の化け物を殺傷するのは無理だ」

「連射すればいいじゃないですか。一発は軽くても、手数を多くして削るんです」

「無茶を言うな。日本で散弾銃の装弾数は薬室含めて三発と制限されている」

「じゃあ、どうすれば」

「何か、対抗できる武器を探し出さないと」

「書斎の隠し戸棚にメダリオンをはめると、寝室の絵画が回転してマグナムが現れるとか、そういうやつですか?」

「すまんな、バイオハザードはやったことが無いから、分からない」


蜘蛛が撃たれた衝撃から立ち直ろうとしていた。

グレイが散弾銃を構え、最後の一発を叩きこんだ。


「とにかく、この場は退くぞ」



そしてマイミとはグレイは、渡り廊下に向かって駆け出した。




つづく

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