125話 エピローグ
ゆっくりと目を開くと、目の前に見覚えがある景色が広がっていた。
運動場から聞こえる騒がしい声、どこかの教室から響いてくる楽器の音。時折響く甲高いどこかの女子生徒達の笑い声がキンと耳を刺激して、思わず顔を顰める。
足元を見れば思わず視界が揺れたように錯覚する、空中まであと一歩のところ。
「あぁ、そうか」
ぽつりと、何の感情も宿さない真っ暗な瞳と共に、低い声音が風に乗って消えていく。そっと踵に体重を掛ければ、役割を果たさない危険防止のフェンスに背中が触れて小さく笑った。余りにも現実過ぎる世界、色を取り戻した元の世界。
「全部、都合がいい白昼夢だったのかも。…いや、それはないか。ただの夢ならウチは今こんな景色を見られている筈がないんやから。あんな幸せな時間を、夢で終わらせるなんて勿体ないし!」
腕を空に向けて杖を呼び出す動作をしても、そこには何も現れない。これまで当然の様に手元にあった筈の相棒の存在がないまま、空の掌をぐっと握りしめた葵は手を胸元に引き寄せて、瞼を重くする雫を強引に拭ってから笑った。
「さぁて、ここからが本番やね!」
きらり、風に吹かれて煌めく雫は寂しそうに、それでも真っすぐ前だけを見据えた葵の表情を反射させる。純粋で無邪気な葵の声が響いた。
「——————ばいばい!」
くるりと、葵の身体の向きが校舎側へと変わる。まるで空を飛んでいるみたいにスカートの裾が翻った。そうして歩き出した中で、自然と視線の位置は正面へと変わる。ゆっくりと目を瞑り、無意識で浮かんだ微笑を抑える事無くついに屋上のドアノブと掌が触れ合う瞬間、葵は肩を竦めて笑った。
長期間の御愛読心から御礼申し上げます。
明日以降短めの解説をどこかしらに投稿する予定です。また、近い内に後日談が数話投稿される見込みですが、投稿日は未定です。
初投稿という前提もあり見切り発車に等しい自転車操業による不安定な執筆が続いておりましたが、無事完結できて幸いです。
余談ですが、投稿期間中深夜に家をピンポンダッシュされ、謎の迷惑電話が連日続き、最終的に小学生に放火され危うく大事件になりかけると何度か物理的に心が折れそうになりましたが…どうにか完結まで辿り着くことができて本当に良かったです。
書き始めの頃は60万文字を予定していましたが気付けば80万文字超え。最初はノリと勢いでしたが最終的に菩薩の気持ちで只管パソコンと向き合う日々でした。
本当に皆様、長い間お付き合いありがとうございました!宜しければ(お手柔らかな)感想等頂けると本当に助かります。
それでは、ここまでの執筆はわたくし、はなあふにてお送り致しました。後日談、次回作にも是非触れて頂けると幸いです。




