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推理編 でか盛りラーメン推理マシマシ

 僕は犯人を見据え、ただただ威圧していく。

 僕が警察に電話をし、被害者に食べたものを吐き出させて。中から出てきたのはスープにもやし、麺と全てものが入り混じっていた。知影探偵から見たら、たぶんどれに毒が入っていたかなど分からないだろう。毒は既に飲み込み切ってしまったことも予想できるだろう。

 知影探偵は少し混乱した後に、こちらの肩に手を伸ばしてきた。


「ちょ、ちょちょ、ちょっとばかし待ちなさいよ!」

「ええと、はい。待ちました」

「待つのが早い! 後、三日、四日は待ちなさいよっ!」


 そんな待てる訳なかろう。遅刻する人だって、もう少し早く来るぞ。

 女子大生探偵はすぐにスマートフォンを見てから、自身の推理を考える。そして最初に自信ありげに指差したのはスープを作った人だった。


「ふふん! この名探偵の前に誤魔化しは利かないわ! 毒入りラーメンを作っていたのは、貴方よ!」

「えっ?」

「スープの中に毒を入れていたのね。スープの中に毒をかき混ぜておけば……! 間違いなくスープの中に毒が入って……被害者は毒を摂取することになるのよっ!」


 それに関してはスープ職人が自ら犯行を否定する。


「いや……それだと君や君の友達に毒が行き渡っちゃうんじゃ……」


 実際、僕や知影探偵は全くダメージを受けていない。そもそも毒など入れて、蒸気が舞い上がったら僕達まで苦しむ羽目になると思うのだけれども。

 白目で彼女を見つめていると、すぐに意見を変えていた。


「で、でも何か入れてたんじゃないの? 最後に寸胴に入れてたの見たわよ? あれが毒で、素早くすくうことによって、被害者のスープにだけ毒を入れることができたのよ! あの怪しい笑みは毒を入れたことをほくそ笑んだ顔だったのよ!」

「あ、あれは特性調味料であって、毒なんかじゃねえぞっ!?」


 ここに関しては僕も反論を言わせてもらおう。


「あの、知影探偵? 毒を入れて素早くすくう技術なんてあると思いますか? 実際寸胴はことこと煮てる状態で鍋の中も動いてます。毒が本当に上だけに残るなんてあると思いますか?」

「ええと……」

「ええ。ここで僕か知影探偵が毒を飲んでたって事実があれば、話は別ですがね!? それとも何です!? 今ここで倒れますか?」

「な、何だか苦しくなってきたかも……うぐっ、うう……ダメだ。ワタシ、幾ら唸っても元気だ……」

「馬鹿やってないで、犯人を見張ることだけに専念していただければ」


 そうお願いするも。彼女の探偵魂はコンロの火とは違ってそう簡単に消えないらしい。


「まだまだよっ! スープの人はごめんなさいねっ! 今やっと着信があったわ! 犯人は簡単よ! べジさんが犯人なのよっ!」

「なななななっなにぃ!?」


 彼女はまた推理を語り出す。「今日は推理も大盛りよ」と。心底いらない。


「べジさんの野菜なら他の人に混じらないわよね。そもそも用意していた野菜に毒を用意していたのよ……ううん、よくある話。野菜によく似た毒性のものを用意しておいたのよ。毒はカプセルみたいに中に詰め込んであるようなものを入れれば……茹でてもその毒野菜はワタシ達の中には入ってこない!」


 こちらからコメントさせてもらおう。


「毒野菜って何ですか? 毒キャベツとか毒もやしとかあるんですか?」


 まるでそんなことも知らないのとでも言うように、ふふんと彼女は推理を謳い出す。


「毒ニラ……いわゆるスイセンよ。よく間違って、誤食してしまうっていう話はあるのよ。ニラなら、ラーメンに入ってても不自然ではないし!」

「そんなもの僕達のラーメンに入ってましたっけ? ニラすらなかったような」

「そこは被害者のところだけに出したのよ」

「被害者はいつものにプラスして、ニラが入っていたのに気付かなかった……と?」

「新たな挑戦だと思ったのよ。オーナーなら猶更だわ! これは新たな挑戦を刻むもの……なら食べてやろうと思って」


 被害者の方から一瞬「ちげぇよ」との声が聞こえてきたような。


「被害者の方から否定が来てるんですが」

「ええ……? き、気のせいじゃない?」

「それに、です。さっきのパフォーマンスを見てる限り、野菜の人が野菜を全て管理する訳ではなさそうですよ? 麺の人が野菜を茹でていましたし……もし。茹でる野菜を管理していたのは麺の人では?」


 そこで知影探偵が恐る恐る彼等に質問を。


「えっ? 担当されるものっていっつも違う感じですか? えっ、麺の人は麺だけやるんじゃなくって?」

「いや、状況によって違うかな。手の空いてる奴が仕込んだり、麺や野菜を茹でたり。盛るのも状況を見ながら、だ」


 麺の人の答えに対し、知影探偵は白目を。どうやらかなりの衝撃を受けたよう。


「や、やることが違うってのに……犯人なんて見つけられっこないじゃない!」

「そもそもです。犯人は被害者以外にも来店があることは承知の上だったでしょう……それに被害者の頼むものは予想できたのでしょうか……。オーナーが必ずこれを食べる、みたいな感じではなかったでしょうに……」

「そ、それはそうだけど……」


 たぶん知影探偵はSNSのフォロワーに助けを求めているようだが。たぶん解決はできない。この状況をよく観察している僕達だからこそ、解けるものがあるのだ。


「気付きませんでしたか? 被害者が言った不思議な言動がヒントになりませんか?」

「ヒントって何よ! ヒントって!」

「このラーメン屋に来て、被害者は『人に会う約束がある』って言ったんですよ? そのことを後から考えて、ああ、そういうことかと」


 知影探偵はその言葉に「ううん?」とまだ訳が分かっていないそう。


「ど、どういうことなの!? 人に会う約束があるからって……そういや、被害者の人、あぶらおおめとしか言ってなかったような気もするけど……それがどうしたのよ!? 人に会う約束があるからって、餃子やこのにんにくマシマシラーメンを百パーセント食べないって可能性はゼロじゃないし!」

「別にそこの矛盾に対して、話してる訳じゃないです」

「……どういう意味よ。じゃあ、どういうヒントになったっていうの!? ワタシの推理を超えることができるっていうの?」

「そもそも、知影探偵の推理ではなかったような……まぁ、いいや……ええ。この事件の真犯人を最初にお伝えしましょうか……」

「だ、誰よ! あっ、そういやワタシ、一人だけまだ犯人扱いしてない人がいたわね……! ま、まさか……!」


 犯人はこの人だ。


「このラーメンに毒を入れた犯人はアンタだよっ!」


 声が喉の奥に跳ねた勢いで、彼の特徴まで叫ばせてもらうことにした。


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