問題編 デカ盛りラーメン事件マシマシ
「以前からずっと、ここに来てみたかったのよね! SNSでずっと有名で。行こう行こうとは思ってたのよ? でも女子中学生が一人で入るのも何だかなぁっていうのもあって……で、気付けばワタシは女子大生になってて……」
彼女はSNSで紹介されているラーメンの店を見せてくる。知影探偵はいかにも楽しみにしていたみたいだけれども。
「それが、その店ですか……?」
SNSの写真に関しては立派なラーメンが映っている。しかし、この目から捉えられるはかなりボロボロの外壁になってるラーメン屋。
時間が経つというのは何とも恐ろしいものである。
「……だ、だって! 女子が入って……食べきれるか不安って言うのもまぁあるのよ? 他の子連れて来ても残しちゃうっていうのが怖いし……だったら、最悪残ったものも食べてくれる子がいるならって思って……他の男の子はあんま興味ないみたいだし」
僕も別にそこまでいっぱい食べますって感じの人ではないのだけれども。彼女の眼はやはりいつも何処か狂っている。だから真犯人とかを見逃してしまうのではないかとも言いたいのだが。尻を蹴られるので黙っておく。
それよりも、だ。
「で、SNSに投稿したいと」
「ええ!」
「でも、この店写真撮影禁止だって書いてありますよ?」
「うっそ!? 前まで良かったような……ううん……残念……でも……何かいい匂いがするし、食べてかない?」
確かにこの肉の匂いには逆らえない。ちょうどお腹が空く時間だし、別のれすとらんに行っても待たされるだけだろう。
空いてるから味に関してはよく分からないが。
「行ってみるのはアリか……」
ということで入ろうとした最中、スーツの男が僕達に割り込むように入ってくる。別に並んでいる訳ではないが。何だか横暴だなとは思うのだけれども。
「いらっしゃいませ! こちらの席にどうぞっ!」
男の人が接客して、カウンターの席に座らせていく。だいぶ中は狭いため、僕がその男の左隣に座らせられたのだ。そして僕の左に知影探偵が。そこで隣の男が怒鳴るように一言。
「水!」
接客の男は「何回もすみませんが、水は入口そばにあるものをお取りください」と。男は「ふんっ、横着しやがって」としぶしぶ水を取りに行く。
僕と知影探偵は喋らず「嫌な感じの客だね」と。
僕は調味料置きを挟むように置いてある割りばしから一つ貰って、テーブルに置いておく。
「氷河くんって先に割りばし取っておく派なの?」
いや、ただ手から箸を取って手と手をぶつけたくないだけ。本屋で手と手がぶつかって運命の恋に落ちる、なんて出来事を絶対に起こしたくはない。
考えているうちにウェイターがこちらに。
「では、皆様ドか盛りラーメンでよろしいですね!」
「僕は中サイズで」
「ワタシは小サイズで……ちなみにここって撮影どうしてもだめですか?」
無理矢理聞いている彼女。そんな彼は残念と首を横に振り。
「ちょっとトラブルが色々あってね。でもでも、まぁ、ここはラーメン三兄弟のパフォーマンスを見てって、ちょーだい!」
そう言って、接客の男はすぐに厨房へ。カウンターから見えた厨房に二人の男の姿が。いつの間にいやがったのか、と驚く僕をよそ目に謎のパフォーマンスが始まっていく。
「極太麺はラーメンの命! コシを練って練って練って練って練って練りまくる! 麺づくりのメンちゃんとは俺のこと!」
僕、帰ってもいいですか? いや、もう注文したからキャンセルはダメか。
「野菜や肉は健康的。ラーメンは野菜だ! 肉は野菜だ! ベジタリアンの大好物! ちなみにもやしやキャベツは肉だ! 心の栄養だ! ベジちゃんと呼んでくれ!」
結局ベジタリアン食べれねぇじゃねえか。ツッコミたいけれども、お腹が空いてるから喋りたくない。
ベジさんはそのままキャベツを盛大にカットしていく。
つまり、こちらにラーメンが来るのはいつ頃になるのだろうか。
待っている間に接客していた男も準備を整えて。
「スープを混ぜ混ぜ! この寸胴から作り出された奇跡のジュースが心に体に! そして貴方の血液に!」
僕は知影探偵に耳打ち。
「こんな感じだから廃れるの早かったんじゃないでしょうかね。お客さんが恥ずかしすぎます……」
「ま、まぁまぁ……味はいいらしいから」
「味はって……」
隣の男はハッキリと。「こんな下らねぇことやってるから、客が逃げちまってんだよ。気付かねぇのかよ」と。
しかし、調理人達はハッキリ無視。
麺はこちらに湯けむりが香る位の寸胴で茹でている。こちらに熱い蒸気が飛んでくる。
それでも男は頑張っている。
「折角、人と会う約束をしてるってのに、こう時間が掛かっちゃあな。残念だけど、このお店は終わりだな。もう次の契約はないと思え」
どうやらオーナーらしい。
いや、ここまでになっているのに逆に店舗を貸してあげるというのは逆に聖人ではなかろうかとも思えてしまった自分がいた。
そんな中、知影探偵が。
「ねぇ! 調味料のところにある『象』の印って何?」
「象?」
そこを言おうとした時、ベジさんが叫ぶ。
「お好みは何にしやしょう!」
こういう時どういえばと迷っている合間に知影探偵が。
「にんにくあぶらマシマシ、やさいおおめからめ汁濃いめで!」
僕も真似して一緒に。その後で彼が番が来たのかと言うように。
「あぶらマシマシで。かためだ! 急いでんだ! 変なパフォーマンスはすんなよ!」
と言われるとしたくなるのが正確のようで。怪しい笑みを浮かべながらスープ係の男が寸胴に何かを入れていた。
それから僕達の器に一杯ずつ入れていく。
麺の人も「へいへい!」と麺を器に投入。
野菜の人も麺の人が茹でていた野菜をリズムよく盛り付けていく。
「へいへいへいへい! お待ちっ!」
ということで実食。
麺を食べたいと思ったが、もやしが大量に邪魔をする。もやしを卓上調味料の醤油を使って味付けして食べていくとの感じだろうか。
実際やってみて美味しかった。知影探偵はスマートフォンを振るえる手でポケットに戻し、ずるずると。
「ううん! 麺がもっちり、こってりして味自体は良かったかも!」
「まぁ、確かにボリュームはありますよね」
何か人の笑顔を見るのはいいかもしれない、と思っていた最中だった。
「何だ……いつもと違って不味い……これは……ぐぅううううううううううううううううううううううう!?」
その声で悪寒がした。そちらを向いた。
隣の男が少しもがいた後、バタリと。皆の視線がそちらに映る。
その瞬間、僕は声を出す。
「急いで救急車と警察を!」
被害者は外傷はないのだ。何かナイフだとか、フォークが飛んできて傷付いた訳でもない。食べ物を口にして唸った。
考えられるのは一つ。毒だ。
そしてするべきことは見えた。
犯人に対して言わなくては。
「おっと、特にアンタは動くなよ。証拠隠滅されると困るからな。犯人はアンタしか考えられねぇんだからなっ!」
救急車に電話していた彼女が振り返って、こちらに叫んでいた。
「えっ、今から犯人捜しをするんじゃなくって!?」
うん、アンタは連絡に集中してください。
犯人は分かりましたでしょうか。
推理ができた方、ぜひともコメントをいただければ!




