第62話 ジンのお財布事情
カルナス村――アンデッド調査に訪れた村。
村の通りを歩くことしばし、煤で黒ずんだ石壁の建物が見えてきた。
入口には年季の入った大きな槌の紋章。扉の隙間からは、金属を打つ重い音と熱気が漏れ出している。
「ここがカルナス村の鍛冶屋だ」
ジンが扉を押し開けると、むわりと鉄の匂いと熱風が押し寄せた。
奥の火床で火花を散らしていた大柄な男が、槌を置いて顔を上げる。
「おう、ジンか。今日は客連れか?」
「ああ。ルキア村の仲間で、今回のアンデッド調査の協力者だ」
ジンの紹介に、男はセイたちへ視線を向ける。
「鍛冶職人のテンテツだ」
「こう見えて、腕は大陸一番と言ってもいいくらいだ」
ジンの補足に、テンテツはニヤリと笑う。
「『こう見えて』は余計だ。だがまあ、自信があるのは確かだ。安心して見ていってくれ」
「ほう……では見せてもらうとするか」
セイは好奇心に目を輝かせ、壁際の武具へ歩み寄った。
剣、槍、斧、ロッド――多彩な武器がずらりと並んでいる。
「うーむ。すごそうってのは感じるんじゃが……ワシには良し悪しが分からんのう」
腕を組んで唸るセイの隣に、リアナが歩み寄る。
棚に飾られた一本の片手剣を手に取り、軽く振ってみせた。
「……なるほど。重心がしっかりしてる。刃も均一で無駄がないわ。扱いやすいし、長持ちもしそう」
「さすがじゃのう、リアナ。やはりおぬしがいてくれると助かるわい」
素直な称賛に、リアナの頬がみるみる赤くなる。
「こ、これくらい全然大したことないわ!」
顔をそむけながらも、その視線はチラチラとセイを追っている。
「……セイ、あなたのも選んであげる。だから、どんな武器がいいのか教えて」
「おお、頼もしいのう。軽くて振りやすいものが好みじゃ」
「わ、分かった! 任せて!」
勢いよく答え、リアナは真剣な顔で棚を探り始める。
耳まで赤いその様子を見て、ミミがニヤニヤと忍び寄った。
「リアナちゃん、なんかデレデレしてない? 声のトーンも変わってるよ?」
「ち、違うっ! ちゃんと選んでるだけで……!」
赤面しながらも、リアナは何本もの剣を手に取り、確かめていく。
重さや刃の状態、握り心地を一振りごとに確かめ、丁寧に見極めていった。
「どうじゃ、見つかりそうか?」
「ちょっと待って……ちゃんといいの選ぶから」
やがて一本を選び、セイに差し出した。
「……これなら。軽くて振りやすいし、剣筋もぶれないと思う。きっと……合うはず」
セイは受け取り、軽く構えてみせる。
「ほう、これは確かに扱いやすいのう。――リアナ、お礼にこの剣でのワシの勇姿を、おぬしに一番に見せてやろう」
「っ……!」
リアナの頬が一気に染まり、ぎこちなくも嬉しそうに笑った。
「う、うん……楽しみにしてる!」
その空気を遮るように、ミミがジト目で割り込む。
「あーっ、リアナちゃん怪しい! セイにばっかり! わたしにもロッド選んでよー!」
そう言ってセイの腕にぴたりと寄り添い、にっこりと見上げる。
「ねえセイ、わたしにはどんなロッドが似合うと思う?」
「ちょ、ちょっとミミさん!?」
リアナは真っ赤になって慌てふためく。
「それは私が選びます! セイに聞く必要なんてありません!」
言うが早いか、ミミの手をぐいっと引いてロッドの棚へ。
「ちょ、リアナちゃん!? そんなに引っ張らなくても~!」
「だ、黙って見ててください! 私がちゃんと選ぶんだから!」
そのあまりの必死さに、セイとエリシアは思わず苦笑した。
――こうして、セイとリアナは剣を、ミミとエリシアはロッドをそれぞれ選び終える。
「やはり良いものだけあって……値が張るのう。懐が火の車じゃ」
セイが嘆息すると、ジンが肩をすくめてカウンターの前に出た。
「テンテツのおっさん。この連中は俺の仲間で、命の恩人でもあるんだ。少しはまけてくれないか?」
テンテツはジンの顔をじっと見つめたあと、ふっと笑みをこぼす。
「ジンの恩人ってんならしょうがねぇな。分かった。それ全部で金貨五枚にしといてやる。まけた分は……あとでジンに回すとするか」
「お、おい、おっさんもかよ……!」
頭を抱えるジンに、セイが真顔で礼を言う。
「ジンよ、本当にありがとう」
「おいおい、勘弁してくれよ……」
その切実なぼやきに、一行の笑い声が鍛冶屋に響いた。
そんな余韻の中、リアナがふと不安そうに呟く。
「……そういえば、馬車を安く借りられるって言ってたけど、ジンさんのお財布……大丈夫なんですか?」
ピタリ、と空気が止まる。
セイが追い打ちをかけるように、にっこりと微笑んだ。
「ジンよ、何から何まですまんのう。……馬車代までも」
「やめてくれぇぇぇ!」
ジンの悲鳴に、一行はまた笑い声を弾ませるのだった。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】36
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(リアナを冷かしつつも自然と距離を詰める)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。体力ばっちり
- 補足:何だかんだでリアナのガチ選定で手に取ったロッドがしっくりきすぎて感動
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(「一番に見せてやろう」の言葉に完全にやられた)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。体力ばっちり
- 補足:ずっと頭の中で「一番……一番……」と呟き続けていたとかいないとか
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高(あとで一緒にお酒飲みたい)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。体力ばっちり
- 補足:装備を眺めながらも、実はカルナス村の酒屋の看板がずっと気になっている
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