第60話 新しい装備
カルディナ――定期便馬車の発着場。
「今日はもう遅いですし、ここで一泊しましょう。明日の朝に出発すれば、予定には十分間に合います。カルディナは交易で栄えた街ですから、夜の街並みも楽しめると思いますよ」
カイルの言葉に、一行は頷いた。
カルディナには宿屋がいくつもあり、《ドランベル》のときのように、別れた直後に受付でばったり再会――なんて気まずい展開もなかった。
宿を確保したあと、セイたちはさっそく街へ繰り出した。
「遅いといっても、まだ日が傾きかけたところじゃ。店も開いとるし、少し見て回るとしようか」
セイの言葉に、リアナが勢いよく手を挙げる。
「ねえ、セイ。前から思ってたんだけど……そろそろ、みんなの装備をちゃんと整えておきたいの」
「リアナさん……でも、お金は大丈夫なのでしょうか?」
エリシアが心配そうに首をかしげた。
「ええ。装備用の予算は別に取ってあるから、旅には影響しないわ。それにカイルさんたちから報酬ももらえるし、馬車も安く借りられるなら――もう少し装備に回してもいいと思うの」
「やったーっ! じゃあ、わたし、もっと大人っぽいやつが欲しい!」
ミミが両手を挙げてはしゃぐと、リアナは慌てて顔を赤くした。
「ミ、ミミさんっ! それはダメです!」
「えー、なんでー?」
そんな二人をなだめるように、エリシアが小さく咳払いをして微笑む。
「まあ、冗談はそのくらいにして……皆さんの装備、見に行きませんか?」
その視線をセイへ向けると、セイは深く頷いた。
「そうじゃの。では、この町で装備を整えるとしようか」
「……冗談じゃなかったんだけどなー」
ミミが唇を尖らせてぼやく中、一行は賑やかな通りへと歩き出した。
石畳を踏みしめて進むと、通りの両側には商人たちの店がずらりと並んでいる。果物を山のように積んだ露店から、鉄を打つ音が響く鍛冶屋まで――活気に満ちた声が飛び交い、街全体が商売の熱気に包まれていた。
「さすが交易の町ね……どこも賑わってるわ」
リアナが感心したように周囲を見渡す。
「評判のいい武具店があるはずじゃ。まずはそこを見てみようかの」
セイがそう言って歩を進めると、やがて立派な看板を掲げた店が目に入った。
獅子の紋章を掲げたその店からは、扉越しにも鉄と革の匂いが漂ってくる。
「ここなら間違いなさそうじゃの」
セイが頷き、扉を押し開けた。
カラン、と鈴の音。
店内には剣や槍、鎧や盾が整然と並び、磨かれた鉄がランプの光を受けて輝いている。
店主らしき壮年の男が顔を上げた。
「いらっしゃい。おや……見慣れん顔だな。冒険者さんか」
「うむ、装備を整えたくての」
セイが応じると、店主はにやりと笑い、手を擦り合わせる。
「だったら見ていきな。うちは質で勝負してるからな」
「わぁ……」
ミミが目を輝かせ、並んだ品々に駆け寄った。
「ねえねえエリシアちゃん! この胸当て可愛くない? あ、こっちのマントなんてふわふわだよ!」
「ミ、ミミさんっ! それは装飾用ですよ。戦闘ではまったく役に立ちません!」
慌てて止めるエリシアの横で、リアナが一つの防具に目を留める。
「あっ……これ、《シルクノート》の防具……」
「シルクノート?」
聞き慣れない名前に、ミミが首をかしげた。
「数十年前まで“最強”とまで呼ばれていた魔獣の名前です。どんな攻撃も弾き返す外皮を持ち、多くの冒険者を退けてきたと言われています」
「えっ、どんな攻撃も弾き返しちゃうのに……どうやって倒したの?」
「斬撃や殴打のような広い攻撃には完璧だったのですが、“一点への集中攻撃”にはとても脆いことが分かったんです。それからは討伐難易度が一気に下がったと聞いています」
「なるほど、じゃあ“切られたり殴られたりするのに全振りした防具”ってことだね!」
「はい。なので対魔獣で考えると効果は絶大なんです」
ふと視線を横にやると、窓際にかけられていた一着の白いローブが目に入る。
襟元が金で縁取られた、清潔感のある真っ白なデザインだ。
「ミミさん、これ……」
「わぁ、すごくよさそうだね!」
ミミが目を輝かせて近寄る。
「ミミさんに、とても似合いそうです」
エリシアも柔らかく微笑んだ。
リアナは裾を軽く持ち上げ、生地を指で確かめる。
「《アストラクロス》の素材が使われているみたい。耐衝撃に強い繊維と、対魔法に優れた繊維を織り合わせた素材です」
「すごく魔法使いって感じがするし……それにする!」
ミミが元気いっぱいに即決すると、リアナは嬉しそうに頷いた。
そのやり取りを見ていたエリシアが、少し遠慮がちに口を開く。
「リアナさん……あの、私の装備も選んでいただいてよろしいでしょうか?」
「もちろん。エリシアさんには――」
リアナは店内を見回し、真剣な眼差しで防具の棚を一つひとつ確かめていく。
軽く叩いて硬さを確認し、布地をつまんで厚みや伸縮を調べ、時には光にかざして繊維の織り込みまで確かめる。
やがて一着のローブに目を留め、そっと手に取った。
濃紺を基調とした一着のドレス。
裾はローブよりも短めで、軽やかに動けるよう仕立てられている。
「これは……ミミさんのと同じ《アストラクロス》が使われてるようです。ただ、こっちはローブではなく動きやすいドレス仕立てですね」
リアナは軽く生地を伸ばしてみせながら、エリシアへ手渡した。
「少し胸元が大人っぽい作りなんですけど……大人なエリシアさんには、ちょうどいいと思う」
「ありがとうございます。大切にしますね」
その様子を見て、ミミが小さく羨ましそうに呟いた。
「いいなー」
こうして、三人それぞれの新しい装備が決まった。
「じゃあ、合計は……」
リアナが指を折って計算する。数字を確かめた瞬間、ぴたりと手が止まった。
その様子に気づいたミミとエリシアは、顔を見合わせて息を呑む。
「セイ……」
リアナはうるんだ瞳で上目遣いに見上げ、遠慮がちに声を絞り出した。
セイは額に手を当て、深くため息をつく。
「言わんとしとることは、痛いほど伝わってくる……。財布はおぬしが管理しとるんじゃ。問題ないと思うなら、買うたらええ」
「ありがとう! セイ!」
「ありがとうございます、セイさん!」
「やったぁ、セイ大好き!」
三人の声が重なり、店の中に明るい笑いが響いた。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】36
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(ちょっと大人な装備で気を引こうと悪だくみ)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。新たな装備で心機一転
- 補足:リアナに選んでもらった白いローブを即決。襟元にあしらわれた金色のトリムがお気に入り。鏡の前でくるくる回ってご満悦
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(セイにおねだりで勝負を仕掛ける)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。新たな装備で心機一転
- 補足:仲間全員の装備をテキパキ選び抜いたことで信頼感がアップ。気づけばパーティのお財布大臣に就任
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。新たな装備で心機一転
- 補足:リアナから「胸元が大人っぽい」と言われたが、内心は(ミミさんのローブも結構がっつりじゃない?)と思っている
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