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第58話 揺らぎの剣

 森の街道――カルディナへ向かう途中。


 木々の切れ目に差しかかった、その先に奴らはいた。


 前列に五体。さらに後方には、明らかに一線を画す巨躯の三体。

 地を這うように低く唸り、牙を剥き出しにした魔獣の群れ。


 その前に、《クリムゾン・ジャッジメント》の三人が立ちはだかっている。


「……む。あれは何という魔獣じゃ?」


 セイが目を細める。


「見た目はダスクハウンドに似てるけど……全然別物。特徴からすると《ドレッドハウンド》ね。ギルド記録じゃBランク指定だったはずよ」


 リアナが小声で答えた。


「じゃ、じゃあ……カイルさんたちなら大丈夫……だよね?」


 ミミが不安げに視線を揺らす。


「大丈夫だと思います。ただ……後方に控える大型の三体……あれが少し気になります」


 エリシアの穏やかな声も、この場ではわずかに緊張を帯びていた。


「ヴォォオオォッ!」


 鼓膜を震わせる咆哮。


 それを合図に、群れが地を裂く勢いで一斉に飛び出す。

 前衛の五体が扇状に広がり、《クリムゾン・ジャッジメント》を包囲するように突進した。


「ジン!」


 カイルの低い声と同時に、鋼が閃く。


 ジンの剣が正面の一体を弾き飛ばす。だが、その隙を突くように左右から二体が牙を剥いた。


「――貫けッ、《炎槍》!」


 メリサの詠唱が走る。


 熱光の槍が横合いから突き抜け、一体を焼き裂いた。


 もう一体は、仲間の血を浴びながらも怯まず跳びかかる。


 ジンは身をひねり、肩を掠めさせながらカウンターの刃を突き立てた。血飛沫が舞い、黒毛の巨体が崩れ落ちる。


 残る二体が背後を狙って回り込む。振り返る暇もない――


 だが、それを察していたカイルが割って入る。


 跳びかかる一体を横一閃で薙ぎ払う。硬い毛皮を断ち切る感触が走る。

 巨体が悲鳴とともに地を転がった。


 息もつかせぬ勢いで、カイルはもう一体へ踏み込む。


 その瞬間、カイルの動きが微かに「揺らいだ」。


 魔獣は咄嗟に身をひねり、刃を避けて後方へ跳び退く。だが、その揺らぎに惑わされ、間合いを見誤った。


 退いた先は、なおカイルの射程内。


「よし、これで前線は終了だ」


 振り抜かれた斬撃が、魔獣の胸を深々と裂く。鮮血が飛び散り、赤い軌跡を描いた。

 巨体は呻き声を残し、地へ崩れ落ちる。


「えっ……今の動き、何?」


 遠巻きに見ていたリアナが、思わず目を丸くした。


 セイは腕を組み、感嘆の息を漏らす。


「ふむ……ゆっくりに見えて、実のところ驚くほど速い。あれをやられると、間合いを取るのはほぼ不可能じゃな」

 

 前線は切り崩してもなお、後方には大型個体が待ち受けている。


「ここからが本番だな」


 カイルが短く息を整え、剣を構え直す。


 後列の三体、巨躯のドレッドハウンドが牙を剥き、咆哮を轟かせた。


 筋肉の塊が同時に駆け出す。街道の土が弾け、轟音とともに大地が揺れる。


 先頭の一体。その猛攻を正面から受け止めたのはカイルだった。


 ――ガギィィィンッ!


 牙と剣が激突し、火花とともに鼓膜を刺す金属音が響き渡る。


 圧倒的な重量。押し込まれたカイルの靴底が土を削り、深い溝を刻む。


「ぐっ……重い!」


 軋む腕に力を込め、歯を食いしばって押し返す。


「ジン、右へ回れ!」


 カイルの鋭い指示に、ジンが即座に死角へ回り込む。


 巨獣はなおカイルと押し合いながらも、振り返りざまに爪を振り抜いた。


 剣ごと弾き飛ばされ、ジンの肩口が裂ける。鮮血が散った。


「ぐっ……」


 呻きながらもジンは食らいつく。カイルが正面から押さえる隙を逃さず、背へ飛び乗った。


「おとなしく――沈めっ!」


 渾身の力でうなじへ刃を叩き込む。暴れ狂う巨体に振り落とされそうになりながらも、さらに追撃を浴びせる。


 正面からカイル、背後からジン。二人に挟まれた巨獣は断末魔をあげ、ついに地へ沈んだ。


 その瞬間、左の巨体が地を蹴った。


「《火炎壁》!」


 メリサの叫びとともに、紅蓮の障壁が轟音を立てて噴き上がる。


 だが巨獣は怯まない。毛皮を焦がし、肉を焼かれながらも、炎を裂いて突き進んでくる。


「止まって……っ!」


 メリサは額に汗を浮かべ、必死に魔力を注ぐ。炎がさらに燃え上がり、巨体の脚を鈍らせる――それでも止まらない。


 炎の壁を突き破った瞬間――狙い澄ましていたカイルの剣が横薙ぎに振り抜かれた。


「グオオォッ!」


 切り裂かれた傷に炎が絡みつく。巨獣は苦悶の叫びをあげ、そのまま崩れ落ちた。


「はぁ……はぁ……。ありがとうカイル、助かったわ」


 肩で息をするメリサに、カイルは短く応じる。


「さあ、残り一匹だ。最後まで気を抜くな!」


 最後のドレッドハウンドが牙を剥き、赤黒い瞳で三人を睨み据える。


「俺が動きで翻弄する。ジン、背後を取れ。――メリサ、最大火力を頼む」


 カイルが低く告げ、地を蹴った。


 その動きが再び揺らぐ。


 緩急のついた歩法に、巨獣は間合いを見切れない。振り回される巨腕も爪も、ことごとく空を切る。


 その影に溶けるように、ジンが背後へ回り込む。


 腱を狙い澄ました一閃。鋭く肉を断つ感触。


 その巨体は反射的に振り返り、喉の奥で唸り声を轟かせる。


 だが、すでにジンは斜めへと踏み込み、さらに追撃して離脱。


 巨獣の意識はカイルとジン、二人に引き裂かれ、前方で魔力を練り上げるメリサから完全に逸れていく。


「――二人とも、離れてッ!」


 張り詰めた声が響き、カイルとジンが同時に跳び退く。


 その瞬間、巨獣はメリサに渦巻く膨大な魔力をようやく察知した。


 本能的な恐怖に駆られ、咆哮とともに地を抉る勢いで突進する。


 しかし、時すでに遅い。


「焼き尽くせ――《業火の劫槍》!」


 大地を震撼させる轟音。


 灼熱の奔流が一本の槍と化し、突進する巨躯を正面から貫いた。


 咆哮すら呑み込む炎の渦。


 爆炎が収まったとき、そこに残されていたのは――風にさらわれ消えていく、黒い灰だけだった。


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】36

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。今回、戦闘はしてないので疲れはない

 - 補足:クリムゾン・ジャッジメントの戦闘で、最初はすごく心配していたけど、途中から「あっ、これ大丈夫なやつだ」と安心した瞬間にはポケットに忍ばせておいたおやつをこっそり食べていたのは秘密


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:黒を基調とした剣士風ドレスを装備。今回、戦闘はしてないので疲れはない

 - 補足:Bランクの実力を目の前で見せつけられ、「もっと頑張らないと」と決意したとかしてないとか


・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。今回、戦闘はしてないので疲れはない

 - 補足:クリムゾン・ジャッジメントというふざけた名前からは想像できない実力に、正直かなり驚いている

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

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