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第29話 ギルド王都支部

「……あれが、ギルド王都支部か……」


「ルキア村の……三倍以上はありそうじゃない?」


 建物を見上げるリアナの隣で、エリシアがぽかんと口を開けていた。


「さすが王都ですね……何もかもが、すごく大きいです……」


 一行は興奮を抱えたまま、王都ギルドの扉を押し開ける。


 途端に、熱気とざわめきが押し寄せてきた。

 行き交う冒険者たち。依頼掲示板の前には人だかりができ、受付カウンターには長い列が伸びている。


「うわぁ……中もすごいね。人、いっぱい……」


 ミミが目を丸くして辺りを見回す。リアナも思わず足を止め、圧倒された様子で周囲を見渡していた。


「……ふむ、ここまで混んでおるとはな。受付はあっちみたいじゃのう」


 セイが前を指し示し、一行は人波を避けながら奥のカウンターへ向かう。


 そこで彼らを出迎えたのは、やわらかく微笑む一人の受付嬢だった。


「こんにちは。王都ギルドへようこそ。ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」


 淡い栗色の髪を肩でまとめたその姿に、ミミがはっと目を輝かせる。


「……あれ? なんかカレンさんに似てない?」


 受付嬢はくすりと笑い、頷いた。


「ええ、よく言われます。ルキア村のカレンは妹なんです。私は姉のマリナと申します」


「やっぱり! 雰囲気とか、話し方とか、そっくり〜!」


 身を乗り出すミミに、マリナは丁寧に一礼する。


「勇者様一行のことについては、妹からしっかりと伺っております。昇格試験の申請ですね。準備は整っています」


「勇者とはいっても、テンプレ詰め込みのまがいもんじゃぞ? 期待されても困るわい」


 肩をすくめるセイに、マリナは楽しそうに微笑んだ。


「ふふっ、大丈夫です。妹からは“妙に謙虚な勇者さんだから気をつけて”と聞いていますので」


 その言葉に、リアナとエリシアが思わず吹き出す。


「では、こちらがDランク昇格試験の申込書になります。必要事項はすでに共有されていますので、代表の方に署名だけお願いします」


「うむ……ワシでよいな」


 セイがさらさらと署名し書類を返すと、マリナはそれを奥へと渡し、すぐに戻ってきた。


「これで申請は完了です。試験の詳細につきましては、当日に改めてお知らせしますが――」


 マリナは軽く資料に目を落としながら続ける。


「実施形式は、実地試験となる予定です。

 過去の依頼実績を踏まえた内容になりますので、装備の点検や薬品類の補充など、万全の準備をお願い致します」


「ふむ……動き回る試験というわけか」


「ええ。それと……宿の手配は各自でお願いいたします。王都内には冒険者向けの宿も多いので、そちらをご利用くださいね」


「まあ、それは当然じゃのう。王都じゃしな」


 苦笑するセイに、ミミとリアナも「仕方ないね」と笑った。


 その後、一行はギルドを後にし、人混みを抜けながら宿を探して回る。

 ほどなくして、試験終了日まで滞在できる中規模の宿を見つけ、無事に部屋を確保した。


 チェックインを済ませると、一行はそれぞれ試験に備え、道具の手入れや物資の補充に取りかかった。


 ◇


 夕方――


 部屋では、買い出しを終えたエリシアとリアナが並んで腰掛け、楽しげに話をしていた。


「……本当に、思っていた以上に賑やかなんですね。王都って……!」


 胸元に手を当て、エリシアが目を輝かせる。頬はわずかに赤く、興奮を隠しきれていない。


「ずっと来てみたかったんです。絵本や聖典に描かれていた白い塔や石畳を、実際に歩けるなんて……夢みたいで……」


「よほど楽しみにしてたんですね」


 リアナが微笑むと、エリシアは照れたように頷いた。


「はい……今朝も早くから、そわそわしてしまって……。

 でも、騎士さんや神殿の人たちが通るたびに、あっ、って……つい目で追ってしまって……なんだか、こう……全部が眩しくて……」


 そう言って、エリシアは自分でも可笑しかったのか、小さく苦笑する。


「聖女なのに、落ち着きがなくて……すみません」


「そんなことないですよ。嬉しいことを、ちゃんと嬉しいって言えるのって素敵だと思います」


 その言葉に、エリシアの表情がぱっと明るくなる。

 リアナも、少し照れくさそうに笑った。


「私も……明日の王国騎士団の公開演習、さっそく見学の申し込みをしてきたんです。

 それを誰かに伝えたくて……だから、こうしてエリシアさんに話せて、嬉しいんです」


「それなら、ぜひ感想を聞かせてくださいね。

 リアナさんの目で見たこと、私も聞かせていただきたいです」


「はい、ぜひ!」


 そのとき、廊下のほうから足音が近づいてきた。

 控えめなノックのあと、扉の隙間からセイが顔を覗かせる。


「おお、戻っておったか。買い出しは順調そうじゃな」


「ええ。必要なものは、ひと通りそろえておいたわよ」


 やり取りを聞いていたエリシアが、少し遠慮がちに声をかけた。


「セイさん。……夕食のあと、今夜も少しだけ、ご一緒してもいいですか?」


 その期待のこもった声に、セイは一瞬だけ動きを止める。


「お、おう……そうじゃのう……」


 言葉を濁したところで、すかさずリアナが口を挟んだ。


「セイ、そんな毎晩出歩いてたら……そのうちミミさんに怒られるわよ?」


「……う。ちと、それは勘弁じゃな」


 セイはばつが悪そうに視線を逸らし、軽く唸ってからエリシアに向き直る。


「すまんが、今夜は見送らせてくれ。またの機会に頼む」


 エリシアはほんの少し残念そうにしながらも、微笑んで頷いた。


「……はい。また今度、お願いしますね」


 ◇


 その頃――王都の中心部。


 石畳の通り沿いには、所狭しと露店が軒を連ねていた。

 呼び込みの声と笑い声が入り混じり、歩くだけで胸が躍るような賑わいを見せている。


 そんな中、ミミは目を輝かせながら、露店から露店へとぱたぱた駆け回っていた。


「ふふふっ、これもいいね! あっ、あっちのもかわいい!」


 軒先に並ぶ装飾品や布小物、菓子に雑貨――

 次々と目移りしながら、楽しそうに品定めをしていく。


「いやー、王都はすごいね! 喜んでもらえそうなのがいっぱいだよー」


 無邪気な笑顔で品物を手に取るたび、店主たちもつられるように顔をほころばせ、自然と値段も甘くなる。


 日がすっかり傾くころには、ミミの両手は買い物袋でいっぱいになっていた。

 満足そうにそれらを抱え、彼女は宿へと足を向ける。


 こうして――

 王都一日目は、穏やかに幕を下ろしたのだった。



 ────────────────

 ▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】18

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高(毎晩出歩くのは怒るかも)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。王都の賑やかさに浮かれ気分

 - 補足:王都の喧騒にも好奇心いっぱい。無邪気な笑顔で自然な値引きはもはやスキルである


 ・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)

 - 好感度:高(ミミを理由にセイの夜遊びを阻止)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。体調は万全

 - 補足:都に来た目的――王国騎士団の公開演習を明日に控え、そわそわドキドキが止まらないようだ


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高(「よるのお酒のお供」をさりげなく誘惑)

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。感動しすぎて少し疲れ気味

 - 補足:絵本や聖典で夢見た景色に心を震わせつつ、今夜の一杯にもほんのり期待してたのに


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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