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第27話 王都への途中

 ルキア村から南西――王都へ続く街道。


 朝の空気は澄み渡り、一行の足取りもどこか軽い。

 その中で、ひときわ浮き足立っているのがエリシアだった。


「わたし、ずっと王都に行ってみたかったんです」


 思わず漏れたその言葉に、ミミがくるりと振り返る。


「うん。昨日からずっとウキウキしてたもんね!」


「ふふっ、バレちゃいましたか?」


 エリシアは目を輝かせて微笑む。その様子に、場の空気も自然と和んでいった。


 そんな中、少し前を歩くリアナが、落ち着かない様子でそわそわしていた。


「どうしたの、リアナちゃん?」


 ミミに声をかけられ、リアナはぱっと表情を明るくする。


「王都に行くならって、昨日ちょっと調べてみたんです。そしたら――なんと!」


 にんまりと笑い、わざと間を置く。


「三日後に、王国騎士団の公開演習があるみたいなんです!

 しかもその日はなんと私の誕生日なんですよ。……なんだか、運命感じちゃってて」


「リアナちゃんらしからぬテンション……これはかなり興奮してるっぽいよ、セイ!」


 ミミが茶化すと、セイは小さく咳払いをした。


「皆のもの、観光ではないのじゃぞ。気を引き締めてゆくのじゃ」


 その言葉に、皆は揃って「はーい」と返し、再び歩き出す。


 やがてエリシアが歩調を緩め、そっとセイの隣へ並んだ。


「……セイさん」


「ん? どうしたのじゃ」


「その……王都に行けるのが嬉しくて、昨日はなかなか眠れませんでした」


 その言葉に、セイは口元を緩める。


「ほう。それほど楽しみにしておったか」


 エリシアは頬をほんのり赤く染め、照れたように頷いた。


「はい。それに……」


「それに?」


 エリシアは一歩近づき、やわらかな笑みを浮かべる。


「皆さんと一緒に行けることが……とても嬉しくて」


「……まったく、おぬしは嬉しいことを言ってくれるわい」


 セイは視線を外しつつ、思わず笑みをこぼした。

 その腕に、エリシアがそっと手を添えた――その瞬間。


「あーっ、そこわたしの場所なのにー!」


 ミミがぴょんと跳ね、わざとらしく声を張り上げる。

 エリシアは変わらぬおっとりした調子で微笑み返した。


「早い者勝ちですから」


「いいもんねー。わたしはこっちにするから!」


 そう言うなり、ミミはもう片方の腕にぴたりと抱きつく。


 両腕を占領されたセイは、困ったように苦笑した。


「嬉しいような、困ったような……じゃがこのままでは、試験日前に王都に着けぬぞ」


 そんな言葉にも、一行はくすくすと笑いながら歩みを進める。

 旅路は穏やかで、のんびりと、それでも着実に目的地へ近づいていた。


 やがて空が茜に染まり始めた頃、丘の向こうに淡い街の灯が見えてくる。


「……今夜は、あそこを宿にするかの」


 セイの一言に、誰からともなく足取りが速まった。


 辿り着いた町は、小ぢんまりとしていながら活気に満ちていた。

 規模はルキア村と大差ないが、交易と夜の賑わいが売りらしく、通りには提灯の灯が揺れ、日が暮れても人の流れは途切れない。


 町の名は《ラースト》。

 夜営業に力を入れているようで、路地には居酒屋や軽食処が軒を連ね、香ばしい匂いと笑い声が石畳にあふれていた。


 四人はまず宿を押さえ、そのまま晩ごはんへ向かう。

 焼き鳥、煮込み、山菜料理――次々と運ばれる料理に、自然と箸が伸びる。


「ちょっとそれ、わたしにも!」

「おぬし、食べるの早すぎじゃ!」

「もう一皿、頼みましょう〜!」


 皿を取り合いながら、賑やかな笑い声が絶えない。


 ひとしきり食事が落ち着いた頃、セイが盃を置いた。


「せっかくじゃし、ちと夜の町へ繰り出してみるかの」


 その言葉に、ミミとリアナが同時に手を挙げる。


「いいね! 行こう行こう!」


 だがセイは、すぐに手を振った。


「いや、それは無理じゃ。リアナはともかく……ミミは、のう?」


 そこへ、柔らかな笑みを浮かべたエリシアが口を挟む。


「リアナさんもダメですよ。ここからは“大人の時間”なんですから」


「私、十八はもう越えてるんですけど!」


 むっとするリアナに、ミミが涙目でしがみつく。


「リアナちゃーん、一人にしないで〜っ!」


 リアナは困ったように肩をすくめた。


「……仕方ないですね。じゃあ、宿で二人でおしゃべりしましょうか」


「さっすがリアナちゃん! よーし、今夜は寝かせないからねーっ!」


「ちょ、ミミさん……その言い方、誤解されますってば!」


 笑い声が弾ける中、エリシアはそっとセイの隣に腰を寄せた。


「私も……ご一緒していいですか?」


 わずかに不安を含んだ声に、セイは目を細める。


「まあ、一人で飲んでも味気ないしな。一緒に行こうかの」


 こうして二人は、賑わいの残る夜の通りへと歩き出す。

 石畳に揺れるランタンの灯が、並ぶ横顔を柔らかく照らしていた。


 やがて、年季の入った木の看板を掲げる酒場に辿り着く。

 扉を開けると場末じみた空気の中、カウンターの奥から無口そうな店主が軽く会釈で迎えてくれた。


 二人は奥の落ち着いた席に腰を下ろす。


 運ばれてきたホットワインを、エリシアは両手で包み込んだ。


「……こういうお酒、初めてです。体の奥から、じんわり温まっていく感じがします」


 頬をほんのり染めてグラスを見つめる姿に、セイは眉を寄せる。


「エリシアよ。おぬし、聖職の身でありながら……酒は大丈夫なのか?」


 エリシアは小さく肩をすくめ、苦笑した。


「実は……昔から、こっそり飲んでたんです。いろいろと、気を張ることが多くて……」


「……とんだ生臭坊主じゃな。いや、坊主ではないか」


 ぼそりと漏らすと、エリシアはくすりと笑い、グラスを傾けた。


 しばし静かな時間が流れる。


「昨日の朝のことですが……ミミさんから、聞かれたんですか?」


 控えめな問いに、セイは視線を外したまま頷く。


「うむ。あやつは、口が軽いからのう」


「ふふっ……ミミさんには、秘密ごとは話せませんね。

 でも……おかげで少し気持ちが楽になりました」


 そう言って、エリシアはそっと身を寄せる。

 セイは照れくさそうに視線を逸らしながらも、まんざらでもなさそうにグラスを傾けた。


 ――と、そのとき。


「へえ……珍しいな。こんなとこに、えらい美人が座ってんじゃねぇか」


 にやけた男の声が、割って入った。


 セイはわずかに眉を動かすと、ゆっくりと席を立ち、男へ視線を向けた。


「おいおい、こんなところでまでテンプレが用意されとるのか……」


 呆れたようにぼやきつつ、すっと口調を改める。


「すまんがな。この席はすでに埋まっておる。

 静かに飲みたいのなら……他をあたってくれんか」


 声は穏やかだが、言葉の奥に込められた鋭さが、場の空気を変えた。

 男は気圧されたように目を逸らし、舌打ちひとつで踵を返して立ち去った。


「まったく……酒の席くらい、静かに過ごさせてほしいもんじゃ」


 残った酒をひと口含み、小さく息を吐くセイに、エリシアが呟く。


「……ああいう場面でも、落ち着いていられるんですね。すごいなって思いました」


 そのままセイに視線を合わせ続ける。


「セイさんって、きっと今まで……たくさんの人と関わってきたんですね」


 セイはグラスを手に、わずかに目を伏せた。


「……実はな。おぬしには、まだ話しておらんことがある」


 少し間をおいて続ける。


「信じられんかもしれんが……ワシは元々、別の世界で生きておった。

 こっちに来たのは――まあ、転生というやつじゃ」


「転生……ですか?」


「うむ。この姿になってから、まだ日も浅い。

 だから実のところ、こちらで多くの者と会ってきたわけではない。

 まあ……前世の経験が、染みついておるだけじゃろうな」


 穏やかな語りに、エリシアは黙って耳を傾けていた。


 やがて、少し間を置いて、そっと尋ねる。


「……前世って、おじいちゃんだったり?」


「うぬっ?! な、なぜ分かったのじゃ!」


 思わず身を乗り出すセイに、エリシアは肩を震わせ、くすっと笑う。


「なんとなく……しゃべり方が、そんな感じだったので」


「む……それは否定できんのう」


 照れ笑いを浮かべるセイ。

 エリシアはグラスを見つめながら、小さく息をついた。


「……今日は、素敵な夜になりました。あの……また、ご一緒しても?」


 その声は控えめで、けれどまっすぐだった。


「ああ、次は――王都で、じゃな」


 そうして、夜はゆっくりと更けていった。


 翌朝。

 雲ひとつない空の下、一行は活気に満ちた足取りでラーストの町を後にする。


 目指すは、王都。次なる物語の舞台である。



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】18

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。とにかくうきうき気分

 - 補足:王都でのグルメツアーが楽しみすぎて夜しか眠れない


 ・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)

 - 好感度:ちょい高めの中

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。とにかくうきうき気分

 - 補足:王都での王国騎士団の公開演習が楽しみすぎて夜も眠れない


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高(さりげない大人の魅力を発揮)

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。ちょい二日酔い

 - 補足:王都に行くことが楽しみすぎて夜も眠れない(何をしたいかは不明)


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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