39話 キミに娘の護衛を頼みたい
アリスたち学園組と偵察部隊のルーナと別れた俺はオリビアの案内で王宮へと向かった。
その道中での会話は一切なし。ジュジュは俺じゃなくオリビアの影に隠れたまま出てこない。オリビアもオリビアで、俺の方を見ずに先導するだけ。
(え? 俺、二人からウザがられてね?)
なんてことも思ったが、実際はそうじゃない。単純に何を話せばいいのかわからないんだ。
事実、俺も何を言ったらいいのかわからなかったし、何よりも……会話する気分でもなかった。
(今から国王と会うんだもんなぁ。気が滅入って仕方がないなぁ……)
と、歩きながらため息を吐きまくった。というのも、俺は権力を持つ人間が大嫌いなんだよな。
特に『賢者』の血を受け継いでいるらしい一族。残念ながらそいつらの家名は知らないから今すぐにはどうこうできないが、もし見かけたら一発ぶん殴ってやる。
それぐらいには嫌悪している。
と言っても、両親を呪い殺したジュジュを受け入れた今、そいつらに恨みというものはない。
ただ、俺の唯一の友達だった奴を奪ったことに対するケジメをつけてもらいたいだけだ。
それゆえに――殴る。
とか何とか思っているうちに王宮の目の前までやってきていて……いつの間にか王宮の中に。
というのも、オリビアが帰ってくるのを察知していたのか兵士が待機していて、すぐに移動を開始。
だから、王宮の外観をじっくり見る時間なんてないし、中に入ってからもその足取りが緩むこともなく……。
――そして現在、俺たちは応接間らしき一室で待たされているのだった……。
「……なぁ、国王ってどんな感じの人? 厳しい? もしそうなら、ちゃんとした口調の方がいい?」
「…………」
「無視しないでもらっていい?」
「……ご、ごめんなさい」
別に謝らなくても……。と思いながら、
「で、どうなんだ? 国王ってどんな感じ?」
と、さっきと同じことを聞いてみる。
オリビアは少しだけ考えた後、
「……父上はノロアの思ってるような人じゃないと思う。威厳なんてものはないし、有能でもない。だからと言って、父親として頑張っているのかと問われると返答に困る。……とにかく、父上は私と一緒で無能の極みです。政治を娘――私の姉に丸投げしているのだからそう思われても仕方ないと思うし、それが父上の評価だとみなが思っています」
なかなかに酷いことを言うのだった。
(えぇ……。ドン引きなんだけど。多分、嫌ってはないんだろうけど、本当に無能なんだろうなぁ)
というより、答え合わせをされた気分になった。国王が無能だからこそ、魔族に乗っ取られたんだな。
流石にオリビアの姉が有能だったとしても、恐らくまだ子どもだろうから厳しいところもあると思うし。
(……はぁ。ほんと、パワーバランスおかしすぎだろ。『勇者』も無能で国王も無能か……)
もうこれ詰んでない? もしくは詰みの一歩手前。後は遅かれ早かれ、王国は敗北する。
国王がこんななら国家間での連携は取れないだろうし、今さらどうにもできなさそう。
オリビアの姉には頑張ってもらいたいけど、正直言って期待はできないし、ほかの貴族も……。
「なるほど。つまり俺を王国に連れてきたのも、そこら辺が関係しているってワケか」
「……その通りです。『ヴェルティア王国』は誰がどう見ても戦力不足で、だから……」
「俺みたいなどこの馬の骨ともわからない男でも戦力としてほしいってか」
「……はい。もっと私たちが有能だったら、ノロアの手をわずらわせずに済んだのですが……ごめんなさい」
だから、謝らなくてもいいってのに。もう乗りかかった船だし、謝られても遅いし。
それに戦わなかったらただ一方的にやられるだけだろうから、どのみち戦うしかない。
そのためには、ルーナの頑張りがカギになる。
アイツが『ヴェルティア王国』の兵士や魔法使いがどれだけ魔族と繋がっているか調査。
そして、魔族と繋がっていない人とだけ協力し、総力を以って魔族の虚を突くしかないだろう。
――と、結論をつけたときのことだ。
「遅れて申し訳ない。久々の話し合いで、どのような服装をすればいいのかわからず手間取ってしまってな」
ドアが開き、この国の2トップが姿を現した。……が、あれ? これが国王とその王妃……?
まるでオーラがない。もし、服装が麻の服なら村にいても何ら違和感がないぐらい……雰囲気がヘボい。
いやまぁ、髪色が国王は白髪。王妃が金髪だから目立つことには変わらないんだけど……。
それでも、オリビアの方がオーラがあるように思う。
「キミがノロア君だね。本当はオリビアを助けてくれたことに対して感謝を述べ、その行いに相応しい褒美を与えるところなのだが、少し時間が押していてね」
「は、はぁ……」
「だから、簡潔に伝える。――ノロア君。キミに娘の護衛を頼みたい」
「はぁ?」
思わず間抜けな声を出してしまった。いやだって、いろいろ飛ばしすぎだし、どういうこと?
本当に無能の極みじゃないか。第二王女の護衛とか、ただの村人がやっていいことじゃない。
明らかに人選をミスっている。
ま、まぁ……話を聞くぐらいはいいかもしれない。
俺は国王に対し、対話する姿勢を取ることにした。
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