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38話 ここからはお前も別行動だ

「はぇー、流石は王都。こんだけ人がいたら、人混みに紛れて簡単に財布を盗めそうだ」


「盗むんじゃねぇ!」


「あ痛っ」


 ――という、俺とアイギスのつまらない茶番はさておいて……ようやく王都にやってこれた。

 いま思えば、ただ王都に来るだけなのに色々なことが起きたよなぁ……。


 嫌なことばかりだったけど。


 例えば、あのバカでアホな本当に魔王幹部なのかも怪しいベルゼビュートに喧嘩を売っちゃったり。


 ほかには……そうだな。


 この国――『ヴェルティア王国』の魔法師団が魔族に乗っ取られてるのを知ったり。


 本当、ロクでもないことばかりだよ。


「……はぁ。これから国王と会わないといけないし……。これ、少し前までただの村人だった俺がやることなん?」


 絶対に違うよな。……こんなに憂鬱になるなら、転移魔法陣の上に立たなきゃよかった。


 といっても、時間稼ぎぐらいにしかならないけど。


 というのも『転移魔法』はどうやら単体で使える魔法ではなく、集団儀式魔法らしい。

 つまり、一回使うだけでもかなりの魔力を消費するみたいで、連発することは不可能に近い。


 だから、あのとき好奇心に負けずほいほい魔法陣の上に行かなければこんなことにはならなかったのだ。

 もしくは途中で魔法陣の外に出れば、王都になんて転移されずに済んだのに……。


「それにしても、ほんと人多いな。周囲にいる人だけで、故郷の総人口より多いかも」


 しかも、それゆえに活気があって楽しいだろうな。過疎化が進みまくった故郷ではこうもいかない。

 こんな毎日が祭みたいな……。いや、それはそれで賑やかすぎて嫌すぎるな。


 だからと言って、王都か故郷――どっちがいいかと言われると、確実に王都と答えるだろう。

 

「食べる物に困らなそうだし」


 後、王都の方が生きやすい。道が舗装されているし、建物だってレンガ造りで頑丈そうだ。

 これなら稀にやってくる地震にビクビク震えて、死を覚悟しなくてもいいかもしれない。

 

 魔物の襲撃も警備が厚いから平気だと思うしな。


 そんなことを思いながら、騒がしい王都の表通りを進んでいると……


「ノロア、ここで一度お別れだ。オレ様は魔法学園に戻って、授業をしねぇといけねぇからな」


 アイギスがこのようなことを言ってきた。それに続いてアリスも、


「それならあたしも学園に戻ります。遅れた分を取り戻さないといけませんので」


 と、俺には絶対使わない敬語で魔法学園に戻って勉強するとのことだった。……真面目だなぁ。

 俺だったら確実に休むし、何ならしばらく学園には行かないだろうな。……面倒だし。


 でも、アリスはアリスの道を行けばいい。きっと、何かやりたいことを見つけたんだろう。

 先日、『何を目標にしていけばいいのかわからない』と泣きじゃくっていたのが嘘みたいだ。


 ……お兄ちゃんは嬉しいぞ。


「そうか。なら、王宮に行くのは俺とオリビア、そしてジュジュの3人だけど……」


「何ですの?」


「……いや、俺の顔見て喋ってくんね? というか、いつまでアイギスの影に隠れてんだよ」


「影になんて隠れていませんわ。たまたまワタクシが影に隠れるような場所にアイギスが立っているだけですの」


 ……何を言ってんだコイツ。魔法でアイギスの影に隠れてるのに、偶然だと主張するとか……。

 いやまぁ、ジュジュ本人がそう言うなら遠慮なく王宮についてきてもらうけど。


「……なら、俺たち3人で王宮に行くとするか。じゃあ、アリス……また後でな」


「はぁ!? おにぃとなんか二度と会いたくないんだけど!」


 ……ほんと可愛くない。俺はツンデレじゃなくて、普通にデレデレしててほしいんだけどなぁ。


「じゃあ、行くか。……アイギス、ジュジュを影から剥がしてくれ」


「……やれやれ。何でオレ様がこんなことを……」


 そうあからさまに呆れながら、影に隠れているジュジュを引き剥がそうとするアイギス。

 そんな彼女を尻目に、俺は契約精霊となったルーナと念話を開始した。


『ルーナ。ここからはお前も別行動だ。お前には王国魔法師団に潜入してもらう。目的は――』


『――わかっています。わたしは言葉などなくても、マスターのことならすべて理解している。マスターは泥舟に乗ったつもりでいてください」


『そうか、頼りにしている。くれぐれも見つからないようにな』


『了解です、マスター』


『頼りにしているぞ、ルーナ』


 その瞬間、ルーナとの念話が切れた。どうやら、行動を開始したらしいな。

 

「……俺らも行くか。国王の待つ王宮に」


「俺らも……?」


「そんなことを気にしなくてもいいから。オリビアには王宮までの道案内を頼む」


「わかった」


 こうして、俺たちは3つのグループに分かれて各々の行動を開始するのだった。

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次回の更新は、9月9日です!

追記、次回の更新を9月10日に変更します。

追記、ごめんなさい。次回の更新を9月12日に変更させてください。

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