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37話 いつかお前に何が一番大事なのかを教えてやる

 ――教会。それは宗教団体が所有する宗教施設で、どの街にもどの村にも存在する身近なモノ。

 だけど、その実態はまったくわからず、何を目的として活動しているのかも不明だ。


 それゆえに不気味なところもあり、俺の中では悪の集団の本拠地というイメージがある。

 英雄譚にも邪神を信仰する宗教団体がよく登場するから、なかなかそのイメージは払拭できそうもない。


 ……と、さっきまで思っていた。


「嘘、だろ……」


 そこはまさしく楽園エデンだった。どこもかしこも超絶美人のシスターがいて、ちょっとイヤらしい。

 髪色は銀髪、金髪とさまざまだが……胸はみなビッグだ。一体、何を食べればそこまで大きくなるのか。


 もし、こんな教会が俺の村にもあったなら、性癖が歪みに歪みまくっていたに違いない。

 それほどまでに危険な空間で、気を抜けばほいほいシスターについて行きそうになる。


 ……クソ。どうやら本当に悪の集団みたいだな。


「どこかにヨボヨボの爺さんはいないのか……! 一刻も早く調和しなければ、信者になっちまう……!」


 ここが邪神を信仰する宗教団体だとしても……!


「……きっしょ」


「……ありがとう、我が妹よ。お前のその侮蔑が、俺を正しい道へと戻してくれた……」


「マジでキモいんだけど」


「あっ、正しい道に連れ戻してくれたのに、めっちゃ突き放されてしもうた」


 恐らく、いま俺がいる場所は正常とドMの境界。もし、一歩でも踏み出せば俺はドMになってしまう。

 だが、俺は幼い頃から冷たい視線と毒舌を一身に受けて生きてきた。今さら、ドMになれるかよ。


 ……それにしても、アリスって何でこんなSっ気が強いんだ? 母さん、教育間違えたんじゃない?

 下手したらアリス、ドM製造機になっちゃうんじゃ……。というか、すでになってるんじゃね?


 一回、アリスの近くにいる人間……例えば、クラスメートを観察する必要があるかもしれない。


 アリスに冷ややかな視線を向けられても、毒を吐く……というか唾を吐き捨てられても、


『気持ちいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ――ッ!』


 とか、


『アリス様ぁ……。もっと、もっと……私を痛ぶって? もう私、アリス様なしじゃ生きられないの』


 とか言って、よだれを垂らしながらハァハァしている手遅れなクラスメートがいるかもしれない。


「我が妹ながら、恐ろしいな」


「……おにぃ。何を考えているのか、何となくわかるから言うけど……おにぃだけだから」

 

「え、何が?」


「はぁ!? そんなこと普通妹に聞く!? ほんとありえないんだけど! こんなデリカシーのないおにぃを……になるとか、ほんとありえないし……!」


 そう言って、顔を赤くして容赦なく俺の脛を蹴る妹。そして、脛を抑えて身悶える俺。


 ……くそぉ。俺が何をしたってんだよぉ。


 というか、みんな薄情すぎない? こんなにも痛がってるのに、誰一人としてこっちを見ない。

 ましてや、俺を置いて先に行こうとしやがる。アリスもアイギスも、そしてジュジュも……。


 ……何でぇ?


 仲直りしたはずなのに、何でか知らないけど顔を合わせてくれなくなったんだよなぁ。

 無視はされなくなったんだけど、今までとは別の要因で距離が遠くなったような気がする。


「……大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。これで初めてってわけでもないしな」


「そう、よかった」


 うぅ、優しい。この優しさは胸に沁みる。やっぱり、オリビアを俺のヒロインにするしかない。

 まぁ、オリビアを好きになるかはわからんけど。俺たちまだ14と12の子どもだからな。


 正直、恋というものを知らない。


 しかし、オリビアには恋愛というものがプラスに働いてくれるかもしれないな。

 恋をすれば自ずと自分自身を大事にしようと思うから、生きてちゃいけないとか思わなくなるはずだ。


 だから、オリビアと恋してくれる人を求む!

 

 オリビアは政略結婚とかしたら、今よりももっとヤバくなりそうな気がしてならない。


「……ノロアはアリスのことどう思ってるの?」


「アリス? どうした急に」


「兄として妹のこと、どう思ってるのかなって……。私には優しい姉がいて、いつも大事にしてくれるの。でも、私は大事にされるのが怖い。何を考えているのかわからないから」


 ……はぁ。オリビアは何でこんなしょうもないことを思い悩んでしまうんだろうか。


 少しはアリスを、俺たち兄妹を見習えよ。


 あいつがいかに俺を邪険に扱っているか。そして、それでも何で俺があいつを大事に思っているのか。

 そんなものは考える必要のないことだ。考えて答えが出てくるようなものでもないしな。


 これは理屈でも何でもないんだから。


「……俺はアリスが大好きなんだ。どれだけ雑に扱われようが、どれだけ酷いことをされようがな」


「それは、どうして?」


「……妹だからだ。妹じゃなかったら、あんなくそ生意気な奴と関わりたくなんかない。でも、妹だから可愛い。あんな奴でも、何があっても守りたいって思っちゃう。多分、そこに思考の余地は無くて……ただ妹だから大事なんだ。お前の姉もそうなんじゃないか」


「でも、私は大事にされていい人間じゃない……」


 ……あー、もうウザい! 


 こうやってウジウジされるのが一番ムカつくし、前にも言ったんだけどなぁ! 感じ悪いって。

 大体、何なんだよ? 生きていちゃいけないとか、大事にされちゃいけないって……。


 そんなの誰かが決めることでも、自分で決めることでもないのに、どうしてそれがわからない。

 そのことを強く咎めたいけど、まだまだ関係の薄い俺がどうこう言う資格も権利もない。


 だが、知り合いにこんな腐った考え方と寂しい生き方をしている人がいるのはごめんだ。


 だから、絶対に幸せになってもらう。


 このまま放ったらかしにして、知らないうちに自害でもされたらたまったものじゃないからな。

 とはいえ、今はまだそのときじゃない。それに、ここでダラダラ話すのもよくないだろう。


「はい、ここでこの話は終わりな。早く行かないと置いていかれちまう」


「……そう、だね」


「まぁ、これだけは言っておく。少なくとも俺はお前に死んで欲しくないと思ってる」


「えっ……?」


「いつまでも突っ立ってんな。置いてくぞ」


 そう言って、俺はこれ以上なにも言わずに優しくないアリスたちの後ろを追う。

 そんな俺の後ろには優しすぎるオリビアがついてきている。


 ……今はそれでいい。俺の後ろについてこい。いつかお前に何が一番大事なのかを教えてやる。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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次回の更新は9月7日です!

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